戦略の仕組みで生産性を上げる
生産性とは、商品やサービスを生産する際に、投入する労働や原材料などが効率的に使われたかを示す割合のことです。国際競争力や企業の生産性を比較する場合、一つの指標として労働生産性が一般的に使われています。一人当たりの労働生産性の直近データによると、OECD加盟国の中では、日本は31位。G7の中においては最下位となっています。
労働生産性は、従業員一人当たりの付加価値額として「粗利益額(決算書では売上総利益)÷従業員数(社長、役員、社員は「1」、パート・アルバイトは「0.5」)」で算出し把握します。この一人当たりの粗利益額が企業の力であり、競合他社と比較した競争力の指標となります。
特に中小企業における一人当たりの粗利益額は総じて低く、例えば大企業の製造業では1,180万円ですが、中小企業は520万円にとどまっています。(中小企業白書 2022年版より)つまり、中小企業の労働生産性(一人当たりの粗利益額)は、大企業の半分でしかないのです。
中小企業が一人当たりの粗利益額を伸ばせない大きな要因は、社長が戦略から戦術に至るまで一人で会社をマネジメントしているケースが多いからです。社長一人で会社の方向性や目標を決めて社員へ指示を出しています。その都度あれこれと口出しすることも多く、他にも社員の人事評価や賃金を決めています。
これらは、言語化されたり仕組みとしてのルール化されたものが少なく、全ては社長の頭の中で考えられて決まったり、口頭でやりとりされることが少なくありません。中小企業では、会社の事業の流れを社長一人、もしくは数名の幹部・リーダー、または社長の親族で行われている場合が非常に多いのです。
つまり、人に頼って組織を動かしている属人性が極めて高い状態になっています。これだと人が管理、コントロールできる限界があり、刻々と変化する経営環境に対応できなくなってしまいます。この状態で従業員が増えていくと更に一人当たりの労働生産性は低下していきます。
ある統計によると、事業経過年数が5年から8年くらいの間で、社員数10名から15名ほどで一人当たりの粗利益額はピークとなり、その後は下がり続けています。
人が増えていけばいくほど、仕組みで組織をマネジメントし、方針や役割を文章やデータで示したり、手順書やルールなどを決めて組織全体をマネジメントすることがますます必要不可欠なのです。
本来、組織は一体とならなければ成果は出せないのですが、会社に仕組みがなければ単に集まって活動しているだけの状態で終わってしまうのです。戦略に基づき、属人的経営から仕組み経営に移行しなければ、いつまで経っても労働生産性(一人当たりの粗利益額)は上がっていかないのです。
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