見出し画像

1時間ごとのアラーム


新しくGSHOCKの時計を買った。

これまでも同じメーカーのブラックを使っていて、中学生の時に兄が買ってくれた。
たまに着け忘れて出かけるとノーパンで外を出歩いているような感覚になる程、ほぼ365日、四六時中身につけていたと思う。

海も山にも各シーズン1回ぐらいしか行かないし、世界の果てや人間の住めない極限地帯なんてカスリもせずこれまで生きてきて、
僕のGSHOCKはきっと、周りの活躍を羨みながらその才能を存分に活かせず、酔っ払いの腕に10年以上身に付けられ歯痒い思いをしただろう。

新しく買った時計にも同程度の性能が付いていると思うのだが、やはり上手く使いこなせてない感は否めない。

ただいつしか、今の時計は1時間を経過するごとにアラームが鳴るようになった。
いつ、どのタイミンングで自分がそんな設定をしたのか全く分からない。
今も16時を知らせるアラームが鳴っている。

誰かと一緒にいるような状況だと、初めはその中の誰かが「今、何か鳴った?」と気にする程度で、勿論自分もそちら側でシラを切るが、
規則的になる不可解な音が自分から発生する事が次第に明らかになると、解除の仕方も分からず

すいません、、、。僕です。と、何だがオナラを自白するような瞬間がたまにある。

そういう瞬間を除けば、最初は耳障りだったこのアラームも今ではすっかり慣れてしまい、むしろこの音で時間の経過を実感するので、何だが「時間を無駄に過ごすな!!!」と言われているようで、物事に取り掛かるスピードは素早くなった気がしないでもない。

割と形から入るタイプなので、他にもいろいろとオーバースペックなものに囲まれて過ごしている気がする。
高性能のパソコンや高画質・手ブレ補正のついたカメラ、オールマホガニーのアコースティックギター。
上京して、いろいろなカルチャーに触れて、憧れて、手にしたものは沢山あるだろう。

流行りの音楽は聴きつつもオルタナティブなジャンルにも興味がある、どんな分野でもある程度の知識で会話を広げられたり、それでいて謙虚さと少しのユーモアを持ち合わせて、くだらない話をしたり、どんな人とでも程よい距離感を保てる。
良いお店で良いワイン飲めば、生産者の思いを知った上で味わい、ブドウの深みや熟成感を言い表せるような大人にだってなりたい。

このような身も蓋も無い煩悩は絶えないし、輝かしい未来を想像して今を振り返ると、その距離に愕然したりする。

所謂、カッコいい大人になりたいのか? でもカッコいい大人ってなんだ、自分がカッコいいと思った大人が、他人から見てしょうもない人間だったら物凄く恥ずかしい。ずっとステイホームして身を隠していたい。
ただ、自分と世間のカッコイイが異なっていて、理想と大きくズレた大人になるのも何だか嫌だ。
アイデンティティが揺らぎまくっている自分が情けない、、、。

こんなに落ち込んでいる瞬間だって、
アラームは無慈悲に時間を告げる。

洗濯するのを忘れていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?