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21.ドタキャンされた彼女

どーもティンクエです。

これまで出会った女の子たちの思い出を残しています。

ヤマなし、オチなし、イミなしの備忘録ですので、お暇な時に。

行きずりの女たちシリーズ


26歳、ドタキャンされた事務員


最後にドタキャンされたのはいつだろうか?

マッチングアプリをしていると、「ドタキャン」とよく出会う。

いるかもわからない。

会ったこともない。

そんな現実味のないデジタルの世界でのやり取りだからだろうか。

人と接することに対する礼節の秩序が少しづつ、でも確実に崩壊していっている気がする。

彼女もそんな秩序の崩壊に巻き込まれた1人だった。



彼女とはpatersで出合った。

patersはP活アプリだ。自分はP活アプリと言えどもお手当なしで活動をしているが、基本は男性が女性を支援するという構造がpatersにはある。ゆえに、マッチングアプリでは珍しく男性側が優位に立てるアプリとなっている。



「今日の温泉旅行中止になった。」

ある日、彼女からこんなメッセージが入った。

この週末彼女は友達と温泉に行く予定だったらしい。旅行に行く前日から「明日から友達と温泉旅行なんだ!楽しみ!」と彼女は浮かれていたのだが、当日に中止になってしまったらしい。残念なことだが、ご時世もご時世だから色々あるのだろう。

「まぢか、どんまい」と慰めのメッセージをし、そこからなぜか翌日に飲みに行く運びになった。



patersには写真を載せている子が多いのだが、彼女は写真を載せていなかった。

「顔を載せていない子と会うのは不安じゃないのか?」そんな風に聞かれることも多いが、それもまた知らない人と会う醍醐味だと思っている。そして、顔を載せていなくても可愛い子は意外と多いものだ。

そんなことで不安とワクワクを交錯させ待ち合わせ場所で待っていた。

待ち合わせ場所に現れた彼女は、マスク越しでもわかるくらい可愛くなかった。醍醐味がどうのこうのとか語っていた自分を殴りたい。毎回事前に写真をもらっておけばよかったと後悔する、もしかしたらそこまでが醍醐味なのかもしれない。と、性懲りも無くまた言ってみる。

ちなみに、マスクを外した彼女は、ものまね芸人のキンタローみたいな顔をしていた。

この時点で今日は飯だけ食べて帰ろうと固い決意をした。


可愛くなくても会話は盛り上がる。特に、ゴールを狙わないと決めたこともあり、気軽に会話が楽しめた。

「温泉旅行残念だったね〜。」

何気なく中止になった温泉旅行の話を振ってみた。

彼女は少し顔を暗くして、

「実は、温泉旅行友達と行くんじゃなくてpatersの人と行く予定だったの、しかも初対面で」

と、彼女は答えた。

「へ?」

どうやら友達行くというのは嘘で、彼女は、patersで初対面の人と温泉旅行に行く予定だったそうだ。それなのにドタキャンされてしまったとのこと。

「前日電話もしたし、当日も待ち合わせ場所で会ったのに、当日会ったら「やっぱ、やめよう!」と言われた。」彼女は続けた。

どこぞのパパよ、せっかくの休みに高いお金を払って行く温泉旅行、そこに現れた子がキンタローだったら、ドタキャンしたくなる気持ちはわかる。それでもそれはあかんやろう。顔を知らないのは醍醐味!で済むレベルじゃなくて、事前に写真交換してお互い傷つかないようにしないと。

と、熱弁したい気持ちはそっと抑えて「初対面の人と旅行とか怖いし、むしろ良かったんじゃない?」と慰めた。「確かに」と彼女も少しは気が晴れたように見えた。

それにしてもp活ってこんなことになっているのか。初対面を旅行に誘うパパもパパなら、それに乗る女の子も女の子だろう。すぐ隣には怖い世界があるようだ。


そこからはpatersや元カレの話をし盛り上がった。

「なんで、patersやってるんですか?下心ないんですか?」

キンタローは興味津々に聞いてきた。

もちろん、下心しかなかった。しかし、お酒の入ったキンタローはテンションが上がって臨戦態勢になっているようだった。少しでも隙を見せたらフライングゲットされてしまう、そんな緊張感が走った。

「ひ、暇な夜誰かと喋れたらって思って」と、しどろもどろに答えると、「本当に〜?」彼女の攻撃は続いた。

そんな彼女の攻撃を回避しつつ、お酒も料理もほどほどに、普段より早めにお会計をした。彼女はまだ話したそうに「私ばかり話してた。もっと話聞きたかった。」と言っていた。この言葉が引き出せるときは、確実にフライングゲットできる。


お店の外を出ると極寒だった。

「寒いね。」

いつもなら手をつなぐタイミングだが、ポケットの中で1人拳を握りしめた。


そのまま歩いていき、改札で彼女とは別れた。

そうフライングゲットは起こらなかったのだ。

勝ちも負けもしない、そんな夜もたまにはある。

そんな思い出。

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