Netflixに学ぶフィードバックのやり方・受け方
気づけば10月も後半になり、今年も残すところわずかとなってきました。年末に向けて迫ってくるのが評価やフィードバックです。
弊社では、自己評価を書く上で360度評価は非常に参考になると考えており、リクエストを受け取るたびに魂を込めて書いています。ただ、「建設的で率直なものほど、フィードバックはやる側も受ける側も難しいよなぁ」と毎回頭を捻りながら考えています。
突然話は変わるのですが、実は現オフィスの近所にはNetflixが入っています。それにちなんで積読していた【NO RULES: 世界一「自由」な会社、NETFLIX】を読んでみたのですが、たまたま最初の話がフィードバックに関するものになっています。
これが非常に参考になるので社内でも共有したのですが、noteでもご紹介しよう、というのが本記事です。ご近所さんに学ぶゆるい記事です。
Netflixの文化
本題に入る前に、少しだけNetflixの文化について触れて、なぜそのようなフィードバックの取り組みをしているのかのコンテキストを理解したい。
https://igormroz.com/documents/netflix_culture.pdf にカルチャーデックが置いてある。
Freedom & Responsibility
カルチャーデックのタイトルにある「Freedom & Responsibility (F&R、自由と責任)」がNetflixの文化である。米国Netflixでは、休暇規定や出張規定などのルールを完全に撤廃して自由を与える代わりに、誤った行いをすれば責任をとって問答無用で解雇される。お役所的手続きで縛らないことで事業のスピードを担保する代わりに、個々人が自ら責任を果たす。
NetflixのFreedom & Responsibilityの文化は3つのルールに基づいている。
①常に会社の利益を最優先に行動する
②他の人の目標達成を妨げるようなことは決してしない
③あらゆる手を尽くして自分の目標を達成する
このシンプルな優先順位付けられたルールと、それを徹底する運用のおかげで、社員個人が自らのみを優先する行動は抑制される。
入り口でコンテキストを与え、出口で目を光らせる
一方で、シンプルなルールほど、「実際にはどのようなことが許されるのか」というコンテキストが重要となる。例えば、「会社のお金は自分のお金だと思って使う」という言葉が、浪費家には「経費は湯水のように使って良いもの」と捉えられる危険もある。
「常に会社の利益を最優先に行動する」はシンプルで素晴らしいが、コンテキストによるさらなる肉付けは必須だ。例えば、休暇規定が撤廃された場合、適切なコンテキストが与えられなければ、「だれも休暇を取らない」ということが起きうる。また、早朝の大切な商談を成功させるために前日入りして泊まることが必要なのであれば、深夜バスに乗って経費を節約することよりも、それは会社の利益を最優先にする行動である。
コンテキストが伝われば、次は出口で適切に目を光らせればよい。例えば、Netflixでは、経費の10%を監査チームがサンプルチェックして、そこで不適切な経費が見つかれば解雇され、それは悪例というコンテキストとしてまた共有される。
特にコンテキストを広めるのに大きな役割を果たすのは、マネージャーやリーダーであり、Netflixでは四半期レビューなどの定期的な機会で具体的な実例をもってコンテキストを広めている。率先垂範を徹底することが文化を醸成するためには鍵となる。
「自由と責任」と、フィードバックの関係は?
上記では「率先垂範」と書いたが、自由を与える代わりに責任を課す文化を本当の意味で推し進めるためには、すべての社員がお互いに会社の利益になっているかを注意し合うことが必須となる。そのためにNetflixが徹底しているもう一つが、「率直なフィードバックをいつでもどこでもだれにでも行うこと」である。
同僚と異なる意見があるとき、あるいは誰かに役立ちそうなフィードバックがあるときに口にしないことは、会社への背信行為とみなされる。会社の役に立てるのに、そうしないことを選択しているのだから。
ただし、フィードバックにも適切なコンテキストやガイドラインが必要である。何でもかんでも率直にものをいうことは間違っている(場合によっては、そのような人は「ブリリアントジャーク(デキるけど嫌な奴)」と呼ばれる)。
Netflixでは、フィードバックのやり方・受け方の研修にかなりの時間を割いている。それくらい難しいし、価値があるものなのだ。
前置きが長くなったが、本題のフィードバックのやり方・受け方をまとめてみる。
4A
Netflixにおいて、フィードバックのガイドラインは以下のような「4A」で表される。
Aim to Assist - 相手を助けようという気持ちで
立場:フィードバックを与える側
相手と会社のためではない、自分のためだけのフィードバックは正しくない。
Actionable - 行動変化を促す
立場:フィードバックを与える側
フィードバックは、受け取った本人が何をすればいいのか、という次の行動にフォーカスできていなければならない。
(以下は文脈がわかりにくいとおもうがあえてそのまま引用する。「多様性」についての本を出版した著者が、講演で先に手を挙げた人にのみ意見を求めていたことに対してフィードバックされたことを引き合いに出している)
Appreciate - 感謝する
立場:フィードバックを受ける側
自己弁護を抑えて真摯に受け止めよう。相手は勇気を出して進言してくれていることを忘れないこと。
Accept or discard - 取捨選択する
立場:フィードバックを受ける側
すべてのフィードバックを採用する必要はない。また、フィードバックを与える側もフィードバックが採用されないこともあると理解しなければならない。
いつどこでやるのか?
何をどう伝えるかが4Aで示されたので次は「いつ、どこで」が疑問となる。
Netflixでは、「いつでも、どこでも」である。会議室の扉を閉めた二人きりの状況のこともあるだろうし、40人の集団の前で叫ぶというやり方も、それによってフィードバックの効果が最大になるなら問題はない。よく言われる「フィードバックは頼まれたときだけ与える」「褒めるのは人前で、批判するのは人のいないところで」のような定石をNetflixでは捨てなければならない。
Netflixが目指すのは、ときとして相手の気持ちを傷つけることになっても、お互いが成功するのを助けることである。しかも、上記のガイドラインをベースに、正しい環境や方法を選べば、相手を傷つけずにフィードバックを与えられる。
王様に裸だと伝える
組織やチーム内で率直なカルチャーを醸成する最初のステップは直感に反するものである。直感的には、一番やりやすいものから始めるのがよい、と思われるかもしれない。上司が部下にフィードバックをたくさん与えるようにする、というものだ。しかし、Netflixでは、部下から上司に率直なフィードバックをさせることから始めるのをオススメしている。率直さが大きなメリットをもたらすのは、部下がリーダーに対して本音のフィードバックを伝えるようになったときだ。
組織のなかで立場が上になるほど、受け取るフィードバックは減っていき、「裸で職場にいるリスク」、すなわち自分以外の全員にわかるような失敗を犯すリスクが高くなる。そうすると、立場が上になればなるほど、会社が危機に陥るリスクが高まってしまう。これは避けなければならない。
Netflixでは、マネジャーが部下に率直なフィードバックをもらうために、例えば1on1の議題に常にフィードバックをいれておく。
重要なこと:帰属のシグナル
とはいえ、マネジャーに対して率直なフィードバックをすることは、時としてハードルが高くなるだろう。そこでキーになるのがフィードバックを受け取るときの振る舞いである。あらゆる批判に感謝を述べ、そしていちばん大事なこととして「帰属のシグナル」を発することで、フィードバックを与えても大丈夫だと部下に感じてもらう必要がある。
帰属のシグナルとは、「感謝の声を声色ににじませる」「話している相手の目を親しみを込めて見つめる」といったちょっとしぐさや、「もっと直接的に勇気を出して意見を言ってくれたことに感謝の言葉を伝える」「大勢の前でその一見を話題にする」といったことだ。
我々は、仲間はずれにされると死の危険にさらされる原始時代からの本能で、批判されると不安になり、自己防衛をしてしまうが、「ここは安全である」と伝えることが帰属のシグナルの目的となる。
あなたと会社をより良くしようとしてくれている人に感謝を伝えよう。
自社での活かし方
本記事では、Netflixの事例をざっと紹介した。「いつでもどこでもフィードバックをしよう」などをそのまま取り入れることが全ての会社にとって一番良い方法であるかといえば、そうではないかもしれない。各社それぞれがそれぞれにあった方法を考えて実践していく必要がある。
一方で、上記の4Aや早くフィードバックを回しいくことはめちゃくちゃ良いので、弊社でも取り入れたいと思い、このような記事にして社内にも共有した。
具体的な取り組みとしては、弊社ではManager Feedbackというものを運用しているのだが、今までは匿名だったものを「相手に面と向かって言えるることしか口にしない」に倣って記名式とした。
フィードバックが早く回る会社が強い会社になると信じている。謙虚に、貪欲に、フィードバックループを回そう。