マガジンのカバー画像

なんでもない記念日2

82
365日分の「なんでもない記念日」を祝して。130文字以内の小話を、1日に1つ。0214〜 #記念日BL
運営しているクリエイター

2015年4月の記事一覧

4月28日 缶ジュース発売記念日

浮気の理由は「あんたが構ってくれないから」としか答えられない。

温もりの消失に耐えきれないのだ。
昨夜は缶コーヒーを奢られた…130円が、俺の値段だ。

けれどあなたはそんな俺をまた抱きしめてくれるから、胸が苦しくて、不自由な呼吸が嬉しくて、堪らなくなってしまうのだ。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月27日 悪妻の日

なんで浮気したんだと尋ねれば、返ってきた応えは「だってあんたが構ってくれないから」だった。

おおよそ恋人にするには不似合いな男。

「そうか…悪かったな」

けれどそう言って謝れば、赤い顔で涙目で唇を噛み締めて震える。

彼を手放すことなど、もう考えられもしないのだ。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月26日 よい風呂の日

風呂好き・温泉好きが高じてくっついた俺らだが、最近はよく意見が割れる。

「何で浴槽のサイズでばかり風呂をか語るんだよ! それやめろ!」

そうは言うけど、でもな。

狭いと、中で抱き合えないじゃないか。

そう伝えるのは気恥ずかしくて、このところ目下の、幸せな悩みだ。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月25日 DNAの日

声を聞くと嬉しくなる。
目が合うだけで鼓動が早くなる。
触れれば悦びが込み上げ、触れられれば腹の奥が疼く。

きっと細胞の一つ一つ、DNAの構成レベルで、僕はそんな風に作られているのだ。

「DNAにそんな機能などない」

なんて言いながら、頬を赤くしている君に今日もキスを。
#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月24日 ダービーの日

難しい恋をしている。

「好みのタイプ? 面長で、毛は茶色で目のクリッとした…あぁでも一番は、走っているときの力強さとか…」

「馬じゃなくて」

「馬じゃなくて? え? じゃあ何?」

思考の3分の2をダービーに費やす彼の視界に入るには、どんな人参になればいいのだろう。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月23日 地ビールの日

ただの酒好き。
ただの酔っ払いだった俺。

「ここの地ビールは、地産品との飲み合わせが考慮されていて素晴らしいね!」

地ビールおたくのあなたに惚れて、悪趣味な酒の強さはツールとなり、酔い潰れる醜態いは晒せなくなった。

あなたの前では、いつも酩酊状態だというのにね。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月22日 よい夫婦の日

「お前ら夫婦みたいだな」
「もう結婚しちまえよ」

言われるたび、彼は笑いながら「そうだな」と答えて、俺は笑いながら「ふざけんな誰がこいつなんかと!」と答えた。

彼の言葉が、本心からのものならどれだけよかったか。

俺の言葉が、本心からのものならどれだけよかったか。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月21日 民放の日

「あんたの、本当の気持ちが聞きたい」

いくら思っても、彼がそうしてくれることはない。
彼は、俺のものではないから。

一生かかっても稼ぎきれないだろう、眩むような数の札束で、彼の身は綺麗に飾られている。
彼は、札束の主たちの物だ。

望むことすら許されない高みの人。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月20日 郵政記念日

久しぶり。いかがお過ごしですか?

僕は、まだ君が地元に帰ってしまった実感がえられず、不思議な気持ちでいます。

そして。

必ず帰ると言ってくれたのにごめん。
僕もここを去ることにしました。

メールではすぐに届いてしまうので、手紙にします。

今までありがとう。
さようなら。
#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月19日 飼育の日

生き物を飼うのも楽じゃない。

エサ、糞尿、散歩の世話。
時には可愛がってやる必要もある。

「可愛らしいイヌですね」

別の飼い主とすれ違って挨拶。

「ご主人様…」

許可もせず言葉を発したイヌの首輪をグッと引く。
躾もしっかりしなければ。

まったく、飼い主も楽じゃない。
#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月18日 よい歯の日

豪快に食べる姿が好き、なのかと思っていたけれど。

舐めるように酒を飲む、その口元から覗く歯を見て思う。

(俺、その歯が好きなんだな…)

身体のわりに小さい、つるんと白い前歯。
綺麗な歯並び。

「俺のオレにその歯を立てて舐めしゃぶって欲しい」

口に出せない想いが募る。
#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月17日 飯田・下伊那の日、五平餅記念日

昔から、人の手の感じられる料理が苦手だった。

おにぎりなんかはその最たるもので、まさに論外。

だから、驚いたのだ。
彼の手でベタベタと形成された五平餅を、食べたいと思った時。

「…」

おかげですぐに気づくことができた。

食べてしまいたい程、僕は彼に恋をしていたのだ。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月16日 ボーイズビーアンビシャスデー

大志、と言うには大袈裟な、けれど僕には夢がある。

好きな人と、手をつないで一緒に歩くこと。
ネズミの国みたいなデートスポットを、いつか、君と。

そう伝えた夜のことだ。

「あー、じゃあ、行く…?」

あんな場所、少しも好きじゃないくせに!

何だかもう、夢の叶った気分だ。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説

4月15日 東京ディズニーランド開園記念日

夢と魔法の国に魅力など感じてなかったし、冒険とイマジネーションの海にも興味はなかった。

「あ、のっ…ま、また行こうな?!」

だと言うのに今、君の前で僕はこんなことを口走っているし、君が笑ってくれるから、ねずみの国だって愛せる気がする。

そんな気がするんだ。

#記念日BL #小説 #短編小説 #超短編小説