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開発者が語る「培養肉とは」。番外編 「なぜ株式投資型クラウドファンディングを選んだか?」 「前例の無い起業スタイル」の起業家目線からお話します。 

 ダイバースファーム㈱の大野です。今回は「なぜ株式投資型クラウドファンディングを選んだか」という点を、起業家目線からお話させていただきます。

株式投資型クラウドファンディング(以下 株クラ)とは

 一般的なクラファンは「商品を販売」したり、「募金を集める」もので、かなり幅広く使われるようになりました。

 株クラ は 商品や募金の代わりに「株式」を購入する仕組みです。未上場株を一定の条件下(一人50万円以下など)で購入することができます。ただし、一般的な上場株式とは大きく異なり、株の売却が簡単にできないなど制限が多々あります。詳細は イークラウドさんなどのHPをご覧ください。
 https://ecrowd.co.jp/investor

 投資家にとって 株クラの良さをまとめてみると下記になります。

 ・少額で気楽に開始できる。
 ・気に入ったスタートアップ企業を株主として応援できる

スタートアップ企業のステップ


 まずは、スタートアップ企業がどのようにステップアップしていくのかをご説明します。

総務省の情報通信白書が引用する「ベンチャー白書2017」より

 スタートアップの教科書に必ず乗っている「死の谷」論ですね。要は初期の段階で資金不足によりつぶれてしまうスタートアップ企業が多い、ということです。

 欧米では、このシード&アーリー期に投資するのはエンジェルと呼ばれる、個人投資家や、れ以外はYコンビネーターなどの著名アクセラレーション組織が多いようです。これは、いわゆる富裕層に当てはまりますが、投資リターンというより、自分が成功させてもらった「恩返し」に近い感覚だといわれています。(果敢に初期に投資するVCもあるそうなので、あくまでも当方の主観です)

ベンチャーキャピタルがいつ投資するか?

 一般的な情報から推測すると「そこをベンチャーキャピタル(以下VC)が投資するんじゃないの?」 と 感じている方も多いかと思います。

 ここで、下記に 売上金額と主たるVCの投資タイミングを記載してみました。

 平たく言うと「死の谷を生き残って売り上げが伸び始めた会社にVCが投資する」 ということが多いかと思います。

 VCはIPOなどでリターンを得る(それもできるだけ短期間で)ことを目的に投資するので当然と言えば当然です。

 ライオンは我が子を谷に蹴落として、這い上がってきた子だけを育てる「獅子の子落とし」といえばよいでしょうか。。。

 ここで多くのスタートアップ企業が脱落してしまいます。かろうじて資金難を乗り切っても、一刻も早くVCからの調達が必要です。

 VCの関心は「売上がいつ伸び始めるのか?」という点に絞られているので、スタートアップ企業も何とか「売上の早期垂直立上げ」などの手っ取り早く売上が増えそうな事業プランを考え出して提案することになります。すると、いつも間にか 初期の目的とは乖離した事業になってしまったりします。

 これは起業家にとっては不幸です。多くの起業家は「実現したい世界」のために活動を行っており、その副産物として「売上」がついてくるというイメージでしょうか。

 「売上を早期に増加させる」ことを主眼に置くと、結局はどこかで聞いたことのある事業の焼き直しになるケースが多いと感じています。

 この辺に日本のスタートアップ業界やVCの課題があるように感じていますが、これは別途お話させていただきたいと思います。(下に紹介する日経ビジネスの記事もご一読ください)

 

当方がなぜ株クラを選んだか

 私たちのアプローチは下記になります。

 私はもともと材料や半導体の事業立ち上げをしてきましたが、ひょんなことからライフサイエンスに転身しました。ここで多くの医師・科学者と話をする中で、細胞の神秘に魅了されてきました。

 自分で言うのも恥ずかしいですが、やってみたい実験が次から次へと浮かんできて、夜飛び起きて実験計画や特許を書く日が続き、「これは自分でやるしかない」と起業しました。

 そんな経緯ですので、この分野で実績は全くありません。幸か不幸か シード&アーリーでVCや公的機関の開発助成金などの資金調達ができず、全額自己資金でせざるを得ませんでした。

 すべて自己資金なので、当然ですが、独自の方向性とタイミングで開発ができます。手前味噌ですが、弊社の手法は従来の発想にないものが多いのですが、これは独自でやらざるを得なかった事が功を奏した一面です。(当然無駄な実験も多々ありましたが・・・)

 資金は限られているので、徹底的にコスト削減します。弊社の装置はほとんど中古品で、修理しながら使っています。ラボは最初は自宅の一室、その後格安物件(大家さん申し訳ない!)を賃借しています。当然実験もすべて自分たちで行います。特許も自分で執筆&申請しています。最初期にすべて自分たちで行うことで全体が見渡せるようになります。コストダウンが実は私たちの強みを更に強化してくれるわけです。

 それでも培養肉を一定量作製するには量産技術開発やスペース、そして新たな仲間が必要になってきます。この足りない部分を株クラで調達することにしました。

 株クラの利点は「ファン株主」という表現がよく表していると思います。鉄道ファンがJR株を、牛丼ファンが吉野家株を、買うように、一般の方々が好きな事柄を事業化している会社に投資するのはごく自然なことかと感じます。

 弊社は 「培養肉で地球と暮らしをまもる」をビジョンに開発を進めています。基礎的な技術は確立していますので、この技術をもって 本当に多様な社会的課題を解決できることに日々驚きをもちながら開発を進めているところです。
 
 よい仲間にも恵まれました。共同創業者の島村はミシュラン8年連続のトップシェフですが、この仕事をしなければ出会うことはあり得ませんでした。彼は一流の日本料理人で、一つ一つの所作が丁寧で、結果的に細胞培養も非常に上手です。さらに英文論文も読み込むなど、料理人の範疇も逸脱しています。アイデアも斬新で技術ディスカッションがいつも楽しみです。
 
 純粋に培養肉の味に興味ある方や、培養肉が可能にするフードロスの世界や、新しい畜産業の形、水産業はどうなるか、動物愛護の観点など様々な観点で興味ある方はぜひご賛同いただければと思います。

 培養肉は100年どころか、人類が続く限り必要となる技術です。ぜひご期待ください。

日本におけるベンチャーキャピタル(VC)の現状

 ちょうど 日経ビジネスの記事で本稿の趣旨に合う記事がありましたのでぜひ一読ください。

ユニコーン不足の日本、なくせるか「起業家に不利な金融契約」

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/042200360/




 執筆予定

#01  概要(済)
#02  培養肉の作り方(済)
#03  培養肉が解決できる課題(済)
番外編 なぜ株クラか?
#04  原料となる細胞
#05  畜産業と共存
#06  培養手法の課題
#07  培養肉の調理法
#08  デザイン・ミート
#09  再生医療へのつながり
#10  ダイバースファームについて

株式投資型クラウドファンディング 応援のお願い。

 弊社はこれまで自己資金にて開発を続けてまいりましたが、開発を加速するために株クラファンを開始いたしました。ご興味いただける方はぜひ応援をお願いいたします。

https://ecrowd.co.jp/projects/11


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