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バックアレー・プラズマ・ヴェンジェンス 1

 深夜の電車で、他愛もない未来を向いたやり取り。
『明日の旅行楽しみですね』
            『クルマは確保したからそのあたりは心配しないで』
『ありがとうございます』
『もう遅いですし,おやすみなさい』
                『おやすみ』

 メッセージの最後には,カヨコから送られた眠そうなアヒルのスタンプがあった。可愛らしい絵に俺の頬は思わず緩んでいた。その瞬間、俺は追跡者が動き出したことに気がついた。素性は分からない。だがいつでも迎え撃つ用意はある。俺は席を立ち、別な車両に移った。人は疎らで、誰が来てもすぐに分かる位置に座ることにした、その時。
 突如、俺のいる列車の電燈が消えた。だというのに、電車は何もなかったかのように運転を続けている。辺りを見渡すと、列車の連結部には青く光る札が貼り付けられていた。顔を上げる。連結部の闇を、札が照らしていた。照らされるのは闇だけではない。三角形のカメラアイが闇と札に彩られて浮かび上がる。トレンチコートと、胸にモニターを装着した二足歩行ロボットが列車に入ってきた。その歩きには、紛れもない自我と、俺に向けられた殺意がある!

「何なんだ、お前」

 思わず俺は問いかけた。

『キミを殺しに来た』

 モニターに”I KILL YOU>―<”の表示を煌めかせ、ロボットは答えた。

続く

サポートによってコーヒー代、おしゃれカフェ料理代等になり作品に還元されます。