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〜不定期連載・取材後記〜「2022November取材後記:オオタニ・ヒテカズ」

〜不定期連載・取材後記〜「2022November取材後記:オオタニ・ヒテカズ」

11月5日に開催されたJリーグ第34節湘南ベルマーレ戦ー。

1ー2の状況で迎えた74分。

MF椎橋慧也選手に代わって投入されたのは我らがキャプテンMF大谷秀和選手。この日が20年に渡る現役生活最後の試合でした。

古賀太陽選手からキャプテンマークを巻かれた大谷選手。現役最後のプレーは追加タイムを合わせて約20分のプレーでした。

74分に椎橋選手に代わりピッチへ

いきなり見せてくれた「ターン」は相変わらず芸術的でしたし、チームにスイッチが入るような所作は印象的でした。また、日本人選手もブラジル人選手も少しでも良い結果を残そうと感情むき出しでボールを追う姿に、このクラブにおける大谷選手の存在の大きさを感じました。

試合後の大谷選手はまずこう話しました。

「現役ラストの試合を、ここで本当に育ったわけなので、日立台でプレーすることで終えられたのは本当に幸せでした」

私たちの誇りである「One Club Man」。

そのラストダンス。

約20分、卓越したプレーを披露した

柏レイソル一筋、現役最後の試合を、現役最後のホイッスルを、レイソルのホームスタジアムである日立台/三協フロンテア柏スタジアムでプレーして、それを聞けたことも特別だったことでしょう。

付け加えれば、当日の素晴らし過ぎた天候も、大谷選手が投入されたタイミングでの柔らかい秋の日差しもまた美しかった。

会見の中で、「正直な気持ちで言えば、皆さんの歓声と応援を聞きたかったなというのが正直な気持ち」と話していた大谷選手。

「大谷!大谷!大谷オレらと共に!」ー。

そのサポーターの気持ちは試合後のセレモニー中に広がった、大谷選手のゴール裏弾幕の表記を象った「H.Otani 7」のコレオに込められていたように思います。

また、会見の中ではこんな一言もありました。

「レイソルを辞めようと思ったことはないですね。僕はこのチームが大好きで、柏レイソルのユニフォームのために戦ってきました」

そう長くはない選手キャリアの中、活躍の方法や選択肢が多方面へ広がって久しいJリーグにあって、たとえこの思いを持っていても、なかなかそうはいかない部分があるのは事実。もちろん、ご自身の実力やクラブからの信頼があってのことですが、キャリア年表のグラフ遍歴がこれだけシンプルな選手はたぶんもう現れないかもしれません。

セレモニーで見せた清々しい表情

そして、未来についての言及する際の返答がとても大谷選手らしかった。

「100パーセントで監督を目指したいとか、そこまでの思いに至っているわけではないですが、『指導者は面白いな』というのはライセンス講習を受けている中でも感じています」

例えば、「いつか監督として」とか「夢の続きを」という旨のコメントを残す選手もいるものですが、お話を聞きながら、「タニくんらしいな」と感じでいました。

試合後の引退記者会見では私も実際に挙手をして大谷キャプテンに質問をしていたのですが、そのやりとりを文字化していくと、文脈的に質問の順番が逆だったかもしれないなという感触があるのですが、貴重なお話をしていただけたので、ここに掲載いたします。

大谷!大谷!ゴール裏のコレオと共に!

(2022年11月5日。三協フロンテア柏スタジアム会見場にて収録・再編集)
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ーー大谷選手、おつかれさまでした。長年、大谷選手が巻いていたキャプテンマークを託すなら…という部分に興味があります。見ていれば分かるでしょう?って話かもしれませんが、そのあたりについてをお聞かせください。

大谷秀和:そうですね、今年に限らず、昨年から古賀太陽がゲームの中でキャプテンを務めていて、キャプテンマークを巻く機会も多いですけど。今日のセレモニーでの挨拶を聴いていてもね、『“あの太陽”が立派に成長したな』って親心じゃないですけど(笑)、本当にたくましく見えましたしね。やっぱり、柏レイソルアカデミー出身選手がトップチームの責任ある立場にいることで、現在アカデミーに所属している選手たちの目標だったり、励みにもなると思います。この件については自分が決められることではありませんけど、太陽は監督やチームの信頼の下で自分ができることを100%でやってくれていますしね。そういう後輩がチームにいてくれことを自分はうれしく思っています。もう少しね、年齢的に20代後半から30代の選手がいたらとは思いますけどね(笑)、色んなタイミングなんかもあることなので。太陽はしっかりと立場を理解して役割をこなしてくれていますし、このまま気負うことなくがんばって欲しいですし、キャプテンを続けていって思いますね。

ーー選手というのはあの腕章を巻くとどうなってしまうものなんですか?また、レイソルの監督時代の石﨑信弘さんからキャプテンに任命され、長く務めてきたこの「キャプテン」という仕事についての思いを最後に聞かせください。

大谷秀和:あれを巻くと腕が重くなるんですよ(笑)。そのくらい責任を感じるんです。あの時、石さんに「そろそろキャプテンやれや」と言われたことはいまだに忘れられないですし、よく覚えています。自分はあの時の石さんの判断については感謝をしていまして、「立場が人を育てる」じゃないですけども、自分に与えられた「キャプテン」という立場から、「チーム」を考えるようになりましたし、「どうしたら、自分が変わることができるのか?」なども考えるようになった。色んなことを考えるという、それらの「気づき」を与えてくれた石さんには感謝してもしきれないものがあります。もちろん、キャプテンマークは選手誰もが巻けるものではないですが、それくらいの資質を持った選手がチームにたくさんいれば、いればいるほどそのチームは強くなると思いますし、自分や太陽が巻くことが多いですが、レイソルには他にもキャプテンマークを巻ける資質を持った選手が数多くいますので、「誰が」というよりも、チームの全員にチームを背負うというか、責任を背負っているんだという思いを…気負わなくていいので、そういった思いを持って戦っていって欲しいと思っています。

レフェリーから受け取ったマッチボールを片手に


大谷選手のインタビューは以上です。

大谷選手は同じくこの日現役引退を発表したDF染谷悠太選手と共に、引き続きレイソルに籍を置きながら、Jリーグクラブを指揮するために必要なS級ライセンス取得へ向けた活動をしていくことを表明していました。繰り返しになりますが、「S級ライセンス取得を目指すが、その後に監督になるかはまだ決めていません。監督としての向き不向きもあるので」という旨の話もしていました。このあたりの正直さがまたなんとも大谷選手らしかったですし、なかなか言えないことだなと。この場に立ち会えて幸せでした。

この20年間、柏レイソルにとっての当たり前が当たり前ではなくなる、いわば未知の領域に突入する訳ですが、レイソルのそんな節目に立ち会えることもまた幸せです。レイソルの黄色いキット姿しか知らない私たちですが、コーチ陣が着る黒いジャージも似合いそうですね!

11月6日には解き放たれた笑顔で今季を終了



大谷秀和選手の次のチャプターでの更なる飛躍を願っております!

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