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シス担になりました。(ある4月のお昼前)

さて、システム部門に異動してきたは良いものの、専門的な研修なんて何も受けてないんですが大丈夫なんでしょうか?

「それじゃT君、うちの課の概要と業務をざっと説明するね」
「あ、はい課長、よろしくお願いします」

とりあえず、基本的な情報として、うちの会社には大きく分けて「基幹システム」と「情報系システム」の2つがあって、課内の「一係」と「二係」で、分担して管理していること(小規模な専用システムのある部署もあるが管理対象外)、人事異動に伴いユーザー情報の一斉変更が発生する3~4月が繁忙期であること、情報資産を管理すること、ソフト的な管理のほかに、個人のPCから施設内ネットワーク機器までの、ハード面の管理も行っていること……

「うわぁ、思った以上に色々と、覚えないといけない事がありますね……大丈夫かなぁ……」
「まぁ、基本的には前例のある仕事だから、以前の資料見ながら進めてくれれば問題ないと思うよ、解らないことがあれば周りに聞いてくれれば良いし」
「ありがとうございます、やってみます」

初心者にも優しい部署で良かったけど……「使う」と「管理する」は、結構勝手が違うなぁ……あれ?内線?

「あの、ワークフローに変な案件が表示されてるんですけど、コレ何ですか?」
「ワークフローにですか?どんな内容が表示されてますか?」
「関係ない部署の申請が表示されてるんですけど……」
「解りました、調査して折り返しますのでお待ちください」

ワークフロー?確か購入とか支払いが必要な時に使う基幹システムの機能だよなぁ……先任に聞いてみるか……

「すいません、今ワークフローについて問い合わせがあって、関係ない部署の申請が表示されてるっていうんですけど、何かの不具合でしょうかね?」
「うぇ?また?」
「また……ってことは、前例ありですか?」
「あるある……まったく、毎年言ってるんだけどな……Tさん、自分のワークフローの画面見てみて」
「ええと……基幹システムの画面から……ワークフローに移動して……あれ?なんだこれ?」

そこに表示されていたのは、全く違う所在地の施設の購入申請だった。
申請者にも全く見覚えがなく、購入品目にも全く心当たりがない。

「それが『関係ない部署の申請』ですよ……毎年何件かあるんですよね、これ」
「これって……もしかして全ユーザーに表示されてたりします?」
「その通り。『システムの仕様』ってやつですね……」

おお、これがかの有名な『システムの仕様』……

「なんでまたこんなことに?」
「こういう申請って、直感的には申請者から順番に、部署ごとの承認者を探して辿っていく……っていうイメージじゃないですか?」
「そうですね」
「ところがコイツ、申請開始時点で、スタートからゴールまでその時点の承認者全員を加えたルートを固めちゃうんですよ……」
「あぁ、その途中で承認者が異動するとルートから消えて……」
「そう、何故かユーザー全員に表示されます」
「……なんで処理を中止して申請者に戻すとかしないんでしょうね?」
「さぁ……?『仕様』ってことみたいですよ?」

どんな『仕様』なんだか……単純に処理中のユーザー異動を想定してなかったんじゃないかなぁ……

「なるほど……では、対応はどうすれば?」
「申請者に引き戻してもらって、取り消さずに再申請すれば、現時点の承認者を対象にルートが再作成されるので、お昼直前で申し訳ないですが連絡お願いできますか?」
「わかりました、質問者に回答して、申請者に連絡しておきますね」
「お願いします……やれやれ、3月中に完了しないワークフロー申請は引き戻せって全部署に連絡しておいたんですが……迷子申請は中々無くならないですね……」

異動早々、『お約束』に遭遇するとは……幸先良いのか悪いのか……
ま、そんな重篤なトラブルじゃなくて良かったか。

……もちろん良いはずがなかったのだが、その時は知る由もなかった。

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