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Appleはミニマリストではない

新しいiMacの動画を連日見ていて、さらに、店舗でもちらっと実物を見てきた。もううっかりカートに入れそうなくらい欲しくなっているけれど、理性の働きがすんでのところで止めている。


今回のiMacを見ていてしみじみ思うのは「Appleは決してミニマリストなどではない」ということだ。

今となっては歴史と化したキャンディーカラーの初代iMacが象徴的なように、Appleは「デザインを重視する」メーカーではあるけれど、ミニマルであることを目指しているわけではないと思う。

これは一応(デザイナーではないけれど)デザインを仕事にしている私の感覚だけども、デザインを仕事にしている人で「ミニマリストです」と自らを称する人はいないと思う。デザイナーにとって「シンプル」は是である場合が多いけれど、それは「ミニマル」とは違う。

ミニマルを目指したデザインにおいては、「ミニマルさ」がデザインされてしまう。例えばできるだけ存在感を消すとか、質感を減らすとか、そのような形態の恣意性が必ずしもデザインにおける必然性とは相容れない場合があるのだ。

一方で「シンプル」という形容詞は、必然的で、普遍的で、かつ無理がないものに与えられる。もしそのデザインを実現するために構造的な無理があったり耐久性が損なわれたりしたら、それは真のシンプルとは呼べないだろう。


そのような目であらためてApple製品を見てみると、決してミニマルを目指しているわけではないことがわかる。

最近はミニマルが流行していることと、Appleの一部の製品が結果としてミニマルに映る(例えばMacBook Airなど)ので、Appleに「ミニマル」を求めてしまっているユーザーが増えているのかな。と、もろもろの意見を見ていて感じた。

「このベゼルがあと少し細ければなぁ」という気持ちはわからなくもないのだけど、たぶん、なんでも細ければいいというわけではない。Appleの力ならベゼルを少し細くするくらい訳がなかったはずで、彼らは、あえてその太さを選んだはずだと私は感じている。

なぜならばそのほうが美しく、普遍的で、様々な場所に合い、そしてそれらを総合して“Appleらしさ”を演出できるデザインになるからだ。

デザインにおける「引き算」がもてはやされすぎる昨今において、あえての「足し算」が見えるAppleの選択に、私は逆に強い理念を感じるのだった。

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