コンセプト検証と手法の備忘録
起業してからずっと仮説検証の日々ですが、ふと考えました。
「そもそも仮説検証ってなんだよ?!」
そう、あまりにもみんなが「仮説検証!!!」、「PDCA!!!」、って叫んでるので当たり前のことだと思っていたのですが、もう少し解像度高く仮説検証について学びたいと思いここ2週間くらい掘ってました。
以降では起業する際の事業の検証を仮説検証として進めていきます。
今回は「Google×スタンフォード NO FLOP!失敗できない人の失敗しない技術」を参考書にしています。
前提:ほとんどの事業は失敗をする
ほぼすべての事業は失敗します。
GoogleですらGoogle+などで大きな失敗をします。
緻密にマーケット・リサーチをする彼らですら失敗してしまうのであれば、ほとんどの事業でも失敗をする可能性が高いでしょう。
失敗の3つの理由と多くの事業が陥る失敗
失敗の下記3パータンに集約されることが多いです。
1.デザインや性能が不十分
2.マーケティング(特にプロモーション)が不十分
3.そもそものコンセプトが間違っている
その中でも特に「3.そもそものコンセプトが間違っている」ことが失敗の起因である理由のほとんどを占めます。
ユーザーが求めるものをつくる
著書の中では「ロングイット(Wrong it)」を間違えたコンセプトとし、ユーザーが求めるものを「ライトイット(Right it)」を見つけようと言っています。
これはポール・グレアムが言う「Make Something People Want(人々が求めているものを作り出せ)」に近いですね。
馬田さんの下記Slideがめちゃくちゃ分かりやすく過去エッセイがまとまっているのでぜひ読んでない方は読んでみてください。
意見は必要ない、データが必要だ
「誰かがこう言ってた!」、「計算上こうなるはずだ!」などの意見は全く必要ありません。
必要なのはユーザーからの直接のフィードバック(データ)のみです。
ユーザーが必ず市場を支配しているので、自分たちが届けたいユーザーからのフィードバックだけにフォーカスしましょう。
このときに重要なのは意思決定に使うデータが自分自身で収集したデータ(Your Own Data)なのか誰か他の人が集めたデータ(Other People Data)なのかです。
誰かの意見や他の人が集めたデータは現実世界を反映してない可能性が高いので、自分で直接集めたユーザーデータだけを信じようということですね。
「身銭」を伴うデータかどうかを意識しよう
ユーザーから収集するデータだっとしても「身銭」を伴わないデータには価値がありません。
なぜなら、「身銭」を伴わない場合ユーザーは本当のことを言っていない可能性があります。
例えば私が運営してるオーダーメイド結婚指輪サービスmemoringの場合、3,000フォロワーくらいいるInstagramのユーザーに「オーダーメイドで結婚指輪作りたいですか?」と質問したら80%がオーダーメイドがいいと回答します。
しかし、これはInstagram上で回答するだけでいいので実際の彼らの行動を予測することには使えません。
実際に「オーダーメイドの結婚指輪について知るためにメルマガ登録する」「デッサン体験会に参加する」などの「身銭」を伴うアクションを取るユーザーのデータを集めることが重要です。
※「身銭」は金銭だけではなく、メールアドレスの提供や時間の提供なども含みます。
ここまでが前提の考え方です。
これからより具体的な仮説の立て方、検証の仕方について見ていきましょう。
まずは粗く事業コンセプトの仮説を立てる
まずは粗くてもいいので事業コンセプトの仮説を立てましょう。
memoringの場合には下記のようなざっくりした仮説からスタートしています。
世の中の流れ的に若者はブランド志向ではなく、ジブンゴト化できる製品を好む傾向が高く、結婚指輪もブランドではなくストーリーで選ぶ時代が来る
検証可能な仮説に作り変える:XYZ仮説
粗い事業コンセプトでは仮説とは呼べないので、検証可能な仮説に変換していきます。
そのときに便利なのが「XYZ仮説」という手法です。
これは「少なくともX%のYはZする」というフォーマットです。
これをmemoringに適応すると下記のような仮説になります。
年間婚姻組数60万組の少なくとも1%はオーダーメイド結婚指輪サービスmemoringを利用する可能性がある
※実際に自社で見てる数字とは違う数字にしていますがイメージする上で記載しています
ズームイン:更に検証可能性を上げる手法
上記の仮説でフォーマット上は検証可能になりましたが、まだまだスコープが広く実際の検証には時間がかかります。
その場合ズームインすることでより検証可能性をあげることができます。
memoringが運営するInstagramコミュニティの3,000フォロワーのうち、少なくとも5%はオーダーメイド結婚指輪に興味を持っており、そのうち更に1%は実際にデッサン会に参加する可能性がある
このように実際に今の自分がアクセスすることができるターゲットに絞り、小さな形で検証をしていきます。
最強の仮説検証ツール「プレトタイピング」
上記の仮説を実際に検証するとなった場合には多くの方が「プロトタイピング」が必要だと考えるでしょう。
しかし、プロトタイピングを作るにも時間とコストがかかります。
スピードを持って仮説検証をするにはどうすればいいのでしょうか?
その答えが「プレトタイピング」です。
プレトタイピングではプロトタイピングよりもより手前のフェーズを指します。
プロトタイピングでは技術的に作ることが可能化を検証することができますが、プレトタイピングでは「そもそもそれって作る必要があったんだっけ?」ということを検証するために行います。
数十年前にIBMが音声入力でタイピストをリプレイスするというプロジェクトを立ち上げたそうです。
実現には10数年と数十億円がかかるプロジェクトです。
プロジェクトメンバーはまず最初になにをしたでしょうか?
プロジェクトメンバーは音声入力が完成したとクライアントを集めて、実際にデモを見せたそうです。
しかし、実際には隣の部屋にタイピストが待機し、聞こえてくる声をタイプして画面に表示していただけだそうです。
クライアントは最初は喜んで使用したそうですが、数時間後には声は枯れるし、社内でも機密性の高い情報を扱うことができないことを理由に使うのをやめたそうです。
こんな単純な手法で10数年と数十億円の損失を回避したといういい例ですね。
プレトタイピングの種類
概念的には前項で紹介したので、ここでは具体的なプレトタイピングの種類をまとめます。
・メカニカル・ターク型
・ピノキオ型
・ニセの玄関型
・ファサード型
・YouTube型
・一夜限り型
・潜入者型
・ラベル張替え型
などいくつかの例が紹介されています。
これらはぜひ本書を手にとって読んでみてください。
プレトタイピングで収集したデータの分析
プレトタイピングで収集したデータは序盤に説明した「身銭」で評価をする必要があります。
ユーザーがどれだけ真剣にそのプロダクトを求めているかを示す指標となるためです。
一番重いのは「お金を払う」、次に「時間をくれる」、「電話番号/メールアドレスを教えてくれる」などのように評価していきます。
重要な3大ルール
ここまでで検証の進め方の話はほぼ終わりました。
しかし、検証を進める上で重要なルールが存在するのでそれもまとめておきます。
1.グローバルに考え、ローカルに検証する
2.48時間以内に検証する
3.とことんコストを落として挑む
1.グローバルに考え、ローカルに検証する
仮説はざっくり作るが、実際に検証する際には検証可能な仮説に作り変え、かつすぐに検証できる場を見つけて検証をする必要があります。
memoringの場合ではInstagramに3,000フォロワーがいるので、彼/彼女たちが検証のパートナーとなります。
2.48時間以内に検証する
これは少々比喩的に捉えて良いと考えていますが、すぐに検証できるものでないと学習速度が遅くなるということです。
いくつか検証したい内容があるのであれば、まずは検証速度が早いものから着手しましょう。
多くの場合は検証速度が早いものが検証できないのであれば、より時間がかかる仮説は検証不要なものの可能性が高いです。
3.とことんコストを落として挑む
仮説検証は回数が重要なので可能な限りコストを落として検証を回す必要があります。
1,000万円かかると思われる仮説検証でもやり方を変えるだけでコストを10万円以内に抑えることもできる可能性があります。
まさに前出のIBMがそのような事例ですね!
memoringでもなるべく検証回数を増やすために、バーンレートをめちゃくちゃ落として経営を行っています。
だいたいこの辺を抑えて検証を回していければと思います。
かなり自分用の備忘録を兼ねて書いてるので、わからないところがある場合はぜひ原著をあたってみてくださいね!
補足
この書籍だとかなり定量データに偏っているので、ぜひ定性情報の収集もしたいですね!
その場合はユーザーインタビューが有効だと思うので、ぜひユーザーインタビューも一緒に掘りましょう!
※ちなみに「スキ」を押すとおみくじになっているので、ぜひ遊んでね!
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