19.中岡な彼女
どーもティンクエです。
これまで出会った女の子たちの思い出を残しています。
ヤマなし、オチなし、イミなしの備忘録ですので、お暇な時に。
行きずりの女たちシリーズ
22歳、中岡な看護師
似ている芸能人は誰?
「ロッチの中岡」
彼女はそう答えた。
ロッチ中岡、
あくまで「個人的には」だが、彼の容姿は端麗な方ではないと思っている。
ちなみに、彼は抱かれたくない芸能人ランキングでは18位だそうだ。
とある連休、用事もなさそうだったの、旅行をすることにした。
旅行の夜は暇なので、Tinderで現地の女性と会うことが多い。この時も、旅行の何日か前からTinderを動かして、何人かの現地の女性とやり取りをしていた。
彼女もそのうちの一人だった。自分の旅行の日と彼女の休みが重なっていたこともあり、夕飯を一緒に食べに行くことになった。
会う日に向かって、不定期にだが、頻繁にやり取りを交わしていた。そんな中で冒頭の会話が生まれた。
「芸能人の誰に似ているって言われる?」
こんな質問をしといてなんだが、彼女自身はプロフィールに何枚も写真を載せていた。唇が特徴的でセクシーな整った顔立ちだということはわかっていた。なのに、質問をしてしまった。話のネタがなかったのか、興味が湧いたのか、何を思っていたかは忘れてしまったが、質問をしてしまったという事実は変わらない。
「ロッチの中岡に似ていると言われたことがある。」
斜め上の答えだった。
これまでのメッセージで彼女は冗談を言うタイプではないことはわかっていたので、本当に言われたことがあるのだろう。
「中岡に似ている子か、、、」
マッチングアプリでは写真と実物が、なんか違うなんてことはザラにある。彼女もその類いなのかもしれない。鬼が出るか蛇が出るか、面白い、これこそ旅の醍醐味だということで、もちろん会ってきた。
彼女と会う日、昼間は観光地を巡り、ネット調べたご当地グルメを一人で堪能していた。
日も落ちてきたので、彼女との待ち合わせの店に向かう。お店は彼女が予約してくれていた。地元の人がよく行く居酒屋だそうだ。地元民の感覚でその土地の味を舌鼓できるのも、現地の女の子と会う楽しみのひとつだ。
彼女は少し遅れると言っていたので、お店に入り予約されたカウンター席で待っていた。お店の雰囲気やメニューを眺めていたが、どんな子が来るのか、いや、どんな「中岡」が来るのか、いつも以上に期待と不安が入り混じり、眺めていた景色はほとんど頭に入らなかった。
ガラガラ...
引き戸が空いて、それらしき女性が入ってきた。
スキニーデニムに緑のタイトなニット、紺のロングコートを着た、丸メガネが似合う、ちょうどよくお洒落な子。
「ごめん、待ったー?」
彼女だった。
そのままマスクを取って席に座った彼女は、写真の通り整った顔、そして少し厚めの唇が特徴的な子だった。
綺麗な子だ。
一安心。
な、はずのに、端麗な彼女は、確かに、どこか「中岡」に似ていた。
蛇も鬼も出なかったが、「中岡」が出た。
丸メガネのせいなのか、少し厚い唇のせいなのか、黒目の大きな瞳のせいなのか、確かに、美人なはずなのに、「中岡」がチラつく。
「大丈夫、綺麗な子だ」そう言い聞かせることで、「中岡」を頑張って頭の隅に追いやった。
もちろん、「中岡に似ているね」なんて告げることなどしない。「お疲れ〜、メガネかわいいね〜」とか言いながら、乾杯をした。
お互いアニメ好きと言うこともあり、好きなアニメを語り合った。好きなものが共通すると10歳以上の歳の差も関係なくなる。まさに、時空を超えて盛り上がった。
地元の料理を味わいながら、お酒を交わし、楽しい時間が続いた。いい感じだった。なのに、ふとした瞬間「中岡」が出てくる。これが芸能界の荒波を生き残る芸能人の力なのか。最初に言われなければ、そうは思わなかったのに、そう言われたことで「中岡」がチラつく。すごい力だ。
繰り返しになるが、彼女は整った顔をしている。なのになのだ。不思議だ。綺麗な彼女の顔を見ていると、いや、もしかしたら、「中岡」も整っているのかもしれない、そんな風にさえも思えてきた。
そんなこんなで、表ではアニメネタを楽しみ、頭の中では「中岡」を追い出す戦いを繰り広げていた。
盛り上がったアニメの話の流れで、彼女の家でアニメを見ながら二次会をすることに。
ということで、「中岡」な彼女とゴールイン。
「中岡」「中岡」言っているが、彼女の名誉のために、もう一度言う、彼女はちゃんと綺麗な女性だ。
もちろん、性格も「中岡」並みに素敵な子だった。
何も悪くない。
そして、「中岡」も悪くない。
誤解がないように、付け加えると、芸人「中岡」を決して嫌いなわけではない。むしろ、バラエティで活躍する様は好きだ。ちゃんとリスペクトしている。
強いて言えば、「芸能人、誰に似ている?」、そんな浅はかな質問をした自分が悪かったのだ。
そう、誰も悪くない、ただ、「中岡」がテレビに出ていると、彼女がふと蘇る。
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