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無有代者(代わる者あることなし)

私達は、元気で働けて、皆から誉められ、役に立つことを価値があるとしています。
反対に人に迷惑を掛けるような人は生きる価値のないもののように思うわけです。
役に立つ命、役にたたない命とか、最後には生きる資格の有無まで云々します。
それが我々の分別の恐ろしさです。
           一楽真

なにかできるは、必ずいつかはできなくなる。

20代の頃はいくら声を酷使しても枯れることはなかった。
ボイストレーニングの先生からは、
「異常に喉が強すぎる。だから、喉に頼りすぎても何ともないと勘違いするから、喉声が直しづらい。長所でもあるけど、あんたの場合一番の短所でもある」
と指摘された。

3ヶ月の長期公演(芝居)で主役クラスの役で叫び、歌いまくっていたが、皆さん2週間くらいでだんだん喉をやられだしていくなか、何ともなく過ごしていた。

彼岸で、朝から晩までお経をあげていたが(5分のお経を4〜50軒)、なんともなかった。
(アカペラで5分の曲を40曲歌う感じで考えてみてください)

ボイトレの先生に言わせると、もともと喉の強い体質に、野球部でひたすら声出しさせられて、役者になって、毎日、発声方が良い悪いは別に喉酷使し、その間も休みの日は寺で喉使し、役者やめても毎日喉酷使して、とんでも喉ができたのだろうと。
ただ、このままいけば、もうすぐ喉潰すことになる、とも言われた。
喉を休めることを覚える。
力が抜けきったアホな声を出すことを徹底的に教えられた。

そのおかげで、いまでも声は普通に出る。

でも、ある時から、喉が枯れるようになった。
声帯の問題ではない。
保湿成分がどんどん減っていく、加齢とともに。
で、声自体は使い続けているので、どんどん強くなる。
ただ、枯れるのはめちゃはやい。
そして立ち直りにだんだん時間がかかるようになってきてもいる。

50軒、読経しても何ともなかったが、いまでは4〜5軒でやばい。
日によっては、2軒目でもうやばい。

そして体力も確実になくなってきている。

一日働いたあとには、疲労感半端じゃない。

精神力は一番やばい。

すぐ、もういいや、となる。
ギブアップ、タップなんぞしてたまるか!っといきがっていた若き頃の自分をあざ笑うかのように、自分の意志と関係なくギブアップ、タップをしていることが増えてきている😅

そんなもんだ。

それでもまだ「若さ」ってもんにしがみついている自分は確実にいる。
自分の全部が年老いたことを認めてしまったら、「もう自分に存在の価値が無くなってしまうのではないか」と恐れている自分がいる証拠だ。

人には、そのままを受け入れていけばいい、と言える。
なぜなら他人事だから。
優しさではない、決して。
「そのままを受け入れて」というのは正論だ。
正論は、一番難しい。
だから自分に向けることができない。
他者には、関係が浅ければ浅いほど、その人を知らなければ知らないほど、無責任に言うことができる。

だから、気をつけてはいる。

正論、ほんとのところ、それを言う時は自分に向けて、と。
人に向けて話をする場であろうとも、その時は自分に向けて言う。
そうすると言えない時がある。
面白いもので、どんなときかというと、どんな場でかというと、先に書いた無責任にものが言えてしまうような場では逆に言えなくなる。

その人のことが何もわからない。
自分との関係も何一つ築けていない。
そんな場では言えなくなる。

話を戻さねば😅

何かできるから必要、というのは社会では確かにある。

でも、それは、人間の、命あるものの、存在するものの存在の意義とは一切関係がない。

会社に、寺に、劇団に、家に、地域に必要なだけだ。
これらの必要事項は、いくらでも代わりがいる。

代わりがいないと思いたいだけだ。

代わりが効かないのは、自分自身に対してだけだ。
わたしの熱はわたしの熱であり、誰かが変わって熱を出してくれるから下るなんてことはない。
わたしの命はわたしだけのもので、誰かが変わりに生きることも死ぬこともできない。

だから、言い聞かす。
社会的な役割りは当然大事であるが、そこに自分が在るわけではない。
いままで、役者(演出)やって、坊さんやって、事務職員やって、坊さんに戻って、その間にもあれやこれや別の役割りやってはやめてをしてきたけど、オレが辞めたからって穴は簡単に埋められてる。
それが仕事というもんだ。だから、仕事にすべてを託すなんて生き方はしたくない。
遊び仲間もそう。

大事だけど、仕事や趣味や遊びに縛られるな、と、言っている。
いや、縛られているけど、実際は。で、縛ってくれている人にも感謝しているけど。

でもね、いつかは必ずできなくなるのよ。
そしたらその時、なるべくショックを少なくして、来るべき時が来たな、とどこかに少しだけ余裕を持って、その上で安心して狼狽したいな、ってささやかな老化への抵抗です。

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