見出し画像

劇団四季がクラファンを始めて衝撃を受けた話

信じられない。コロナ禍で各業界が悲鳴をあげている中、劇団四季ですらクラウド・ファンディングを始めるなんて。劇団四季の出発点は仏文学科の学生が集まりジャン・ジロドゥやジャン・アヌイなどのフランス演劇が出発点。キャッツをきっかけにチケットぴあが生まれました。自分を育ててくれた古巣でもあり、演劇界のイノベーターである劇団四季が厳しい状況とあらば応援したいと思います。

劇団四季の出発点はフランス演劇

1953年(昭和28年)7月14日、劇団四季は東京大学文学部仏文科の学生と慶應義塾大学文学部仏文科の学生10名が立ち上げた学生演劇の集団でした。
ジャン・ジロドゥ「間奏曲」やジャン・アヌイ「アンチゴーヌ」などフランス文学作家の書いたストレートプレイを演じていました。
創業者、浅利慶太氏は芸術性を優先して、日本人による創作劇を連続上演して経営危機に陥ったりするよりも、
安定した集客力を持つ高水準の芝居を上演することで、公演だけで法人が成り立ち、劇団員も生活できる経営を志向するようになっていきました。

キャッツをきっかけにチケットぴあが生まれた

日本の劇場は月単位契約のため、大ヒットを重ねても結局収益が限られてしまいます。そこで、西新宿に都が有する空き地を借り、ロングラン公演に踏み切ることを決意。1983年(昭和58年)~1984年(昭和59年)までブロードウエイの『CATS』が上映されると大ヒット。

劇団四季「キャッツ」のロングラン公演スタートに合わせ、1983年10月、コンピューターによるチケット販売「チケットぴあ」がテスト販売開始されました。
「キャッツ」はそれまでブロードウエイミュージカルになじみのなかった日本人に素晴らしい作品があることを教えてくれ、演劇業界ではロングラン公演の礎を築き、興行ビジネスではオンラインチケットという革命を起こすなど、この作品は多くのイノベーションをもたらしました。

公演中止になると年間売上高242億円が吹っ飛ぶ

劇団四季の専用劇場は全国で9か所、浜松町、汐留、大井町、品川、大阪、名古屋、福岡、京都、北海道と大都市の一等地ばかりにあり、年間動員数が300万人を超えます。2019年の年間売上高は242億円を超えました。会社の経営スタッフと俳優さん含めると約1400名が所属しています。東京以外の劇場で出演している俳優さんの宿泊費は劇団が負担しています。コロナ禍の影響で公演中止が続くと240億円以上の売り上げが全く入りません。
公演がなくても一等地に立つ劇場の家賃だけで月数千万、経営スタッフと俳優の人件費も併せて月あたり億単位の支出があるので赤字となります。

就職氷河期に劇団四季と世界ふしぎ発見!の会社しか受けなかった

当初はお堅い学芸員を目指し美術大学へ進んだ私ですが、途中から「劇団四季」か「世界ふしぎ発見!」の仕事しかしたくないな、と思いド不況の就活時にこの2つしか志望しませんでした。当然、大学の就職課からは「アホなの?」と突っ込まれましたが結果、運よく劇団四季に入社し、ライオンキングやキャッツ、美女と野獣などCMやポスターの制作に携わるようになりました。

新卒のペーペーだったため、在団中は毎日のように怒られ、そりゃあもう鍛えられました。いつも5~14公演の制作案件が同時進行し、週末は劇場、平日は広告代理店さんにいりびたり、京都や大阪、福岡の劇場も飛び回りました。この時、激務の中で複数業務をこなすスキルと、どうしたら日本で一番怖いと言われた演出家に広告企画を通すか、緊張しない心構えと度胸が身についた気がします。

マンマミーアのこけら落とし広告の時は慣れない新劇場の立ち上げを目の当たりにし、連日休みなし、深夜まで業務が続き、過労で倒れそうになりました。

開幕初日。満員状態の客席がアバの名曲「Dancing queen」がかかったとたん、総立ちに。スタンディングオベーションをしてくださった時は全身鳥肌が立ちました。「うわぁぁ」とそれまでの苦労が吹っ飛び人目をはばからず大号泣しました。この時の経験がのちにWEBディレクターの仕事や独立して起業する時に、多少苦労があっても「あの時に比べればたいしたことないな」と思えるようになり、複雑な段取りをしなければならない場面で役立ったりしました。

当時は書ききれないほど辛いこともたくさんありましたが、ペーペーによくこんな大役を任せてくれたなぁ、と育ててくれた劇団と先輩に感謝しています。

劇団四季がクラファンを始めた、ときいて「あの大劇団がまさか!!」とショックを受けました。内部留保があるにせよ、このまま月あたり億単位の支出が続くと未曽有の経営危機に陥ることは想像に難くありません。

お世話になった劇団と演劇の未来のために応援したいと思います。

▼【劇団四季 活動継続のための支援】
新型コロナウイルスを乗り越え、再び演劇の感動を全国へ

https://motion-gallery.net/projects/shiki-shien

▼横浜山手のフランス雑貨「ラメゾンドレイル」トートバッグや石鹸、ハンドクリームも。

https://www.ukfrenchstore.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?