おれんじ
あなたを想うようになったのは不可抗力だったのかもしれない。別に特別優しくされたわけでもないし、あなたから話しかけてきたわけでもない。先に穿鑿したのは私の方からだった。
ただの一瞬の心の迷いなんかじゃない。
ましてや錯覚ですらもない。
恋愛とは「春心の勃発」にすぎないものだと古くから俗見にあるが、これは恋とか愛とかそういう漢字一文字では表せないものなのだ。
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あなたと雨の日の道途を歩いたのはいつだっただろうか。にわか雨に濡れないよう買った一つの小さな傘に二人で入りよそよそしい会話をした。自然と私の右肩は雨で濡れていた。決して叶わないものに羨望を抱き手を伸ばしてしまった、ただの私の涙だったのかもしれない。
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