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スパイシーシンデレラ(AI実験作品)

『これが...スパイスの森...!』
父親はこの場所の事を言っていたのだ。
だが、もう父はこの世にいない。
ここに来ることが出来るのは
彼と
私だけなのだ。

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まだ鳥の鳴き声も聞こえぬ様な、薄暗い夜明けの時間。
スパイスの香りに包まれたキッチンで、一生懸命にパンを焼いている女がいる。
彼女の名前は、シンディ。
彼女は、有名なパン職人の父親の跡を継いで、ベーカリー・シンデレラを営んでいた。


しかし、父はある日突然、『スパイスの森を探しに行く』と言って、そのまま倒れ亡くなってしまった。
そして、国の不況、材料費の値上げ、父の不審死などの不幸が重なり、経営は傾き、店は衰退の一途をたどっていた。

毎日の売り上げは芳しく無く、必死に生きながらシンディは、父親の夢だった「世界一のパンを作る」ことを諦められなかった。 

だから、毎日、新しいレシピを考え、普段のメニューとは別に日替わりメニューのパンを焼き、店に出し続けていた。

ある日、シンディは、国際パンコンテストの開催がテレビで告知されているのを見た。
優勝者には、世界中の有名なパン屋に自分の優勝レシピが採用され、売り上げをもらえるという、夢のような賞が用意されていた。

これはチャンスだと思った。

自分のパンを世界に広めることができるかもしれない。しかし、参加するには、高額な参加費が必要で、店の売り上げだけでは、生活費もままならず、とても払えなかった。
そこで、彼女は、父親が残してくれた、スパイス・コレクションを売る事にしたのだった。
涙をこらえながら、スパイスを一つずつ手放していった。
この世にはもう存在しない植物や、技法で作られたスパイスは、とても高い値段で売れ、話題になった。
やっとのことで、参加費を集めることができたシンディだったが、
どうしても売りたく無かった
父親が残してくれたラストスパイス・シンデレラに数千万の価値がついてしまったのだった。
(このスパイスは父の最後のスパイス、どうしても売りたくないけど、これを売ったお金さえあれば、私はお店を閉めてコンテストのパン作りに集中できる。パパ、ごめんなさい)

シンディはシンデレラスパイスを好事家に売ってしまったのだった。

月日が過ぎ、コンテストの日はやってきた。
シンディは、この数ヶ月、ずっと自身の心とパンと向き合ってきた。
自信満々
とは言えないが、彼女は、自分の得意なパンを作ることにした。
それはスパイシーサンドイッチだった。
スパイスの効いたパン生地に、自家製のチーズや鶏ハム、オーガニック野菜などを挟んだ、素朴ながらも食べた人の心をスパイシーにさせるパンだった。
シンディは、スパイスのコレクションの中から、最後に売ってしまったシンデレラスパイスから、少量を確保しており、それを使ったのだった。
父親が大切にしていた、世界に一つしかない、
レアなスパイスだった。そのスパイスは、シンディにとって、父親の想い出の象徴だった。

(売ってしまったが。)

シンディは、スパイシーサンドイッチを焼き上げ、手彫りの木皿にのせる。
添えているのは黒胡椒と白胡椒を独自の配合で作った胡椒スパイスをふんだんに使ったマッシュポテト。それと、パプリカのピクルス。
シンデレラスパイス・ホットサンドウィッチ
マッシュポテトとピクルスを添えて

審査員の前にお皿を置いていく。
緊張で口の中がカラカラに乾いており、
料理名をかみかみで説明するシンディ。

料理名がうまく聞き取れない審査員たちは訝しげだったが、自分たちの前に置かれたサンドイッチから漂う香りに強い興味を示した。

ゴホン、名前はともかく召しあがろうじゃないか

彼らは、一口ずつパンを食べる。
シンディは、ドキドキしながら、彼らの反応を見ていた。すると、審査員の一人が、突然、顔を赤くして、咳き込んだ。その人は、スパイシーパンを食べた直後だった。

何が起こったのか分からなかった。
彼女は、自分のパンに何か問題があったのかと思った。
審査員たちはみな順番に咳き込み、顔を真っ赤にして、むせながら水を飲んでいた。

長い沈黙の後、
審査員たちは突然笑顔になった。
そして、ある1人がシンディに向かって、こう言った。

「これは、素晴らしいパンだ。スパイスの風味が、とても豊かで、刺激的だ。こんなに美味しいとは、もしかしてパンの生地にシンデレラスパイスを使ったのかな?もうあれは世界に存在しないと思っていたが....君は、どこで手に入れたのだ?」

シンディは、驚いて、その人を見た。その人は、コンテストの主催者であり、世界的に有名なパン職人だった。彼の名前は、アレックス・スパイサー。人呼んでスパイスの魔術師と呼ばれていた。シンディは、彼のことを尊敬していた。
彼は、シンディの父親の弟子でもあった。シンディは、彼に答えた。

「アレックスお兄ちゃん、お久しぶりです。このスパイスは、私の父親が残してくれたものです。私が小さい頃、あなたは父の工房でパンをよく焼き、試作品を私に食べさせてくれていました。私は父と、あなたと、一緒にパンを作るのが夢だったのです。父は、スパイスの森を探すと言い残し、亡くなりましたが」

アレックスは、シンディの言葉に驚いた。
『君はシンディ、あのベーカーさんの一人娘のシンディか!大きくなったね!ベーカーさんはお亡くなりになられたのか...僕が独立する時に些細なことで口論になり、それ以来連絡をとっていなかったんだ。シンディ許してくれ、僕もベーカーさんとは無くなる前に仲直りがしたかった。そして、スパイスの森だって!?』

アレックスは、シンディがまだ生まれる前、
シンディの父親と一緒に、世界中のスパイスを探し回ったことがあったと言った。

「君の父親は、私にとっても父であり、師匠だった。彼は、世界一のパン職人だった。君の作ったスパイシーサンドイッチは彼のパンに匹敵するほど、素晴らしい。紛れもなく君は、このコンテストの優勝者だ。おめでとう」

ワァっと会場が沸き立った。
シンディとアレックスの関係に感動で涙する観客もいた。

シンディは、泣いた。
ロケットペンダントに入れていた、
父の写真を見て、溢れんばかりの涙を流した。

表彰台で彼女は泣きながら
『私の今があるのは、私にパン作りを残してくれた今は亡き父と、父の最後の弟子で私の兄の様な存在だったアレックスに感謝いたします。そして、私は、私の作るパンたちにやっと心から自信をもつことが出来ます。行く行くは、父のもっていたスパイスを超える様なスパイスを発見し、全てのパン職人の手に行き渡る様にしたいと思っています。』

ワァァっと再度歓声が沸いた。
彼女は、魔法の解けないスパイシーシンデレラになり、幸せになりました。


ところが、その時、突然会場に騒ぎが起こった。
パァーンパンッ

何人かの男たちが、銃を持って、打ちながら乱入してきた。
黒いマスクを被ったら男たちの狙いはアレックスとシンディだった。
男たちはアレックスのもっているスパイスの秘密を探っていたが、それはシンディの父親からのものだとわかり、2人に向かって、銃を発砲し威嚇した。シンディは、突然の事態に足がすくみ恐怖に震えたが、アレックスを守ろうとむかう。
同時にアレックスもシンディにだけはなにがあっても幸せになってほしいという気持ちから、一瞬の隙をつき、シンディを銃弾から庇おうとした。

2人が衝突しそうになった瞬間、不思議なことが起こった。シンディが首にかけていた残りのシンデレラスパイスが入った小瓶と、アレックスが首に身につけていたスパイスの小瓶がぶつかりあい、瓶がくだけ、二つのスパイス混ざり合い、
強い光りを放った。

銃を持った男たちは慌てて発砲するが、
その光は、銃弾を跳ね返し、どんどんと広がり、
男たちを吹き飛ばしたのだった。

気がつくと、シンディとアレックスは別の場所にいた。
先ほどの混ざり合い発光したスパイス葉既に光を失い、2人の膝下に落ちていた。
嗅いだことのない刺激的なスパイスの香りに、2人は眼を開けた。

『ここは...?』とシンディ

そこは、森の中だった。

『ここはスパイスの森だ!まさか、またここに来れるなんて、ここに行ける方法を知っているのはシンディの父親、ベーカーさんだけだった!地球のどこにも存在しないと言われるスパイスの桃源郷...僕の持っていたベーカーズスパイスと、シンディのシンデレラスパイスが、ここに来る鍵なだったなんて』
アレックスは興奮している。

『これが...スパイスの森...!』
父親はこの場所の事を言っていたのだ。
だが、もう父はこの世にいない。
ここに来ることが出来るのは
彼と
私だけなのだ。

そこは、ありとあらゆるスパイスが溢れる、不思議な森の世界だった。こんな場所があるなんて、夢にも思わなかった。
アレックスは衝撃の一言を言い放った。

「ここはベーカーさんの故郷なんだ。彼はスパイスの魔法使いの一族の末裔なのだ。僕はベーカーさんに連れられこの世界から、スパイスの作り方を学んだ。ベーカーさんは、この世界を守るために、秘密を僕以外の誰にも明かさなかった。だが、あの男たちは、僕のスパイスの秘密を狙っていた。シンディ、君が私を助けてくれようとして、僕もまた君を守ろうと庇った。僕たちは2人が揃わなかったら、この世界は永遠に閉ざされてしまっていたかもしれない。シンディ、また会えてよかった。嬉しかった。ベーカーさんからもらったスパイスが尽きる前に、君と一緒にこの世界にまた来ることが出来た」

『アレックスお兄ちゃん、私こそまた出会えてよかった。きっとパパがめぐりあわせてくれたのね。ねぇ、ここでスパイスを研究して、一緒にパンを作りたいわ!』

『勿論だとも!僕たちのスパイスはここでまた採取出来るし、2人でパン屋をやろう!パン屋の名前はシンデレラ・ベーカーだ!!』
シンディはとても嬉しかった。しかし、ある疑問が残った。
「あなたはどうして、私を守ろうとしてくれたのでしょうか?」

シンディはアレックスを見つめる。

「それは僕も同じことだよ!なんで僕を守ってくれようとしたんだい?』

アレックスもシンディを見つめ返す。

『咄嗟だったから。兎に角、あなたを守りたかった。それに、父が行けっと背中を押してくれたのかもしれない。父がいなくなり、父との大切な記憶をもっているあなたまでいなくなってしまったら、私は生きていけなかったわ』

『それは僕も同じ気持ちだった。ベーカーさんは言っていた、スパイスは別のスパイスと惹きつけ合うと。、君と僕がスパイスの魔法で、ここに来れたのは偶然じゃなくて、君が、スパイスの心を持っているからだと思う。愛情と敬意を持っている。感謝と尊敬を持っている。情熱と創造力を持っている。そう。君は、スパイスの魂を持っている。そして私の運命の人なんだと感じた」

シンディは、アレックスの言葉に赤面したが、彼の手を強く握った。そうして、アレックスに言った。

「私も、あなたのことが好きです。あなたが私にとっても運命の人です。私、私」

アレックスは、シンディの言葉を遮り、キスをした。

「私と一緒に、このスパイスの森の世界を見て回ろう。ここには、君が想像もつかないほど、美しくて、不思議なスパイスがある。君は、それらのスパイスを使って、世界一のパンを作ることができる。君は、私と一緒に、幸せになることができる」

シンディとアレックスは手を取り合い、
スパイスの森を歩き始めた。
彼と彼女は、スパイスの魔法に魅了された。
ふたりは愛に満ちた。
シンディは

シンデレラのように、幸せになったとさ。




おしまい

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