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3/4 ガザ、イスラエル、米国

私はミリオタでもなんでも無いのだが、ガザ・イスラエル・米国帝国主義に関して、米国特殊作戦軍司令部出身(軍事諜報収集分析)の見地からコメントするグレッグ・ストーカーさんのコンテンツを追っている。

イスラエルの軍事活動がいかに常軌を逸しているか、論理的に説明してくれるので「おかしいと思うのは私だけじゃなかった」と聞いていて安心できるのだ。

彼のポッドキャストには素晴らしいゲストが毎回出るので、英語が分かる人は聞いて欲しいのだが、これが3/4に投稿された回。ゲストは元ウエストポイント砲兵佐官のトラビスさん。

自由にニュースを解説するスタイルなので、話があちこちに飛んでいるのを項目ごとにまとめて見た。

内容がどこまで、どのソースで確認されているのかはっきりさせて話すし、限られたソースでどう読むのかで意見が分かれる時もあり、それを話し合うスタイル。分からない事は分からないと言う。誇張や捏造が感じられ無いので安心できる。


過去10日の出来事

2/25(日)ーーアメリカ空軍現役サイバーエージェント、アロン・ブッシュネル氏(25)が"extreme act of protest"としてイスラエル大使館の前で焼身自殺をする。政府はほぼスルー。予想通り「精神異常」をほのめかす報道が次々と流れる。

2/26(月)ーーネタニエフが「何がなんでもラファに地上侵攻する」と宣言。

ーーバイデン、テレビ番組収録中、アイスクリームを食べながら「来週月曜日には停戦合意になると思う」

2/27(火) ーーミシガン予備選。バイデン政権に反対する民主党支持者による"Uncommitted(未決定)"票がなんと10万票も集まってしまう。

2/9(木)ーーガザ北部、飢えに苦しむガザ市民が食糧支援を求めて集まったところにイスラエル軍が攻撃する「小麦粉虐殺」が発生。

2/10(金)ーーバイデン政権によりガザへ38,000食分の支援を空中投下。国際人道支援団体などから「単なるPR」と強く批判される。

週末ーーベニー・ガンツ(イスラエル前国防相で、ネタニエフの政敵)が政府要人との面会のため米国へ発つ。

2/11(日)ーーカマラ・ハリス「停戦が必要だ。。。。6週間の。」という不誠実なスピーチ

ーーイスラエル、兵力不足により今まで徴兵制免除となっていた超正統派ユダヤ教徒市民も免除を撤回すると発表。テルアビブで大規模プロテスト

ーー12/18にイスラエル軍がハマスの拘束から脱走した自国の人質三人を「間違えて」射殺した際の音声録音がリーク。ネタニエフ政権への国内反発が更に高まる。

ーーイスラエル国防軍の高官が同時に辞職。軍はその事実を否定。


カマラ・ハリスのスピーチ、バイデン政権のレトリック

「、、、そしてガザの人々の大きな苦しみを考慮し即時停戦の必要性をここに訴えます」
(場内歓声と拍手)
(少し間を置いてから)
「、、、最低6週間の。これがオファーとして出ています。それにより(イスラエル人の)人質を取り戻し、支援物資を搬入できます。ハマスは停戦を望んでいると言います。これが今卓上に出ているオファーです。」

まずイスラエル側のオファーを受け入れさせるために、飢餓を武器として使っていること(戦争犯罪行為)を認めてしまっている(支援物資搬入をカードとして出している)ことにハリスは気付いていない。

「イスラエル側からのオファー」として米政府がしきりに宣伝している「6週間停戦」は米国予備選と重なる。その間はジェノサイドをやめてもらうと、民主党に有利になる。ただ、攻撃を一旦やめてしまえば
ーイスラエル国内のネタニエフ批判が爆発する
ー西側の主要報道もガザの中に入りイスラエルの戦犯行為がより詳しく報道される
などが連鎖的に起こり、実質ジェノサイド再開は難しいとの見解もある。

米政府は今まで「ceasefire(停戦)」という言葉を頑なに拒んできた。ハマスとの交渉には「humanitarian pause(人道的停止)」を使うようにイスラエルに促し、人権団体などから「そんなもの意味がない」と散々批判されていた。ここにきていきなりceasefire(停戦)と言ったが、結局は6週間の期限付きなので「人道的停止」と中身は変わっていない。呼び方を変えただけだ。

直前にミシガン州(スイング州)予備選でUncommitted(未決定)票が10万票集まってしまったこともバイデン政権を焦らせる要因となっている。(*このUncommitted票とは勿論トランプにも入れないし、不投票でもない民主党支持者が「それでも今のままではバイデンには入れられない」とわざわざ発言するための票だ。前回の大統領選でバイデンはミシガンを取ったが、票差はたったの1万5千票。このままではバイデンは大事なスイング州であるミシガンを落とす。)

更にいきなりネタニエフの批判を始めて足切り(イスラエルは政権が極右に乗っ取られたのが問題なのであり、ネタニエフだけ排除すれば大丈夫、と言いたい)の準備をするなど、バイデン政権の「レトリック」は変わっている。が、政策は全く変わっていないことは認識するべき。大量のイスラエルへの軍事支援、それを減らしたり紐付けしたりする事は一切行われていない。

そしてこのスピーチは停戦交渉に関して、相手のオファーを「問題外」と譲歩せず突っぱね続けるのはネタニエフであるのだが、交渉決裂の際に「ハマスが意固地に断った」とのプロパガンダの一環。先週のバイデンの根拠の無い「来週中に停戦交渉成立しそうだよ。」発言もそのプロパガンダの一部。

アイスクリームを食べながら停戦の話

少しでも希望のあるニュースにすがりたい一般人の良心を弄ぶ非道。パレスチナ人にとっては彼らの一言一言が正に自分の生死を分けると言うのに。

6週間の停戦と引き換えに人質を全員イスラエルに返す。そして6週間経ってジェノサイドが再開した時に、もう札がなくなるわけで、ハマスがそんなディール受ける訳が無い。

バイデンは数日前にトークショーに出た。パレスチナ人の自決権の実現には興味が無いようだった。とにかく今の情勢不安が無くなって欲しいと思っているだけ。誰も騒がず(国際人権団体は騒いでいたが)ひっそりとイスラエルにアパルトヘイトを続行させていた表向きの「平和」を取り戻したい。

そしてイスラエルと周辺アラブ国(サウジやUAE)との国交正常化を実現したい(中国ーイランーイラク新シルクロードに対抗するサウジーイスラエルの交易回廊の確保)というのがバイデン政権の1番の目標。だからその邪魔をするものはネタニエフだろうと政権転覆幇助で排除するだろう。欧米の帝国主義に友達は要らないのだ。

(周辺アラブ国では経済的に英米西側と同調したい国も、英米に経済的に抵抗するも全面戦争は避けたい国も、事を荒立てたく無い政府とパレスチナ人に想いを寄せる一般市民との間で大きな乖離が起こっている。)


支援食料空中投下


こんなちょっぴり。。。

トラックが国境に何百台も待機しているのに、わざわざコストがかかる空中投下を少量だけしている。PRと言うしかない。世論操作もある。これから国際司法の場で米国が「イスラエルとのジェノサイド共謀」の罪に問われる事に対する防御線(「そんな事ない、支援を投下したじゃないか!」)でもあるだろう。どんな言い訳もきかない(なんと親イスラエル偏向のBBCがイスラエル軍の言い訳を反証した)「小麦粉虐殺」(後述)から人々の目を逸らせたい。

投下されたのは38,000食(1,300kcal/食)のMRE(戦闘糧食)。二人で分けたとしても76,000人分。2百万人が飢えているガザで余りにも少ない。これを餓死寸前の人口に投げ入れれば当然取り合いが始まる。それを外から見て「ほらみろ野蛮な奴らだ」とはナチスがユダヤ人にやった事そのままだ。

やろうと思えばガザ市民全員分のMREを48時間以内に空中投下するロジが米軍にはある。周辺に十分な軍備施設も備蓄もある。前述の通り、トラック搬入に比べてあからさまにコストはかかるが、不可能では無い。本当にガザに支援物資送りたいと言うなら、なぜそれをやらない?やはり形だけのPRだ。

小麦粉虐殺

死者100人、負傷者750人。NPR報道では負傷者の8割が銃弾による被害(戦車の砲弾でなく)とのこと。銃で700名を負傷させるのは、簡単ではない。意図的に全解放で銃撃を行なったと考えられる。

「(飢えで暴徒と化した)ガザ市民がイスラエル兵士を脅かしたため発砲」
「負傷はガザ市民のスタンピードによるもの」

などとイスラエル軍はガザ市民を非人間化するレトリックで説明しているが根拠に欠ける。BBCが検証済み。


イスラエル軍の兵力不足

イスラエルには徴兵制度があるが、それを免除されていた超正統派ユダヤ教信者からも徴兵を始めるとネタニエフとガラント国防相が発表。大きな反発が国内で起こっている。

その他兵力保持のための様々な措置がなされている。兵役期間の強制延長や引退年齢引き上げなどであり、それは米国でもアフガンやイラクでの軍事活動保持のために行われた「Stop-Loss」プログラムと同じだ。米国内で非常に問題になっていた。映画にまでなっている。

米国の軍従事者は人口の1%。それでもあそこまで反発があったのだから、国民のほとんどが軍事活動に参加するイスラエルでの不満は相当だろう。

実際イスラエル軍が何人の兵士を擁しているのか正確なデータは無い。ガザ侵攻にむけて「30万人を確保」と報道されたが、どう考えてもその数は多すぎる(米陸軍は45万人)。イスラエル軍報道の仕事は威嚇が通常運転なので、その数字は信じがたい。

イスラエル軍はその構造がイラク軍(そしてその元はソビエト軍)と酷似しており、西洋の規範で内部を想像するのは難しい。

イスラエル当局はラファ地上侵攻、夏には北部戦線でレバノンのヒズボラと戦うとまで言っているが実際はカツカツ。人員不足があるなら、弾薬不足もあるだろう。頼みの綱の米国からの支援金は同予算案に含まれる南部国境移民対策予算に納得がいかない共和党議員にブロックされている状態だ。

米国からの経済支援はイスラエル国内経済活性化にも使われる。兵役に労働者を奪われ、情勢不安を理由に国外に移動した(イスラエル人は2カ国以上の国籍を持つ人が多い。もともと国外から入植してきた人達だからだ。)イスラエル人は11月の時点で50万人と言われている。働き手を多く失い、国内経済状況は不安定。アパルトヘイト国家が崩れる時は経済面から、との王道を辿っている。

国内イデオロギースペクトラム

イスラエル国内でネタニエフへの不信感が高まっている。
元々10/7以前からも司法の力弱めようとする彼の強行姿勢が批判され、汚職事件の裁判中でもある。

更に先日12月に起こったイスラエル軍によるイスラエル人人質の射殺事件(白旗を振りながらヘブライ語で助けてくれ、人質だ、と言っていたのに狙撃された。3名)の音声リークにより、「人質奪還」をこの戦争の大きな目的の一つに掲げるネタニエフへの非難は最高潮。

イスラエル軍内でも極右の入植者兵は非常に暴力的で、自分を脅かす者はイスラエル人だろうと誰だろうとあっという間に加害する。以前からそれは報道されている。そのような兵士が撃ったのかも知れないが音声を聞く限りは兵士の訓練不足に聞こえる。非武装のパレスチナ人ばかりを狙撃し続け、もう武装者か非武装者かの区別すらすることをやめてしまったことから起こった事件だろうと思われる。

イスラエル軍はガザの非武装市民をめったやたらと殺すことに関して、「だってハマスは軍服を着ていないから!」と言うが、武装者と非武装者の違いは戦闘服の是非でなく、武器所有の有無で決まる。それを判断するのも軍の仕事だ。当たり前。

政敵、中庸派のベニー・ガンツがネタニエフをすっ飛ばして米国に近づいている。
米国内部でも数週間前から「とにかく悪いのはネタニエフ」と言った尻尾切りのための印象操作が少しずつ行われている(バイデン、ヒラリーのいきなりのネタニエフ批判発言報道など)。

しかしイスラエル議会は「中庸」と言われる党派もかなりの右寄りで、「パレスチナの自治権は絶対に認めない」と120票中99票で採決したばかり。https://jp.reuters.com/world/mideast/LI4EQMQXZZISLP2AEIB2UJKVBY-2024-02-21/ 

ネタニエフなど極右勢力には反発するが、パレスチナ人の権利・尊厳などには興味がない、との姿勢がイスラエルの「リベラル」のようだ。

パレスチナ人の人権と尊厳を担保して本当の意味での民主主義国家を望むイスラエル人はもちろんいるが、それが果たしてどれくらいなのか、1%?10%?20%?、イスラエルから出てくる統計はもう信用ならないので本当のところは分からない。

ラファ侵攻

数週間前から「地上侵攻」とネタニエフは息巻いているが、実は何も策がないことは明らかだ。120万人もいるのにどこにどうやって追い払うと言うのか。軍内で意見が分かれているに違いない。

この「戦争」の最初からイスラエル軍はこの調子だ。軍事行動には明確な目的設定が必要なのだが、ずっとそれが無い。「ハマス殲滅」、多くの専門家が言う通りパレスチナ人へのアパルトヘイト占領をやめない限り反抗勢力がなくなる事はない。軍事圧力だけでは殲滅など無理。「人質奪還」、ハマスのトンネルがあるからと無差別攻撃するのはその目的に反している。

だから本当の目的は違うのだろうと言う話になる。ジェノサイド、民族浄化、土地の収奪。

イスラエル軍は自ら「ハマスのトンネルは地下80フィートにも及ぶ」と言っている。イスラエルが使うGBU2000ポンド爆弾でもそこまで破壊するのは無理。せいぜい50フィート。

大体「地下システムが集中するのがラファ」と言うならなぜそこに市民を集めるのか。軍事行動目的の論理がめちゃくちゃ。新人の中尉アナリストでも秒で気付く破綻ぶりだ。

それに加えてイスラエル軍は北部国境で、1ヶ月間の空爆に加え今は偵察隊(reconn)をレバノンに送っている。


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