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シス担になりました。(ある3月の昼下がり)

うちの会社はこの時期、どの部署も何となく浮ついた雰囲気になる。
もちろん、みんな仕事は真面目にこなしているけれど、ちょっと手が空けばヒソヒソと噂話が飛び交っている。

そう、人事異動の内示である。

やれ、誰それがどこに行く、とか。
やれ、誰それがここに来る、とか。
やれやれ……そんなに気になるかなぁ……自分が異動になる訳でもあるまいに。
まぁ、今日の午前中には人事部門から各部署の課長に伝達があって、午後に課長から異動対象者に伝達という流れだから、今日課長に呼ばれなければ異動は無い訳だ。
昨年、顧客データをシステムに登録する部署の係長になったばかりの僕は動かさないだろうから、問題は係内に動く人がいるかどうかなんだけど……

「あ、T君、ちょっといいかな?」
「あれ?課長?……え?わたしですか?」

え、いやまさか、そんな。
県境を越えるような遠隔異動は先月伝達されているはずだから、長距離異動は無いにしても……

「4月から情報管理課だって、頑張ってね」
「はぁ……はい、わかりました」
「T君、パソコン得意だから大丈夫でしょ、残されたこっちが、ちょっと不安だなぁ……」

あぁ、これはあれか、ネット上で時々見かけるPC使うのが得意なだけで、システムやネットワークを管理する知識も技能もないやつをシステム管理者にしてしまうあのイベントか。
正気ですか……でも内示は断れないし、興味のある分野でもあるしなぁ……

「ちなみにわたしの後任はどなたが?」
「ああ、N君。引継ぎよろしくね」

う~ん……出張所の縮小に伴う人員の整理っていう側面が有るような、無いような……所謂玉突き人事というヤツなのではないだろうか……?

「わかりました……なんとかやってみます」

その時僕は、自分が何を承諾したのか、よく解っていなかった。
……そう、解っていなかったのだ。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         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