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シス担になりました。(ある5月の夕刻)

情報システム部門が取り扱うのは「情報」や「システム」に関するあらゆるコトですが、情報資産管理やサーバの保守といった「ソフトの仕事」だけではなく、PC端末や周辺機器の調達や設置、時には施設内のネットワーク設備の変更といった「ハードの仕事」も取り扱います。

「あ、Tさん、今度3階に新しく設置される機器用に、専用のネットワークのラインを引っ張る必要があるんですが、設置する業者さんがその階のフロアスイッチの状況を確認したいって言ってるので、立会お願いできますか?」
「はい課長……ところでフロアスイッチって何ですか?」
「あー……ええと、まず、この施設のネットワークはここ最上階にあるサーバー室で外部と接続しています。」
「はい。」
「サーバー室に引き込まれたネットワークはコアスイッチという機器を経由して光ケーブルで各フロアと結ばれて、この時にフロアごとに設定されているセグメントに分けられます。」
「はい。(セグメントって何だろう?)」
「この時、各フロアの中心に設置されているコアスイッチからの光ケーブルが直接つながる機械をフロアスイッチといって、ここからそのフロアの各機器に向かってネットワークが配線されます。」
「なるほど、そのフロアのネットワークのボスって感じですかね?」
「まぁ、そんな感じです。3階のフロアスイッチはココに設置されていますので、業者さん案内してあげてください。」

課長が差し出す見取り図上に示されたフロアスイッチの場所は……

「はい、わかりました……って、ええ?ホントにココですか?」
「ビックリしますよね……私も初めて聞いたときは驚きました、充分に注意して案内してあげてください」
「そりゃ注意が必要ですよ……何でこんな設計なんですか……ヘタすると死にますよ、社会的に……」

フロアスイッチの場所は……各フロアのEPS室内。
1階と偶数階は廊下に面しているんだけど……3階と5階は女子トイレの一番奥に入口が表示されていた。

「いや、男子トイレと逆にするとか出来たハズですよねコレ。」
「だよねぇ……実際1階のトイレ配置は逆だし……不思議だねぇ……」

不思議だねぇ……で済まさないでほしい、踏み込む身にもなってよ……

……調査当日……

「……というわけで、フロアスイッチはこの奥のEPS室内です、よろしくお願いします。」
「はぁ……この奥、ですか……」

うん、驚きますよね……
さて、ココしか入り口がないとはいえ、このままでは踏み込めない。
内部の不在を確認しないと大変なことになるけれど、僕がノックして回る訳にもいかないし……どうしたものか……

「あれ?Tさん、こんなところで何してるんですか?」
「あ、Kさん?よかった、助かった……」
「はい???」
「すいません……実はこの中にネットワークの機械が収納されていて、業者さんを案内したいんですが……中に誰もいないか確認してもらえませんか?」
「はぁ……良いですけど……大変ですねぇ……」
「そんな呆れた顔しないでくださいな……このフロア、女性の知り合いあんまりいなくて困ってたんですよ……ホント助かります。」

状況確認……え、1か所使用中?
少し待ちましょう……うう、気まずい……

……数分後……

さて、Kさんにお礼を言って、扉を開けて固定して、「違う階のトイレをご利用ください」の案内表示掲示して……

「これでよし、ではお願いします」
「……大変ですねぇ……」

大変でしたね。

「課長、確認作業終了しました、フロアスイッチ周りに配線や機器設置に必要なスペースは十分あり、問題ないそうです。」
「お疲れさま~……大変だった?」
「いや……まさか仕事で女子トイレに入るコトになるとは思いませんでしたよ……」
「ははは、思わないよねぇ……あ、そういえば今度、フロアスイッチのUPS交換作業があるから、また立会お願いしますね」
「え、もしかして3階だけではなく……?」
「ええ、5階も含まれます」

……今度は事前に内部確認協力者を確保しておこう。


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