入来祐作さん「用具係 入来祐作」〜僕には野球しかない〜

「"不遇"と思われる環境にいるときこそ、そこでどのように自分を奮い立たせるかが大切になってくる」

 2023.10.26はプロ野球のドラフト会議でした。夢を持ってプロ野球界に進む方々がいる一方で引退する選手も数多くいます。

 そんなとき思い出すのがこの本です。

 入来祐作さんは現在、オリックスの投手コーチをされていますが、宮崎生まれ。PL学園から亜細亜大学、本田技研工業を経て、1996年にドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。日本ハム、メッツ、横浜ベイスターズと渡り歩きますが、2008年に戦力外となり12年の現役生活を終えます。通算35勝35敗3セーブ、防御率3.77ですが、印象に残る投手でした。

 ここからが独特なのですが・・・引退後、打撃投手となり、この本が出版された当時は横浜ベイスターズの一軍用具担当をされてました。
 用具担当は選手が野球だけに集中できるように環境を整えるのが仕事。
 ボール、ユニフォームなど選手に頼まれればあらゆるものを準備する必要があるため、気分は「ドラえもん」みたいなものだと・・・

 プロ野球選手から用具係へ。華やかな世界から地味な世界へ。この本では「プロ野球選手ではなくなった瞬間から、どのような環境、気持ちの変化を経て今に至るのか」が描かれます。

 最終章の結びの文章が心に響きます。

「自分の人生が思い通りに行かなくなったときは、心も体も動かなくなるほど、落ち込むこともあるでしょう。しかしそんな状況下に置かれても、時間は待ってくれません。顔を上げて歩いて行くしかないのです。」

 こうした姿勢が今もプロ野球の世界に居続けられる秘訣なのかもしれません。
 ドラフト会議を見てたらこの本を思い出し、改めて「心に火をつけてもらえる良い作品だな」とトレードには出さず、そっと本棚へ戻しました。

「用具係 入来祐作」〜僕には野球しかない〜
講談社/2014.8.1刷

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