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美味しいって何? コーヒーの値段と点数。

おすすめコーヒー ブラジルサントスNo.1  100g 830円!!

こんなコーヒー豆を売っている店があったら、マスターに詳しく話を聞いてみましょう。

有名な話ですがブラジル サントスの最高等級はNo.2です。
そしてサントスNo.2として販売される、農園指定なしの一般豆はもっと安いはずです。

100g 300円前後でしょうか。

等級や産地を誤表示したまま販売することは論外として、品質の低い原料を使った商品を高い値段で販売することは悪でしょうか。

雰囲気のあるお店で、マスターにコーヒーの蘊蓄を語られてコーヒーを試飲、お客様が満足して購入したならば悪でないと思います。

それはコーヒー屋がコーヒー以外の価値も提供するサービス業の側面が強いからです。マスターの蘊蓄や味に満足しているならばWIN WINの商売になっているとおもいます。

でも今回は少し視点を変えて、
「その消費がコーヒー生産者にとって為になる消費なのか」という視点で見ていきます。

「コーヒー生産者のためにもなる消費」

今回は「美味しい」コーヒーを選ぶことがコーヒー生産者の暮らしを豊かにできるという話をします。

記事の冒頭で書きましたが、コーヒー豆屋や、喫茶店でコーヒーを飲む際の値段は、コーヒーの価値だけでなく、サービスや雰囲気も含めて値段が決まっています。

持続可能なビジネスにおいて安い原料を使った商品に対し、高い代金を払っていただけているということは、支払ったお金の多くがサービスやインテリア等、顧客満足実現のために使われているということでしょう。これはコーヒーを楽しむ大きな醍醐味の一つなのでビジネスモデルとして意味のあるものだと思います。

でも私はコーヒーに支払う価格がコーヒーの品質によって決まることによって、生産者のモチベーションの向上につながるのではないかと考えています。


品質の低い豆よりも品質の高い豆の方が需要が高ければ、品質の高いコーヒーの価格が一層高まります

そうすると努力をして品質の高いコーヒーを生産した農家が報われることにつながりますし、良いコーヒーを生産することへのモチベーションにつながります。

テロワールの影響はありますが近年の研究のおかげで、農園の管理、品種、加工、選別における努力がコーヒーの良質さへとつながる際の因果が少しづつ解明されています。

われわれが美味しいコーヒーを選べるようになれば、コーヒー生産者の努力に対して公正な対価を渡せるマーケットが一層厚くなっていきます

*ダイレクトトレード、Cマーケットに関してはホンジュラスの記事で触れています。

https://note.com/tik190/n/ne16c730c74d6

「コーヒーの美味しさ」

でも、美味しいコーヒーを選ぶことが農家のためになる!とはいえ、そもそも品質が高いコーヒーって何でしょうか。

どうやって見分ければいいのでしょうか。

悩んだ時はカッピングのスコアを参考にしてみると一つの指標になると思います。カッピングには様々な方法がありますが、メジャーなSCAA方式ではコーヒーを100点満点で評価します。
スコアが高いほど品質が高いコーヒー豆であることを意味しており、特に80点を超えたコーヒーは適切な処理で栽培、加工されています。

ただし、だれでも自由に点数を付けられるわけではなく、国際的なスコア評価の認定機関があります。この認定機関はグレードを付けるためのスキルを持ったグレーダーを育成、認定しています。この認定を受けた評価者をQグレーダーと呼びます。

スコアが公正な評価者によって評価されていることを確認できる豆屋を見つけたら、是非スコアが高いコーヒーと低いコーヒーを同じ焙煎度、抽出方法で飲み比べてみてください。できれば浅焼きで。

何種類かのみ比べていくうちに「スコア」と「美味しさ」がリンクしてくると思います。

80点以上のコーヒーはクリーンな味わいと安定性、豆の特徴をしっかりと感じることができます。

「コーヒーのスコアリング」

前述しましたがコーヒー業界では品質を評価する基準が設定され共有されています。

農業製品としての均一性を確認するための欠点豆混入率チェックや、実際にコーヒーを淹れたときの風味が優れているかどうかで評価します。

スコアが高いコーヒーを飲むと確かにコーヒーの概念を覆してしまうような風味があり、大げさじゃなく人生を変えてしまうような美味しさがあります。

そして素晴らしいのが、コーヒーの評価結果とコーヒー生産工程の間にある因果関係が解明されてきていること。
生産者は意図してスコアを高めることができるようになっています。

そのため、カッピングの評価が高いコーヒーの一粒一粒は、品質を高めるための努力を怠らなかったコーヒー農家の成果だといえます。

その成果の代表格が、これまでコーヒーの産地に関していろいろな記事で説明する中でCOE(CUP OF EXCELLENCE)です。

SCAA方式のカッピングで高得点を取りCOEに、入賞するコーヒーのTop of Topコーヒーです。
イメージとしてはコーヒー業界のF1のような品評会。

特に優勝したコーヒーはとてつもない高額で取引されます。

でも、開催は国ごとなので、そもそもその機会がなかったり、あったとしても力のない小農園はエントリーすることもできませんし、COEで入賞するために必要な設備投資も難しくなってきます。


「Qグレードコーヒー」

COE自体はコーヒーの技術開発のために重要な取り組みです。しかし、より多くの生産者のやりがいを持った豊かな暮らしを実現するためには、少し規模化しづらい側面があります。

美味しいコーヒーの生産を促し、生産者の生活を豊かにする、その役割を担っているのがCQI(Coffee Quality Institute)とQグレーダーです。

CQI(Coffee Quality Institute)とは世界的な機関で、以下の機能を通してコーヒーの品質を高めつつ、農家と消費者に貢献しています。
以下のような機能を果たしています。

1.Qグレーダー(品質評価者)を育成する
2.Qグレーダーと農家をつなげることで品質に関する評価をする
3.評価結果をもとに農家に改善に向けたアドバイスをする

また評価され一定の水準以上と認定されたコーヒーはQグレードコーヒーとして価値を高め流通します。

「評価の妥当性」

ここで要になってくるのがQグレーダーの評価に妥当性があるかということ。

現地で悪徳コーヒー豆バイヤーがスコアを付けたら、調達時に低い点数をつけて農家から安くコーヒーを買い叩こうとするでしょう。

また、焙煎豆の販売店がスコアを付けたら、より品質の高い豆であることをアピールするために、98点、99点などのスーパースコアを連発してしまいそうです。

採点者は味覚に優れていることもさることながら、世界中で同一の基準をもって評価することが求められます。

そのため、Qグレーダーとして認定されるためには官能評価試験、品質評価方法の確認試験、生豆のグレーディングなどを徹底的にトレーニングされます。

トレーニング後は世界共通の20科目の試験にすべてパスすることが必須です

これにより世界のどこの国に住んでいるQグレーダーが評価しても、同じ豆に対して同じ評価を出せるようになっています。

そんな訳で高い点数がついているコーヒーも、誰が評価したかということを確認することが大切です。

「まとめ」

今回は美味しいコーヒーを選び、コーヒーの生産者の生活に貢献するということについて、記事にしてきました。

味覚については人それぞれなので、絶対的な「美味しさ」の判断基準を設定することは難しいです。

でも今後、コーヒー豆を購入するときにQ認定されているのかな?カッピングスコアがどのくらいで誰が点数を付けたのか?妥当な値段になっているのかな?

という視点を持つコーヒーラバーが増えれば、品質向上に努めている農家の方の暮らしが意義深く、豊かなものになっていくと思います。

現地の物価、人件費も違いますので点数至上主義になってしまうのは本末転倒ですし、
KONAコーヒーやブルーマウンテンのように点数以外の価値があるものもありますが、そういったコーヒーが悪だといっているわけではありませんのでご容赦ください。

あくまで良質なコーヒーにお金を出す、という文化が浸透すればと思って書いています。

今日も美味しいコーヒーとともに豊かな一日を。

*ちなみに日本にも300人ほど登録グレーダーがいるようです。なかなかマニアックな話ですがこの記事に対するリアクションがあればまた取得方法についても文章にしてみたいと思います。

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