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そうだ京都、行こう。

 私の住んでいる京都は、世界的に観光都市として知られていて、住んでみたいという人も多いらしいのですが、実際は、最近人口減少数が2年連続で最多らしいです。
 原因としては、外国人を含めた学生の減少と、住宅事情による子育て世代の市外への流出が挙げられています。この2年というのはコロナ禍ということで、それだけが理由ではないと思うのですが、減っていることに変わりはありません。

 しかし、京都市民としては、別にこれは悲観することではないと思っています。むしろ今の京都市の人口は多すぎると思っているぐらいです。
 京都市といっても広いのですが、一般的に観光客が訪れる京都といえば、京都市の中でも、山科区・西京区以外と九条通り以北を指すと思われます。この地域以外においては、若干の観光施設はありますが、製造業などの工業も盛んですし、(任天堂の本社もここに含まれる)どんどん発展していただければと思います。
 しかし、山科区・西京区以外と九条通り以北以外では、観光地の中に人々の日々の暮らしがあるというのが実情です。特にコロナ前は、観光客が路線バスを占拠して、市民が乗れなかったりといったオーバーツーリズムの問題が発生していました。コロナ禍を経て、海外からの入国規制もなくなったので、再びオーバーツーリズム問題が再燃する可能性があります。
 他の地域から観光でくるのと、実際に住むのとはわけが違います。実際に住むとなると、毎日毎週のように買い物をしなければいけません。しかし、京都にはいわゆる大型商業施設が人口のわりに少ないように思います。郊外に行けばなくはないのですが、そこに行けばなんでも揃うといったものは少ないように思います。それと、交通機関にも恵まれないという問題があります。京都の地下鉄は、観光客向けというよりはどちらかというと地元住民向けで、(それはそれでいいのですが。)主に観光地への移動需要は路線バスが担っています。このバスは、閑散期はそうでもないのですが、繁忙期になると観光客でいっぱいになります。しかも道路も2車線というところが多く、(京都のメインストリートといわれる四条通も2車線です。しかも歩道を広げる目的で近年2車線になりました。)バスと車による渋滞も日常茶飯事です。そして駐車場も多いとはいえません。
 さらに、実際に住民登録をすると、行政サービスを受けることができますが、京都市は現在未曾有の財政難であり、敬老乗車証や保育園の保育料の値上げなどが行われています。この財政難の原因としてよく挙げられるのが、地下鉄東西線を、収支の見込みが甘いまま建設し、その負債が残っているということと、高齢化に加え学生人口が市全体の1割という大学の街という特殊な構造のため就業層の割合が低く、人口に占める納税義務者の割合が43.1%(2019年度)と政令指定都市で最低だということ、また市内は、景観保護で高層マンションが立てられないため、固定資産税も増えにくい。また、市内に多くある神社仏閣は固定資産税がかからない。などといったころが挙げられています。(出典) 私もこれらの事情はあると思います。しかし、地下鉄東西線に関しては、確かに建設当時から全駅に、屋根まで覆いつくすホームドアを設置するなど、設備が過剰であるというところはあるものの、交通インフラとして一定の役割があるので、一概に無駄とは言い切れないと思います。私が個人的に財政難の一因だと思っているのは、京都市立芸術大学の移転だと思います。

 日本有数の公立芸術大学の名門である京都市立芸術大学は、現在京都市の西の端である西京区沓掛くつかけ地区にあります。交通の便はあまりよくありませんが、自然豊かな郊外にあります。その京都市立芸術大学を、京都駅から歩いて数分の崇仁すうじん地区に移転するという計画です。一見良い計画のように見えますが、もちろん市立大学なので、キャンパスの建設と移転に莫大な費用(=税金)が掛かります。それに、この崇仁地区というのは、日本有数の被差別部落ということで、人に住んでもらうにはハードルが高い。それならば大学を誘致して、過去の負の歴史に蓋をしてしまおうということなのかもしれませんが、芸術大学の学生なら歴史のことに無頓着だからいいだろうというのは、あまりにも芸術家をなめた態度だと言わざるを得ません。この地域をどうしても活用したいのであれば、オフィスを誘致するか、百歩譲ってホテルの建設でしょう。これなら事業主や顧客は選択の余地があるので、過去の負の歴史など気にしないという人なら、利用する人がいるかもしれません。そもそも、普通の大学ではなく芸術大学なのだから、自然豊かな郊外にあった方が、インスピレーションも浮かびやすいし、音楽系の学生も、周りに気兼ねなく音を出せていいと思うのですが、そのあたりはどうなのでしょう。
 その街に住むということは、その街に日常を持ち込むということです。京都に観光に来たい人は、日常を忘れて、非日常を楽しみたくて来ていると思います。だから、京都市民はその邪魔をしてはいけないと思います。極論ですが、京都は非日常を楽しむ観光都市に全振りしてもいいと思います。京都に住む人は、いわゆるエッセンシャルワーカーを除けば、京都でしかできない仕事をしている人と、京都に住むことが自らのアイデンティティである人のどちらかでいいと思います。私はたまたま京都で仕事があったので京都に住んでいますが、このどちらでもないので、いずれ京都のために京都を離れようと思っています。


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