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元日テレアナウンサーが人気TikTokクリエイターになり書籍化決定! 投稿前の驚きの”市場調査”とは<上田まりえさんインタビュー>

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突然ですが、皆さん。

「役不足」の正しい意味を知っていますか?

実はこの言葉、「その役目に対して自分の力が足りていない」という謙遜の意味ではなく、本来なら「与えられた役目が自分の力よりも軽すぎる」という不満を示すために使うもの。

前者の場合は「力不足」が正解です。うっかり誤用していた人も多いのではないでしょうか。

…そんな日本語のよくある勘違いなどを、TikTokの動画で紹介しているのが、タレントの上田まりえさん(@marieueda929)。

上田さんといえば、かつては日本テレビで活躍していた人気アナウンサー。

そんな上田さんが今、TikTokを活用して、元アナウンサー として前例のないキャリアを歩みつつあります。

2021年7月には、TikTokをきっかけに著書『知らなきゃ恥ずかしい!? 日本語ドリル(祥伝社)』」を上梓するなど、いま、仕事の幅を大きく広げているのです。

テレビやラジオでも人気の上田さんが、いかにしてTikTokを使いこなし、いかなるキャリアを思い描いているのか。

その裏側にある想いや、成功の要因を探りました。

なぜ”ネタ切れ”にならない?上田さん流・TikTokで投稿するネタの見つけ方

「上田まりえの日本語教室」と題した、上田さんのTikTokアカウント。

@marieueda929

#上田まりえの日本語教室 👩‍🏫】「収束 or 終息」どちらの漢字を使うか、アナタはわかりますか❓レベル5🌟 #TikTok教室 #日本語 #上田まりえ #知らドリ #祥伝社 #漢字 #問題 #クイズ #収束 #終息 #終息しますように

♬ Level Up - Ciara

その名の通り、動画では言葉の本来の意味や使い方、漢字の読み方など、知って得する日本語の豆知識を紹介しています。

そもそもなぜ、このテーマでTikTokを始めようと思ったのでしょうか。

「私自身、アナウンサーになるまでは、国語が好きなだけの普通の大学生でした。だから、仕事として言葉と向き合うようになって、『この言葉って本当はこんな意味だったの!?』と驚かされることが多かったのです 。そこで日本語に関するたくさんの知識を得ていたので、テーマにするならこれしかないなと」

「それを別のメディアで展開してもあまり反響はなかったかもしれませんが、TikTokのショート動画なら“一日一語”形式で投稿できる。TikTokならやりたいこととの相性もよいと思いました」

アナウンサーとしての経験をフル活用できて、TikTokとの親和性も高い。上田さんは2つの強みを見抜いた上で、日本語教室を“開校”していました。

ですが、上田さんが投稿を始めてから約1年。ネタ切れを起こさずに動画を出し続けるのは、かなり大変なのでは?

「確かに大変ですが、ネタのストック自体はたくさんあるんですよ。言葉は無限に存在するし、今後は敬語表現に関する動画も作りたい。日本語に関する動画は180本くらい投稿していますが、まだまだ投稿できると思います」

日本語を題材にすることで、ネタ切れのリスクも抑えられていたのです。

だとしても、それほどの数のアイデアが、湯水のごとく湧き上がってくるものなのでしょうか。

「ネタの参考にしているもののひとつは、新人研修時代のノートです。先輩アナウンサーに正しい日本語をみっちりと教わりましたからね(笑)。また、ただ原稿を読むのではなく、『この日本語は適切じゃないので直しましょう』『ここはこの表現に変更したほうが良さそうです』などとスタッフに提案するのもアナウンサーの仕事です。 その経験も役立っていると思います」

アナウンサーの“舞台裏”での活動も、今に活きているんですね。

それに加えて、日々の仕事や生活のなかでも、アイデアの引き出しは増えていくそうです。

「タレントになり、フリートークをする機会が増えました。特に生放送のラジオ番組を担当するなかで、 咄嗟に使おうとした言葉に対して『この使い方であっているかな? 』と不安に駆られる場面も出てきて。気になったことはその都度メモして、すぐに辞書を引いています」

「なかでも注意しているのが、当たり前に使っている言葉。日頃から口にしている言葉って、辞書で調べたことのないものが多いじゃないですか。そういう言葉ほど、辞書を引くようにしています」

そして、気になった知識は、独自のネタ帳へと書き込まれTikTokに投稿する台本作成に入るのです。

伸びる動画の共通点は、「議論が生まれること」

こうして得た日本語の豆知識を、時には掛け合い風に、時にはクイズ形式で、動画にしている上田さん。

特に反響が大きかった動画を聞いてみると……。

「動画投稿を始めた当初、『この言葉の使い方は間違いです』ということをはっきりと伝えたときには、ハレーションが起きましたね。『間違っていると悪いのか!』『この使い方で定着しているからいいじゃないか!』というコメントが殺到して、最初は驚きました」

「間違っている言葉を使っていたとしても、日常生活で指摘を受ける機会はなかなかありません。本当に受け取ってほしい内容を受け取ってもらえなくなってしまっては本末転倒なので、明らかな間違いでない限りは「正しい」「間違い」ということを強く発信しないようにしています。」

言葉に対する考え方は人それぞれ。試行錯誤の結果、最近の動画では、どんなスタンスの人でも楽しめるような伝え方に変わっています。

「言葉はその人の個性であり、人生を表しているもの。『間違っている言葉を使っている相手は信用できない』という人もいれば、『伝われば良くない?』という人もいて、私自身はどちらの意見も正しいと思っています」

そう語る上田さん。「ただし…」と続けます。

「言葉は受け取る側がどう感じるかも重要で、その人を評価するひとつの基準になるのは確かですよね。間違った言葉を使ったら恥ずかしい場面もあるし、言葉遣いが洗練されていると一目置かれる場面もある。私の動画は周りと差をつけるための、ちょっとおトクな情報として捉えていただけたらと思います」

 このように議論の生まれる動画は、再生数やコメントも増えやすい傾向にあるようです。

 一方で、まったく異なる伸び方をしているのが、漢字の読み方や使い方を出題するクイズ動画。

@marieueda929

#上田まりえの日本語教室 👩‍🏫】「計 or 測 or 量 or 図 or 謀 or 諮」どの漢字を使うか、アナタはわかりますか❓レベル10🌟 #TikTok教室 #日本語 #上田まりえ #知らドリ #祥伝社 #漢字 #問題 #クイズ #計る #測る #量る #図る #謀る #諮る #はかる

♬ Go Go Go Who's Next? - Hip Hop Harry

「人気の理由はおそらく、参加型であることと、ちょっとした隙間時間でも視聴できること。中高生の皆さんからは『テスト前なので助かります』という声もいただきますね。現代はスマホ社会で、漢字の使い方を知らないと変換で困ることも多いので、その点でも役立っているのかもしれません」

ハッシュタグを活用して“市場調査”

前述のエピソードからもわかる通り、上田さんの動画は視聴者のリアクションを見ながら、ブラッシュアップを重ねている印象です。

動画制作にあたって、工夫しているポイントなどはありますか?

「最初は曲選びに手間取っていましたが、現在はできる限りトレンドの曲から選択するのが”正解”と考えるようになりました」

やはりTikTokを攻略する上で、トレンドは無視できない要素のようです。

さらに上田さんは、動画の投稿時間も18時で統一していると言います。

「やはり教育系コンテンツは、仕事終わりのサラリーマンの方に視聴されることが多いので、夕方に投稿しています 」

また、動画のネタを決める際には、驚きのテクニックも活用していました。

「誤解されている日本語について紹介するときは、ハッシュタグを活用しています。具体的には、正しい言葉と間違っている言葉を、それぞれハッシュタグで検索するんです。そして、どちらの言葉を使っている動画が多いか、再生数が回っているかを確認します。こうして主流となっている言葉を把握した上で、動画の切り口やタイトル、内容などを考えています」

ハッシュタグを駆使して事前に市場調査をしているとは…! 確かに、世の中の認識や興味関心を測りたいなら、とても有効な方法です。

ヒットを支えているのは、ディテールにこだわった動画づくりでした。

TikTokがきっかけで書籍を出版。アナウンサーとして前例のないキャリア形成

現在、上田さんはアナウンサーを経てタレントの仕事にとどまらず、“日本語研究家”とも言うべき活動を行い、業界では前例のないキャリアを形成しています。

客観的な情報を伝えるアナウンサーから、主体的な情報を伝える表現者へ。

アナウンサーとして磨いた「伝える」というスキルを活かしつつ、上田さんは新たな方向に舵を切っています。

その結果、日本語の本来の意味や使い方などを解説した著書『知らなきゃ恥ずかしい!? 日本語ドリル(祥伝社黄金文庫)』の出版も決定。

TikTokでの活動をきっかけに生まれた書籍だそうですが、どのような経緯だったのでしょうか。

「今年の3月まで文化放送で『なな→きゅう』というラジオ番組を担当していました。放送でTikTokを始めたことを話したところ、たまたまリスナーのなかに祥伝社の編集者の方がいらっしゃって。 その方が動画をご覧になって、すぐに『ぜひ本にしましょう』と連絡をくださったんです。いちど会ってお話をしたら、もう出版が決まったので驚きましたね(笑)」

動画投稿が紡いだ、想定外の縁。
まさに今の時代を物語るようなエピソードです。

「もし機会をいただけるなら、雑誌やウェブ媒体などでコラムの連載を持てたらいいなと考えていたんです。まさかそれを飛び越えて、1冊の本になるとは…。本を出すのは夢だったので、それが叶って嬉しいです」

また、上田さんは現在34歳。デジタルネイティブよりは上の過渡期の世代で、実際にSNSから距離を置いている同世代のタレントも多いです。

彼らにTikTokを使うメリットを伝えるとしたら、どのような言葉をかけますか?

「私はTikTokを通じて、たくさんの出会いに恵まれました。私のフォロワーのほとんどは、TikTokで初めて私を知ってくださった方なんです。結果として、ほかのSNSを見てもらうきっかけになったり、本の出版などの新しい仕事につながったりしています。また、ほかのSNSと比べてTikTokは、コメントなどのリアクションが多いプラットフォームだと思います」

「本来ならお会いする機会のなかった方の意見が、ダイレクトに届くんです。これは自分の活動と向き合う上で、大きなメリットになっています」

新しいファンを獲得でき、一人ひとりの声に耳を傾けることもできる。このリーチ力と双方向性の高さは、確かにTikTokの強みかもしれません。

最後に上田さんは、これから思い描いているビジョンについても教えてくれました。

「日本語を研究できる大学院に進みたいという気持ちがあって 。そういう願望は頭の片隅に置いています。でも、やはりタレントとして常に思うのは、打席に立たないと勝負もできないということ。正しい日本語を身につけるだけでなく、人前でそれを話す機会も確保しないといけません。TikTokはもちろんのこと、テレビやラジオ、ライター業など、これからも表現できる場所を作り続けていくこと。まずはそれが一番ですね」

クリエイタープロフィール

上田まりえ(@marieueda929

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1986年鳥取県境港市生まれ。2009年 日本テレビにアナウンサーとして入社。2016年1月末に退社し、タレントに転身。現在は、タレント、ラジオパーソナリティ、ナレーター、MC、スポーツキャスター、ライターなど幅広く活動中。

禁無断転載

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