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「蜘蛛の糸」体験記。

就職氷河期世代を対象とした国家公務員試験が、昨日行われました。新聞記事にもなっていますね。

 私も昨日受けてきました。まぁ受かるとは思っていないのですが。

受験の前にそびえる高い壁!

 受験はネットから申し込むことができるのですが、Windows歴20年以上の私には高すぎる壁が待っていました。

 それは、ChromeもEdgeも使えない!ということ。

 以前は確定申告をするe-taxもChromeやEdgeが使えないということで問題になりましたが、そちらの方は最近解決したそうです。しかしこっちのシステムではまだChromeは使えません。なぜかFirefoxとSafariは使えます。IEも使えたと思いますが、IEはマイクロソフトから公式にいない子扱いにされたので、今更使えません。

 官公庁の中にはGoogleに親を殺された人がいるのでしょうか。だとすれば謹んでお悔やみを申し上げます。しかし私怨を公的なシステムに持ち込んではいけません。

(まぁシステム担当者の脳内がIEとSafariの時代で止まっているという可能性が大ですが)

 そんなわけで、これの申し込みのために、このためだけにしか使わないであろうFirefoxをダウンロードし、申し込み手続きをしました。8月下旬のことです。

 それから約2か月半、11月10日に、受験票を表示するページのURLが書かれたメールが届きました。もちろんこれもFirefoxでしか開けません。しかも、私はこの間に、パソコンを買い替えました。新しいパソコンにはFirefoxをダウンロードしていないので、前のパソコンの電源を久しぶりに入れ、Firefoxからメールソフトにアクセスし、プリンターをつなげて、受験票をプリントアウトしました。

 Firefoxには何の恨みもありませんが、おそらく今後Firefoxを使うことはないでしょう。これ以外のことはChromeで事足りるので。このへんのことは河野行革大臣に申し出れば考えてくれるのでしょうか。もしかしたら一般からの要望を受け付ける期間に、そういう意見もあったかもしれません。ブラウザ界で8割のシェアを占めるChromeとEdgeを締め出すなんて、正気の沙汰とは思えません。

いざ試験会場へ!

 11月29日、私は試験会場である関西大学へ向かいました。阪急電車の関大前駅で降りて、目の前にある大学の門を通り、階段とエスカレーターを上ると、試験会場の建物が見えてきます。その前に警備員のおじさんが立っていて、

「入り口はこの建物の裏側なので、受験の方は裏側へお回りください」

と連呼していました。しかもほとんど絶叫に近い声で。こういうのも仕事にしていかないといけないのかと思うと悲しい気持ちになります。看板や張り紙にすることはできなかったのでしょうか。

 試験範囲は、一般的な公務員試験の教養試験の範囲です。わかりやすく言うと、国語数学社会理科英語です。5肢択一のマークシートです。問題集は持ち帰ることができ、翌日(つまり今日)には正解も公開されました。自己採点をしようと思えばできるのですが、どれぐらいの正答率で通過できるのかわからないので、やりません。合格発表までのお楽しみにします。

 午後からは、作文試験がありました。あるテーマに沿って600字前後の「作文」をします。色々と自治体の試験も受けましたが、どこでもこの試験はあります。題材は組織に関するものが多いと思います。文章作成能力を見ているというが主な目的だと思いますが、あまり過激な思想を持っていると思われると、はねられるかもしれません。

 合格発表は12月25日、つまりクリスマスプレゼントです。なかなか粋なことをしてくれます。これに通過すると、年明けに面接をして、それで採用ということらしいです。

 上記の記事に倍率は約36倍とあります。受験を申し込んだのは1万人以上いたらしいですが、受験申し込みから3か月もたったので、色々状況が変わったというのもあるのでしょう。実際の受験者は半分近くになっていました。自治体の職員募集だと、100倍近い倍率のものもあるので、36倍というのはそれに比べると緩い方です。でも合格するのは一握りの人です。

合格できるのはどんな人?

 こういうのに合格できる人は、普通に民間企業でもうまくやっていけるという人もいます。ただ今回の募集は事務職です。氷河期世代の、特に男性にとって、民間企業に事務職として採用されるのは至難の業です。あれは嫁入り前の女子(と言うと時代錯誤な表現ですが、これが企業の本音です)がやることで、それでさえかなり狭き門なのに、そこにオッサンが入り込むのはもっと厳しいものがあります。営業職やサービス業に適性がなく、体力的に肉体労働もできない氷河期世代にとって、大っぴらに事務職ができる公務員は、まさにラストフロンティアです。だから殺到するというところもあると思います。民間企業でうまくいかない人が、公務員だとうまくいくという可能性もあります。そういう人が採用されてほしいと思います。

 こういうのはまさに「やっているアピール」だと思います。困っている人に蜘蛛の糸を垂らしているだけです。記事にもちゃんと、

国家公務員採用で先行事例を示すことによって民間企業への波及効果を狙う。

と書いてあります。受験している当の本人も、どこまで本気で自分が救われることになるのか、疑心暗鬼な人も多いと思います。実際入ったとして、上司が年下という可能性も十分にあると思われますが、そういう環境に耐えられるかということも試されていると思います。給料もそれほど高いわけではありません。しかもボーナスが少ししか下がらなかったというと、「出ない会社もあるのに」とバッシングされる世の中です。

 私も、現職が今のところ来年の3月までの予定だったのですが、もしかしたら伸びるかもしれない(3月に終わるのが物理的に難しくなってきた)ので、もちろんこれに受かったら話は別ですが、あまり期待せずに、生暖かい目で見守っていきたいと思っています。

(この文章は私が書いたはてなブログ https://morperapple.hatenablog.jp/ からの転載です。noteにも載せたかったので載せました。)

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