将棋における最も良い上達法とは

2022/11/29(火)

こんにちは。tiny_squirrelです。

前々から考えていた将棋の考え方について、思考の整理のついでにまとめてみようと思います。
あくまで個人的な意見であることをご了承くださいね。

本当のことを書いたつもりですが、最初はウソだと思って読んでみてください。

序盤、そして将棋に本当に必要な力とは何か

さっそく本題です。将棋と言えば、まず序盤ですね。
「序盤で優位に立つ秘訣」と言われて何を思い浮かべますか?

研究、知識、経験?
それとも大局観や才能みたいなよくわからないもの?

残念ながら違います。
「言葉で考える力」です。
これさえ理解していれば、序盤がどんどん上達していきます。

「上達していく」というのがポイントで、今日から勝てるようになるのではなく、来年の勝率がちょっと上がるよという話です。
要は土台を作る第一歩というわけですね。

ちなみに「序盤研究は序盤の上達とは言わないのか?」はその通りです。
きちんとした理論があったうえで研究をしないと、正しい研究にならない上に覚えも悪いです。

研究を忘れがちな人は、記憶力が悪いと思っていませんか。
そうではなく、研究で得るべきものは「経験」や「理論」であって、最後にそのままそっくりの手順が暗記できるのは、全部理解した後です。
正しい研究というのは「再現可能」ではなく「説明可能」ということであり、正しい手を知っているのではなくて、間違っている手を全部棄却しているというだけなのです。記憶ゲーではありません。

知らない定跡になっても、自分の頭で考えて良い手を指せるのが序盤力です。言葉で考えていれば、他の分野から応用が利くようになります。研究に時間の割けないアマチュアこそ、これを学ぶべきだと思います。

今からそういう土台を作るためのお話をしていきます。


振り飛車の評価値がマイナスの理由を説明できますか?

ソフトが振り飛車を評価していないのは有名ですね。

ソフトの学習深度に偏りがあるからじゃないか、とかいろいろと言われてましたがどうなんでしょう。その辺はよくわかりません。

人の言葉を用いて説明するとしたら、どんなことが言えるでしょうか。
言語化のトレーニングをしましょう。

*  *  *

少し知識があったり研究したことがある人なら、結果で説明することは可能だと思います。

例えば
「四間飛車には居飛車穴熊が有利という前提があるので、組めたら居飛車が良くなる。それを防ぐ作戦(藤井システムなど)を採ってきたら急戦をすれば良くなる」など。

これは結構序盤の上手な方の思考だと思います。
他の戦型でも「これにはこうすれば良い」という前提を知っているはずなので、かなり序盤で優位に立てていると思います。

しかし、これは結果を話しているだけであり「だから振り飛車は不利」と結論付けるにはもうちょっと理由が足りない気がします。

もう少し、根本的な部分の話をしましょう。


普通の振り飛車の局面です。
この先の定跡は置いておいて、形勢をどう見ますか?

結果だけ述べれば「穴熊に組めるので後手有利」です。
過程はどうでしょう。説明できますか?

「まず、角道を止めるという行為は主導権を渡して囲いを発展させるという狙いなので、主導権は居飛車にある。また、△8五歩と伸びているため飛車の働きも現時点では居飛車の方が良い。
とすれば、一気に打開するとして▲6五歩を狙うのだが、角交換があるため△4四歩と角道が止まるか▲7八銀のまま固定するかを選ばなければいけないが、▲7八銀のまま△7七角成▲同銀と進んだ場合、飛車の働きに差が出てしまう。

例①

これは、△8二飛を受けるために▲7七銀と玉から離れた位置にいるのに対して、▲6八飛を受けるために△5三銀と玉に近い位置にいる。
すなわち、飛車による牽制の価値が全く違う。(飛車は玉に近くても意味はないので換算しない)
よって、振り飛車は角交換できないということになり、△4四歩を待つしかないということになる。

例②

△4四歩を突かせるためには、必然的にこういった動きをしないといけない。しかし、ここで△4四歩と突けば居飛車は主導権を捨てる代わりに堅い陣形を手に入れることができる。
そもそも振り飛車が角道を止めて囲いで優位に立とうとしたのに、居飛車の方が堅い陣形になっては本末転倒である。
このあと▲6五歩として振り飛車が再び主導権を確保することになるが、主導権を握ったところで陣形差があるので、仕掛けても有利な展開は望めない。

例➂

よって居飛車穴熊の有利である」

などなど。決してこれが正解の説明とは言いませんが、なぜこういう展開になるのか、なぜ有利なのか、ということを1から考えることが大切です。

初めから符号で話すのではなく、なるべく主導権、駒の働き、玉の堅さ、位置関係など、言葉にできるものを全部言語化した後で符号に変換します。

そうすると
「主導権を渡してはいけない。捨てるときは、自分の方が堅い陣形に組めるときだ。つまり、△4四歩はなるべく最後に突いた方がいいな……」のような考え方になります。

(ちなみに主導権という言葉を多用していますが、個人的には「自分が仕掛けられる、または相手に仕掛けられない権利」だと思っています)

*  *  *

本題の「振り飛車がマイナスの理由」に戻ります。

上記の例をもとに簡単に整理すると、
①角道を止めて主導権を渡しているから
②角交換時に飛車の働きに差が出るから

という点が浮き彫りになってきました。

もう少し掘り返してみると、
そもそも振り飛車は角道を止めたので、自分の方が良い囲いにできるという宣言をしている。なのに居飛車がもっと良い囲いに組めてしまっている。だから角道を止めた甲斐がない。
だからもう一度角道を開けたいが、角交換すると飛車の働きが悪くなってしまうからにっちもさっちもいかない。

という感じで振り飛車はマイナスを抱えているのですね。
結果ではなく、もっと根本にある理屈で説明ができました。

「振り飛車には角交換」という格言がありますが、あれは解釈違いがあって
「振り飛車は角交換できないから、角道を開けられぬよう工夫する」であり
「積極的に角交換しに行こう!」だと、ちょうど守っているところを攻めることになるので微妙なんですよね。

しかし逆に言えば、①②のどちらかを克服すれば振り飛車が戦えるということで、振り飛車党は試行錯誤しています。

少し話が逸れますが振り飛車の工夫の話をしましょう。

昭和の時代はソフトが無く、人の頭で理屈を考えていました。
言語で紐解いていくと、その戦法が流行った理由が分かってきます。

(1)ノーマル中飛車

ノーマル中飛車は最近見なくなりましたが▲7八金型が「角交換や急戦に強い」という特徴を持っています。
すなわち▲6五歩△7七角成▲同桂として、▲5五歩から一歩取って▲8九飛と回り、▲8六歩で反撃する。という一連のプランがありますね。

▲6五歩が突きやすいということは、角交換後の飛車の働きで勝っているという意味合いになり、②の弱点が無くなったことを意味しています。

しかし、最近はここで△3二銀▲6五歩△4四歩のよう堅く囲って指す将棋が流行りだしました。
つまり、居飛車は▲7八金と上がったのを見て、陣形差ができたと判断し、△4四歩として主導権を渡す代わりに堅い囲いに組めますよ、と主張するようになったのです。
振り飛車は片美濃なので発展できないし、攻めの主体が角交換だったことから囲っている間に崩すのも難しいということで、やや不利を予感します。

昔は急戦が主体だったので、△4四歩と止められても袖飛車で弱点を突くことが可能でしたが、時代が左美濃や穴熊にシフトしてしまったので、定跡に詳しくない人も△4四歩と突けて簡単に凌がれるようになり、やがて衰退していきました。

新たな弱点が浮上してきました。
➂角交換のために金で角を守ると、陣形差ができてしまう。

(2)角交換振り飛車(またはレグスぺ)

いまだ人気の根強い角交換振り飛車。
画期的なのは「角交換後に飛車の働きに差が出る」という弱点を、8筋の歩を逆用する形で克服しようとしたという点です。

もし▲8六歩と突ければ飛車の働きが互角になる上、△8四歩、△8五歩という2手を無駄にしてやったという意味もできます。

しかしこの戦法の致命的な点は、▲8六歩を成立させるために▲6九金の処遇が難しいというところにあります。
よって、居飛車は△6四歩と突いて▲8六歩を牽制した後、穴熊に組みます。振り飛車は▲5八金左~▲4七金とするたび▲8六歩がどんどん行きにくくなり、

結局▲6六銀と出る羽目になるし、飛車の働きで勝とうと思ったのに今は△8五歩の釘付けになっていて飛車は涙目です。
しかも玉の堅さも負けている……となると、この戦法を選んだ意味が薄くなってきます。▲5五銀で戦えないこともありませんが、最初の主張からはかなり離れた場所にある局面であり、目指すべき場所ではなさそうです。

かといって、▲7八金として無理やり飛車交換を狙ったところで、逆に左右分裂で飛車に弱いという悲しさがあります。

また、レグスぺ(穴熊)に組んだとしても、居飛車が飛車一枚で△8五歩と伸ばしているところをわざわざ飛車と銀で奪還しにいくのだから、偏っていて無理があります。

▲8六歩△同歩▲同飛と行けないことはないですが、銀が完全に取り残されているので将棋の作りとしてはおかしいです。
居飛車は△8五歩と伸ばしているおかげで右銀がフリーに動けるのが大きいのですね。
振り飛車全体に言えることですが、振り飛車は頑張って飛車を働かせないといけないのに対して、居飛車は歩を伸ばすだけで立派に働きます。

飛車の働きで勝ちたいが、捌くと陣形差で負けるし、囲っても陣形差で負ける……というジレンマを抱えているのが角交換振り飛車のつらいところですね。

(3)石田流

ある意味ノーマル中飛車の進化系で、飛車の働きを高めることで角交換に対応し、しかも囲いも自由にできて、▲6五歩もいつでもできるから居飛車の牽制にもなる。という万能戦法です。

飛車の働きで優位に出ようと▲7六飛と浮いて、8六と7四に利かせた。
そうすれば△8二飛は8六しか狙ってないから働きで勝っている。
そういう理屈ですね。

それゆえ振り飛車の理想形ともよばれていて、居飛車はこれに組まれてはいけません。

早い段階で角交換をしてこのように組むのが対抗策となります。
石田流は角交換がいつでもできるのが強みでしたが、それはそのあとすぐ戦いになるからであって、早くに角交換すると弱点が見えてきます。

シンプルに解剖してみましょう。

こうみると一目瞭然で、振り飛車側は自陣がスカスカです。
つまり、角交換後の居飛車は金銀を自由に動かせるのに対し、振り飛車は何かしらの手段で角の打ち込みを防ぐ必要があります。

もう一度見ると、▲7八金が角の打ち込みを防いでいるのが分かります。
一方の居飛車は△5二金です。

この後の展開は置いておいて、すでに玉の堅さに差ができています。
とすれば、後手有利でしょう。

飛車の働きで優位に立っているはずが、実は居飛車の横利きがめちゃくちゃ強力で負けていた。というお話です。△8二飛がいるから▲8二角が打てないという面白い理屈でも説明できますね。
ちなみに△8四飛と浮いても△6三銀と相性がよく、角の打ち込みを防いでいるのは大きなポイントです。振り飛車は▲6七銀型にするためには多大な手数がかかるうえ、結局銀だけでは8八の地点を受けることができていません。

*  *  *

振り飛車のまとめ

他にもノーマル三間や先手中飛車など諸々の戦法はありますが、結局先ほどの理論を用いれば攻略することが可能です。

なるべく符号は使わず、言葉だけで振り飛車のデメリットを解説しました。

最後にまとめると、居飛車が勝る理由で一つ大きなことが見えてきます。
それは△8二飛という位置が強すぎることです。

9×9の盤上において、飛車はここに居るのがもっとも強いと思われます。
△9一香、△8一桂という初期配置からして、安定感もあります。
将棋の序盤は飛車が角を責め、角が飛車を責めるゲームです。

とすれば、△8四歩、△8五歩と歩を伸ばす手は将棋で最も価値のある手順ではないでしょうか?
角を責めれば、角の方に駒を集めて守ってあげないといけない。だから金銀が駒が左に集まる。だから玉も左に囲う。それが相居飛車の原点です。

振り飛車は「捌き」というように、角のみで軽く飛車先を守っています。
それゆえ、角の自由度が下がり、また角交換されてもいけません。
左の駒を最小限にして右辺に囲おうとしますが、やはりバランスを欠いていて何らかの不都合が生じます。
捌けたときは左辺に駒が残らない美しさがありますが、押しつぶされるときは左辺の駒が足りないのが原因です。

相手の玉が2二へ行くから、▲7七角が良いポジションというのは結果論でしかありません。
△2二玉と行けるから行くのであって、行けないときは違うことをすれば良いのです。だからミレニアムなどの戦型も発達してきました。
行けない時に行ってしまう人が多いから、行けるときに行かない人が多いから、振り飛車という戦法は成立しています。

他にも、金銀を動かすタイミングなど細かく非常に難しい変化がありますが、正しい理屈をもと手順を構成していれば振り飛車から先に動かれるということはないはずです。
厳しいことを言うと、要はミス待ちなのです。
相手がミスしたから駒が捌けるだけ。ミスしなかったら、絶対に捌けることはありません。

それを鑑みたうえで「人間はミスをする生き物だから」という前提を信じて振り飛車を指すのは良いと思いますが、辛い戦法だと私は思います。

そんな振り飛車の話でした。


将棋の上達法

将棋でもっともよい上達法は何か?

そうやって聞かれることも多いのですが、私は決まってこう答えています。
「対局の反省をきっちりすること」と。

どのように反省をするかと言うと、先ほどから注力している通り「言語化」を積極的に行うことです。
間違えた原因と、代わる正しい手の理由を言語にして学びましょう。

*  *  *

序盤と言語化


序盤の言語化を進めれば、その戦法を指すためのヒントや、理由がゆっくり明らかになってきます。

一手一手の意味、それからソフトの評価値の意味。勝ちやすい、負けやすいといった経験による主観を一旦捨てて、純粋な目で局面と手順を見ること。
そして今できる限りで考えて、言葉にする。それがいま正しい内容である必要はありません。

自分で納得できるように、無理やりでもいいから理由付けしてください。

そして、それをどこかに書き残しておいてください。

知識が一つ増えるだけで、考え方は一変します。
読み返した時、どれだけ自分がものを知らなかったか、実感するでしょう。

そうすれば、序盤への姿勢が変わってきます。研究の仕方も、学習効率もどんどん変わってきます。
経験と知識に頼った「とりあえず知っている形を目指そう」という指し方から「駒の配置や戦型の特徴を考えて、色々な方法を考えてみよう」という柔軟な考え方に変わっていくことができます。

深く考えるから、色々な間違いにも気付けるし、新しい発見も多いです。

たくさんの理想形(ゴール)を知っておいてそれを目指すのではなく、ゴールへたどり着くための複数の道のりを自分で編み出せるようになるのが本当の序盤力です。あるいは、自分でゴールを作り出すことも可能です。

究極的に、序盤は自分で考えて作ることができます。
ソフトを使わずとも、ほとんど最善手が見えてくるはずです。

そして自分でデザインした序盤というのは、中盤以降の指し方にも影響します。要するに、方針が確固としてあるから揺らがないのです。
対抗形なら大体方針はわかりやすいですが、特に空中戦なんかでは研究を外れた瞬間ボロボロになるという人も多いでしょう。
しかし、自分で理屈を考えているなら、相手の弱点も、自分の弱点も、やるべきことも、やってはいけないことも、すべて考え抜かれた上でその先を指すことができます。なので、例外的な局面を除いてかなりミスを抑えることができます。

角換わりを暗記ゲーだと思っている人は、気を付けましょう。
あれは暗記ではなく、究極の思考ゲームです。

*  *  *

終盤と言語化

もちろん、終盤戦でも言語化という方法はとても役立ちます。

どう使うかというと「どうして間違えた?」を解明するためです。

序盤に比べて、終盤はわりと手が狭いことが多いです。
先のプランも何となく見えていて、優劣もだいたいどちらかに傾いている。
形勢判断も序盤よりやりやすいですね。

ある程度棋力がある人なら、ほとんど最善手は候補手のどこかにあります。
「3択から選ぶところで、1つの正解にたどり着けなかった……」とか、「考えていたけど、まさかその手だと思わなかった……」
のような現象が結構多いパターンです。

あるいは、全く知らないトンデモナイ手のこともあります。
「これ、いつ使うんだよ……」という手も。

そういう場合って、けっこう反省に悩むものです。
こんな手を一つ反省したところで、もう一生同じ局面なんて出てこないのになぁ。なんて。実際に同じになったこともありませんし。

そういう時は言語化をすることで反省の幅を広げて一般化してみましょう。

*  *  *

筆者の実戦より。

ここで△1九角成は▲1一角成でさすがに速度負けだ……と思って秒に追われて△6六角としました。玉に近いと金を作りたいなと。
しかし実際は△7七歩成に▲5七銀があるので全然攻めになっておらず。

正着は△1九角成▲1一角成△4六香▲3三歩成△5五桂。

「あ。そういう感じなのね……ってそんなのわかるかいっ」
「秒読みだし、△7七歩成▲5七銀をウッカリしたのはまあ仕方ないか……」

という感じで済ますこともできたのですが、頑張ってみましょう。

〇反省会

「どうして△1九角成だとダメだと思ったのか?」
それは、やっぱり玉から遠ざかっている感じだし、敵玉は反対方向が広く見えるし、それに▲1一角成~▲3三歩成の方が絶対に厳しいと思ったから。

「実際は△4六香があったわけだ」
△4六香はそもそも考えていなかったし、まさか4七の地点が急所だとは思わなかったけど、たしかに言われてみればそこが急所だった。

「攻め合ってみたら、こちらの方が早かったようだね」
よく見たら、左辺に逃げられたところで▲6九玉には△6七歩とかがあるし、△7六歩のおかげで結構狭かったんだな。というか、△7七歩成を目指した本譜の方が右辺が広いということに気付いてなかった。
しかも、▲3三歩成とされたら何となく終わりだと思って通り過ぎてたけど、よく考えると▲1一角成から▲3一とまで4手も隙があった。
▲7四桂も逃げ道を塞いでいるように見えてそこまで影響はなかった。


といった感じで間違えた原因を深くまで探ってみた。
そうすると、いくつか共通項が見えてくる。
「距離感の見誤りと思い込み」
「敵玉の弱点がどこかわからなかった」

そう、そこが知りたかった。
自玉に脅威が迫っているとき、正確な手数を読まずに負けとみなすクセ。
敵陣の崩し方におけるそもそもの知識不足。

もしもこの反省をしたあと似た局面に遭遇したら、
「自玉は怖いけど、何手スキか正しく把握しておこう」
「4七の地点を狙うのか……△5六桂打から金を取って△4六香とか?」
こんな感じで、多分次も最善手は指せないだろうけど、全く見当はずれな手を指すということは減ると思う。

*  *  *

いかがでしょうか。私が元気な時はこれくらい反省します。
(あまりに疲れているときは終盤だけパスします……反省は辛いからね。)

終盤のミスを100個集めたら半分くらいは似た傾向のミスをしているものです。思考プロセスのどこかに自覚のないクセが潜んでいます。大体は終盤における「直感」とかそんなもので、なにか勘違いしてたりします。
終盤はベタ読みが正義で、野生の勘で判断すると大抵間違います。「秒読みだから仕方ない」はなるべく反省会で言わないように。

「あの手を指せばよかった……」で終わらせないで、
「自玉の手数計算をすべきだった……」という言葉に変換しておけば、ある日ハッと思い出して自玉に目を向けるようになるもんです。

ある意味、終盤に客観的な目線を獲得することができるのです。
隣に冷静な自分がいるから、良いところで指摘が入るおかげで少しずつミスが減っていきます。

そうやって地道に考え方を矯正していきましょう。
将棋はケースバイケースといいますが、まずは両極の考え方を知っておいて、次に一つずつ「これはどっちのケースだ?」と分別していくのです。
だんたんと真理が見えてきます。ゆっくりと、でも確実に。

非常にめんどくさい学習ではありますが、思考プロセスは自分にしかわからないもの。逆に考えれば、他人からは「なんか急にミスが少なくなったな、あいつどんな修業をしたんだ?」という不思議な効果があります。
苦い薬を飲んでいると思って、自分の愚かさを存分に堪能してください。

ただし、耐性が無いうちにあんまり毎局やろうとすると気が滅入ったり余計に疲れたりするので、1日1回は反省してやるくらいの習慣から始めましょう。


おわりに

将棋というのはとても怖いゲームです。
何が怖いかって、全然上達している実感が無いんですよね。

初心者のときは「あのオッチャンに勝てるようになった」とか比較する人がいたけど、最近では実力の拮抗したライバルばっかりで、自分が強くなってるのかよくわからない。
なんかレートも上がらないし、なんなら2年前より下がってる!
最近勝てないのは、やっぱり不調なのかなって。

そんな日々もあるでしょう。

でも私が思うに、その原因の一つは「感覚で将棋を捉えているから」です。
良い手を指せるときと指せない時がある。レートが高い時と、低い時がある。そういう現象は棋力に関係なく全員に起こっています。すべてが体調や調子のせいではありません。
大切なのは「どうして今調子が悪いのか?」というのをちゃんと聞いてあげることです。言葉にして、自分を納得させましょう。

その過程で、言語化しながらの反省は大きな手助けになります。

「前は見えていた手なのに、今日は見えなかった。どうして……」

『もしかして、昨日勉強してた局面に類似していて、そこに思考がつられてしまったから勘違いしたのでは?』

そんな感じで、学習ゆえの弊害というのは結構多いもので、ひとえに
「手が見えなくなった=不調、弱くなった」ではないことがわかります。
変化を好み、上達に熱心な人ほどこの苦境に遭いがちです。
逆に不調が来ない人というのは、多分強くなっていません。焦りましょう。

同じように、色々なことが原因で不調っぽい兆候が表れるときもありますが、よーく分析してみると「苦手な戦型が連続してた」「ちょうど知らない変化ばっかりの対局が続いてた」など、実は負けても仕方ない状況にあったなんてこともあります。

心身の不調、気分によるパフォーマンスまでは把握が難しいですが、それでも言語化することで「不調っぽさ」から脱却するきっかけを得られることは間違いなく多くあります。
自分の将棋を変えようとしているなら、ぜひ不調にも「休む」以外の手段で真正面から向き合ってほしいと思います。(休むのは大事だけどね)

*  *  *

最後に。

言語化をするためには、対局中も十分に思考することが大切です。
今日からノータイム指しと3切れには別れを告げましょう……。

しかし、将棋は楽しく指さないと意味がありませんね。
言語化も、対局の反省だけでなく、棋譜並べ、詰め将棋など色々なものに使えるか実験してみても良いでしょう。

好きなように、楽しく勉強しましょう。

でも、強くなって勝ちたいなら、ちょっとだけ我慢して頑張りましょう。
考えるのは楽しいことですよ。


それでは、皆さまの棋力向上を願って。
tiny_squirrel

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