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グランプリ・本木真武太さんインタビュー、TikTokとカンヌ国際映画祭による「#TikTokShortFilm コンペティション」で受賞

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「やっとスタートラインに立てたという気持ちです。ここから、どんどん上を目指したい」

そう話すのは、東京を拠点に活動するクリエイター本木真武太(もときまぶた)さん(@lang_pictures)です。

2022年5月17日から28日にかけて開催された、第75回カンヌ国際映画祭。

ショートムービープラットフォーム「TikTok(ティックトック)」は、この歴史ある映画祭のオフィシャルパートナーとなり、グローバルで「#TikTokShortFilm コンペティション」を開催しました。

「30秒から3分以内」「縦型スクリーンフォーマット 9:16」などの条件で、誰でも参加することができた同コンペティション。

世界44の国と地域から数多くの作品が集まり、「#TikTokShortFilm」をつけて投稿された動画の総再生回数は、現在までに50億回以上再生される盛り上がりとなりました。

カンヌの伝統的な賞の形式に沿って、映画業界を牽引するグローバルなメンバーで構成された審査員により、グランプリ、最優秀編集賞、最優秀脚本賞の3部門が選出。

世界中が注目を集めるなか、真武太さんが手掛けた『Kitte kitte iino?(木って切っていいの?)』が、グランプリを受賞する快挙を成し遂げたのです。

『Kitte kitte iino?(木って切っていいの?)』は、日本の伝統工芸である「桶づくり」を実際の職人が演じた3分間の短編映画。

職人の技をリズミカルに捉えて、物を大切にすること、その思いを未来につなげることをメッセージとして伝えた本作は、TikTokで95万件以上の「いいね」、1200万回以上再生され、全世界から大きな反響が寄せられています。

10歳から映画監督を志してきた34歳の真武太さん。高校、大学はカナダで映像制作を学び、帰国後は日本でビデオグラファーとして活動をつづけてきました。

しかし一緒に夢を追いかけていた仲間が離れて行き、生計が立てられず映画監督の夢を諦めようとした時期もあったといいます。

それでも続けてこられたのは、どんな時も信じて支えてくれた家族や仲間の存在がありました。そしてTikTokとの出会いが人生を大きく変えてくれたと話します。

作品に込めた想いや、カンヌ国際映画祭について、また受賞を経てクリエイターの皆さんに伝えたい想いなど、お話しを伺いました。

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短編映画『Kitte kitte iino?(木って切っていいの?)』について


――――本作には、どのような想いが込められていますか。

一番伝えたかったメッセージは物を大切にすること、そしてその想いを未来につなげることです。誰かが想いを込めて創られたものが、いま皆さんの手元にはあると思います。

映画に登場する木も何百年も前から植えられたもの。当時、植えた人はもう亡くなっていても、いま手元にはその人が植えてくれたものが残っている。それはすごく素敵なことですよね。そういった想いをこの映画を通して伝えたかったです。

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『Kitte kitte iino?(木って切っていいの?)』より

環境問題のメッセージに、どのようにアプローチするかは、大きなチャレンジでした。そこであえて環境問題の全てを語らずにシンプルストーリーにして、桶職人や桶自体に魅力を感じて、先ず好きになってもらう。そこを一番に考えました。

人は好きになったら「守りたい」「大切にしよう」と、考えが絶対に変わっていく。それが環境を守る事へとつながると思いました。

この映画を通じて、一人ひとりに、そうした想いが広がっていけば嬉しいです。

――――桶職人という物語の着想はどこから得たのでしょうか。

映画に登場する桶職人の「かずま」は昔からの友人なんです。彼のおじいちゃんが桶職人で、ある日、横浜にある工房で桶づくりを見せてくれました。

木の特性を活かして緻密に設計された美しい桶を作られていて、本当に感動しました。その時、いつかおじいちゃんの職人技を映画で伝えたいと思いました。そのはずが、おじいちゃんは1年前に亡くなってしまいました。

かずまはプロのミュージシャンとして活動する傍ら、工房を引き継ぎました。そしてやった事のない桶づくりを始め、普通では何年間も修行しないと作れない桶を、たった1年で作れるまでになったのです。

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映画に登場する桶職人、かずまさん

それは職人の血を引いた彼の類まれな集中力や、積み重ねてきた努力の現れでもありました。おじいちゃんで撮れなかった映画でしたが、孫のかずまが意思を受け継いで桶を作り上げることが出来るようになった。いまだからこそ伝えられるものがある、と感じてこのテーマで挑戦することを決めました。

また、この映画は僕とかずまとの関係性のなかで生まれた作品でもあります。

劇中に登場するおばあちゃんは、かずまの実のおばあちゃんで、僕が出演をお願いしました。黒い服の男は僕が演じていますが、二人の関係性だから、自然に演じることができたと思っています。

5_出演者
真武太さん(左)、かずまさんのおばあちゃん(右)

僕とかずまは15年前に知り合い、僕は映画監督、彼はミュージシャンと、夢を目指して励ましあってきた。作品としてコラボする上で、お互いにとって前進となる作品にしたかったんです。

かずまの桶職人としての腕前や、ものづくりに向き合う姿勢、伝えて欲しい想いを理解して、映像に落とし込んで映画で伝える。それが映画監督として出来る、僕の役割だと思いました。

――――TikTokで公開する上で、意識されたところはありますか。

とにかく作品を最後まで観て欲しかったんです。冒頭は人の興味を掴むため早いカットを取り入れました。桶職人が作業する音もリズミカルに捉えて、心地よく感じられるように合わせています。

ただそれだけだとセリフがなくストーリーを伝えるのが難しい。そこで「早いカット」と「セリフのあるカット」を、テンポよく交互に展開させて、観ている方が飽きないようストーリーに緩急をつけました。

また縦型の構図をどのように上手く使うかを意識しました。縦型は横型の動画に比べて情報量が限られます。その限られた情報のなかで見て欲しい所に一番目がいくような構図になるよう撮影をしてきました。

6_撮影手法
桶づくりの工房に引き込まれるようなカット

スマートフォンで撮影しているような親近感が湧くカットと、桶の中や、カンナの下からなど面白い視点を映すシネマチックなカットなどを取り入れて、観ている方が桶づくりの工房に引き込まれたらいいなと考えました。

普段のTikTokではシネマチックな映像を投稿していますが、1カット1カットどこを切り取っても絵画みたいに美しい構図に強くこだわっています。

本作もそうした「画力」(絵で表現する力)を意識して撮影に挑みました。

――――本作は、4月8日にTikTokで公開すると瞬く間に大ヒットに。5月には、カンヌでグランプリ受賞と、この1ヵ月、驚きの連続だったのではないですか。

TikTokの縦型で短編映画を撮影するというチャレンジでしたが、公開から大きな反響をいただいたことに心から感謝しています。

2022年の春は、めでたいことがたくさん起きて、まるで導かれるように受賞につながっていきました。

実は、二人目となる娘が5月10日に生まれたのですが、その日の花言葉は「よい知らせ」。

なんだか嬉しい知らせを運んでくれるような、そんな気持ちになっていたら、カンヌ国際映画祭での受賞の話が舞い込んできたんです。

もしかしたら生まれてきた娘が引き寄せてくれたのかなと思っています。

カンヌ国際映画祭について


――――カンヌ国際映画祭で開催された「#TikTokShortFilm コンペティション」、授賞式に出席されてどのようにお感じになられましたか。

記念すべきコンペティションの第1回に、日本人である僕の作品をグランプリに選んでいただけたことは、ものすごく光栄なことだと思っています。

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「#TikTokShortFilm コンペティション」授賞式の様子、グランプリを受賞する快挙を成し遂げた。

クリエイターとして有名かどうかは関係なく、日本の伝統的な文化である桶職人を捉えた構図や、テンポよく展開される編集、ハートウォーミングなストーリーなどを評価していただきました。

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映画業界を牽引する審査員と、他の受賞者たち

また世界中から集まった、他の受賞者とも受賞を讃え合いました。皆、素晴らしい作品を届けているなか「グランプリに値する作品だよ」と言ってもらえたことがすごく嬉しかったです。

映画内で、かずまが作り上げた桶を、審査員の1人でもあるカビー・ラメさん(Khaby Lame)(@khaby.lame)にプレゼントしたら「日本の伝統工芸はすごいね!」と感激してくれました。

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審査員の1人、フォロワー世界2位のTikTokクリエイター、カビー・ラメ(Khaby Lame)さん
10_他国のクリエイター_クレジット入れ済_pierremouton
真武太さんの他、スロベニアのクリエイターMatej Rimanic(@rimanic)さん(前列右)がグランプリを同時受賞(チーム:前列2人)、ニュージーランドのTim Hamilton(@tim.diddle)さん(後列右)が最優秀編集賞(チーム:後列右・左)、フランスのClaudia Cochet(@claudia_cochet)さん(後列右から2人目)が 最優秀脚本賞を受賞。

カビーさんも他の受賞者も、日本の文化やアニメが大好きで、いつか日本に行ってみたいと言ってくれる。日本のマンガ家などクリエイターさんのお陰で日本に興味を持ってくれて、話に花が咲きました。

世界中のクリエイターが集まる映画祭で、日本のクリエイティブが国を越えて親しまれていることを実感することができて良かったです。

――――カンヌ国際映画祭でレッドカーペットを歩かれてどうでしたか。印象的なエピソードがありましたら教えてください。

カンヌの海岸から丘を登って街を見下ろしたとき、世界中から船が行き交い、カンヌという街全体が映画祭を盛り上げている光景を見ることができました。

TikTokがオフィシャルパートナーということで街のいたるところでTikTokの映像が流れている。カンヌ国際映画祭という歴史ある映画祭と、TikTokという最先端のプラットフォームがひとつになった新しい映画祭だと感じました。

11_レッドカーペット
カンヌ映画祭のレッドカーペットに真武太さんたちも登場

授賞式の前日は、アン・ハサウェイ主演の映画『アルマゲドン・タイム』のプレミアに招待されて、人生で初めてレッドカーペットの上を歩きました。

監督さんや演者さんが劇場へ入場してくる際、観客のみんなが立ち上がって拍手で出迎えます。そのときブワッと吹き抜けるような熱気や、地鳴りのような大歓声が足先から頭のてっぺんまでつきぬけていく。

そんな夢のような場所に自分が立っていることが信じられなかったです。

12_アルマゲドンタイムの子役たち
映画『アルマゲドン・タイム』のキャスト、ジェイリン・ウェッブさん(左)、マイケル・バンクス・レペタさん(右)との出逢い。こうした交流が沢山あった。

滞在したホテルでは豪華な食事や祝いの品が部屋に届けられて、本当にたくさん「おめでとう」とお祝いしてもらいました。

そのとき10歳から映画監督を目指して、なんとか続けてこられた24年間を振り返りました。

「真武太、お前はよく、いままであきらめずに頑張ってきたな」そう心の中で、自分に伝えました。

映画監督の夢を追いかけてきた


――――真武太さんの、これまでの活動を教えていただけますか。

10歳の時から映画監督を志して34歳になりました。高校、大学は映像制作を学ぶためカナダへ単身で留学して、映像はもちろん役者としても芝居を学んだり、下積みを重ねてきました。

21歳で日本に帰国してからは映画監督を目指しながらフリーランスのビデオグラファーとして活動して、2019年には企業のPVやコマーシャルなど映像制作を担う合同会社「LANG PICTURES」をカナダの大学で出会った仲間と共に立ち上げました。

13_真武太さん_カナダ留学時代
10代から、カナダで映画制作を学んできた真武太さん

ただ、ここまで順風満帆だった、というわけではありません。一緒に夢を追いかけていた仲間が私の元を離れて行ったり、生計が立てられず映画監督の夢を諦めようとした時期もありました。

20代前半はスマートフォンもない時代です。映画監督はもちろん、役者やミュージシャンを目指す仲間を見渡しても、自分が創った作品を披露できる場や、才能を見出して可能性を広げてくれる人と出会う機会は、とても少ないと感じていました。

それでもやり続けてこられたのは、どんなときもずっと信じて応援してくれた兄妹や、親、妻、二人の娘といった家族、仲間の支えがあったからです。

そして少しずつ時代が変わっていきました。自由に作品を発信できるTikTokに出会ったことで、人生は大きく変わりました。

この時代に生きていて本当に良かったなと思っています。

クリエイティブの意欲を高めてくれるTikTok


――――TikTokの、どのようなところに魅力を感じますか。

TikTokでは2020年7月から、動画の投稿を行ってきました。僕は長野県出身で、海や山などの自然が大好きなんです。その自然を、映像制作会社ならではのドローンなど最先端な映像を取り入れて、シネマチックに映してきました。

14_lang_TikTokアカウント
シネマチックな映像を創る 「LANG PICTURES 」のTikTok

社名「LANG PICTURES」の「LANG」は「Language(=言語)」で、「映像が言語になる」という想いから。言葉の壁を越えて、世界中の人に伝わる作品を創りたいと投稿を続けてきました。

TikTokはコンテンツファーストのアルゴリズムで世界中の方に作品を観てもらえて、コメントもコミュニティのように盛り上がります。

僕にとってコメントは教科書みたいなもので、観ている方の興味関心をそこで知り、そのインスピレーションから、新たな作品を創っています。

TikTokで開催されるハッシュタグチャレンジなどのイベントも動画を作る意欲を刺激してくれます。自分の作品が評価されると自信になり、その喜びが次の創作につながっていく。

創造性を高めるプラットフォームとして手軽に投稿できる機能面はもちろん、イベントを通して誰にでもチャンスを与えてくれる。

TikTokから世界に誇るクリエイターが多く誕生している理由はそこに在ると感じています。

TikTokから映画監督が生まれる時代へ


――――TikTokは、映画業界の未来を創ることにつながると感じますか。

いまは「縦型なんて映画じゃない」と言われる方もなかにはいるかもしれません。

ただ僕は縦型でも短編でも長編でも、きちんとストーリーがあって伝えたいメッセージがあるなら映画だと胸を張って言いたいです。グランプリを受賞したからこそ、縦型映画に関して先駆者(パイオニア)と思ってもらえる存在になりたい。

映画監督デビューのきっかけとしても、TikTokの映画制作は大きな可能性が広がっていると思います。来年、再来年、TikTokの短編映画から、より強者が現れて、有名作品を手掛ける監督が誕生する世界は絶対にあると感じています。

また横型の長編でも皆さんに感動してもらえる作品を創って、自分の作品を持って、カンヌの地に戻ってくることを心に誓いました。

カンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩いて、劇場でないと味わえない映画の良さも、より一層強く感じました。先人たちの知恵のおかげで、新しい映画の表現は生まれています。

縦型という新しい映画をつくる一人として、古いものの良さ、新しいものの良さ、それぞれが価値を高め合っていけるよう、その発展に貢献していきたいです。

クリエイターの皆さんへ、メッセージ


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いま自分のなかでやっとスタートラインに立てたという気持ちです。ここから、どんどん上を目指したいと思っています。

有名な長編映画の監督になれた時、カンヌの「#TikTokShortFilm コンペティション」でグランプリを獲った監督なんだ、あそこがスタートだったんだ。あの場で人生を変えたから、いまこうなっているんだと言えるよう、これからも高みを目指していきたいと気持ちを新たにしています。

ここまで続けていくなかで、この先、幸せになれるのか、悩んだ時期もありました。映画監督を目指さなくても、人それぞれ幸せな人生を送っている人はたくさん居ます。

それでも「人に夢を与える仕事だから」「自分たちの夢でもあるから」と、どんなときも信じて支えてくれた家族、夢を語り合い「一緒に頑張ろうね」と、想いを持ち続けてくれた仲間がいます。

だからこそ、なんとか諦めずにここまで乗り越えてこれました。

そして本当に、諦めなくて良かったと思うんです。もし諦めていたら、笑顔でトロフィーを受け取ることもありませんでした。

夢を持って活動しているクリエイターの方がたくさんいると思います。どうか自分のやっていることを信じて、勇気を持って前に進み出して欲しい。

夢を諦めないでくれたら、本当に嬉しいです。

クリエイタープロフィール

本木真武太(もときまぶた)
MABUTA MOTOKI

東京を拠点に活動する長野県出身の映画監督・ビデオグラファー。
合同会社LANG PICTURES代表。

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