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化学的な指示に従って形を変える「シンセティックセル(合成細胞)」を開発、新たな薬物送達システムへの一歩 ジョンズホプキンス

ジョンズ・ホプキンス医療チームは、外部化学シグナルに応答して形状を変える「シンセティックセル(合成細胞)」を開発しました。この発見は、細胞運動の仕組みの理解を深めると同時に、革新的な薬物送達システムの実現に向けた一歩となるものです。

シンセティックセルは、生命現象の基礎となる「対称性の破れ」を再現することで注目されています。対称性の破れは、細胞が外部刺激に応答して対称な形状から非対称な形状に変化する現象です。この機構は、免疫細胞が感染部位の化学信号を検知して血管壁を超える際に見られます。

ジョンズ・ホプキンスの研究者たちは、シンプルな構造を持つ「プロトセル」を構築しました。プロトセルは、リン脂質二重層、精製タンパク質、塩類、およびエネルギー源であるATPから成る巨大なベシクルで、その球形の形状から「バブル」と呼ばれています。今回の研究では、このプロトセルが化学信号を感知し、ほぼ完璧な球形から不均一な形状へ変化することが確認されました。

研究チームは、プロトセル内に化学感知能力を与えるために、分子スイッチとして機能する二つのタンパク質(FKBPとFRB)を導入しました。FKBPはセル中央に配置され、FRBは膜上に植え付けられました。外部からラパマイシンという化学物質を導入すると、FKBPは膜上のFRBに結合し、アクチン重合という反応を引き起こします。この過程は、プロトセルの内部構造を変化させ、膜を押し出して変形させます。

研究に参加したシヴァ・ラザヴィ博士(現在はMITポスドク)は、「対称性の破れは生物学の基礎を解明するために重要な概念であり、これを理解することは、生命の基本原理を解き明かし、治療法の開発に繋がる」と述べています。

プロトセルの化学感知能力を記録するために、研究者たちは高速3Dイメージングである共焦点顕微鏡を使用しました。プロトセルが化学信号に迅速に反応するため、1フレームを15秒から30秒の間隔で記録する必要がありました。

次のステップとして、研究者たちはプロトセルにターゲットに向かって移動する能力を付与することを目指しています。最終的には、標的薬物送達や環境感知など、精密な運動と刺激への応答が重要な分野での応用が期待されています。

本研究は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、国防高等研究計画局(DARPA)、アメリカ国立科学財団(NSF)、および日本科学技術振興機構(JST)PRESTOプログラムからの資金提供を受けて実施されました。

詳細内容は、ジョンズホプキンスメディシンが提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7


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