家に住めない人との旅 8
最近よく、人はみんな繋がっているということをあちこちで耳にします。ほんとだな、と思います。たとえば彼と私は川の流れの一点でたまたま合流した水の流れで、しばらく一緒に流れ、いずれ流木や岩に突き当たり別の方向へ流れていく。その後大きな海に出るのか、またどこかで合流することがあるのかはわかりません。
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彼のお父さんが血の通っていない暴君だったとしたら、そのお父さん(お爺さん)もまた同じだったようです。具体的なことは言わずただ彼は「キチガイ」とだけ形容しています。彼のお父さんも自分の本当の父親に殴られて育ち、母親は小さな子供達を残して首つり自殺をし、子供だった二コーラのお父さんがそれを発見したということです。お爺さんは子供たちを育てることができず(か、事情は知りませんが)、子供たちは孤児院で育ったということです。そして歴史は繰り返されました。
私はそのキチガイのお爺さんに偶然に病院でお目にかかったことがあります。その時はそんな話は聞いておらず、至って普通の人に見え、普通でないところがあれば、90代なのに70代くらいにしか見えなかったことです。そして綺麗な30歳も年下の2度目の奥さんと一緒でした。この方が後に私に、
「あなたにはもっといい人がいる、彼のことは忘れなさい。」
と言ってくれたのです。
一度はその言葉を呑み込もうとしました。が、その時私は既に深溝にはまっていて、結局その助言に沿うことができませんでした。
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この親子(彼とお父さん)はしかしながら、数年前に和解を遂げているようです。彼は他人に酷いことを平気でできるのに、同時に信仰深く、神の前では真剣で慎ましいのです。そしてまた、人を赦さない限り本当に自分を救うことはできない、ということも知っています。そうして今では過去の事は過去の事として、もう父親に対する憎悪は持ち続けてはいないようです。ただしもっと若い頃は、真剣に父親を殺そうと思っていたことを、他のルートから聞きました。そしてそれは当然のことだと私は思いました。
私は自分自身毒親に育てられたこともあり、悲惨な子供時代を過ごした人に傾倒してしまう傾向があります、男女を問わず。心理学的にはこれには名前があるようですが、そういうレーベルにはあまり興味はありません。ただ単に私はそういう人の痛みが手に取るようにわかるのです。なので自分と表現方法は違っても、どうしてそういう行動に出るかはわかってしまうのです。
彼は並外れた体力に恵まれながら、腎臓という器官を20万人に1人といわれる程度まで悪くしてしまったのは、水や飲み物を飲み過ぎて腎臓に負担をかけたこと、ろくに食べされられずありつけるものはどんなものでも口に放り込んだこと、などに加えて、中医学(Traditional Chinese Medicine )で腎臓は恐怖(Fear)の臓器だといわれることも無関係ではないと思っています。臓器にはそれぞれ密接につながった感情があり、まさに彼の場合は腎臓を酷使してきたのです。ただ男性の場合は、あからさまに怖がる、怯えることが社会的に許されないため、それを怒りに変えて発するそうです。そのため彼は四六時中、何に対しても怒っています。全ての人、全てのものに対して怒りを抱き、その怒りがないといられないところがあります。
わざわざ怒りの対象を探すこともあります。たとえば彼はカーレースが好きで毎日YouTubeでレースや道路上のトラブル(Road rage)などを見ています。誰かが事故を起こしたり、ケガをしたり、車が炎上したり、警察に問い詰められてピンチに陥っていたり。本当にこれが好きで、一日一回はこれを見ないといられないようで、これも一種マリファナが与えてくれる効果と似ているのかもしれません。これは彼の肉体的(=精神的)な痛みを緩和させてくれるものの一つで、そこに私も加わります。
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彼の私への精神的なイジメ又はモラハラは、私が彼の元へ移住して間もなく始まりました。言葉の暴力を浴びせ、私は一日に何度も謝ってばかりいました。彼は私が傷つくことを言い、私がしょげるのを見るのが何よりも快感なサディストだったのです。それでも獲物として既に引っかかっている私は、
「彼は病気なんだから仕方ない、酷い人生を送ってきたのだから仕方ない。」
と言い聞かせていました。初めは私の健康が妬ましいのかとも思いましたが、きっと違うでしょう。彼は自分より悲惨なものを見ることによってのみ、自分を高めることができ、快感が得られるのです。でなければ彼はまだ、誰の助けもなく誰にも気づいてもらえず、父親に殴られまくっている小さな男の子のままなのです。彼は意識的にはお父さんのことをもう恨んではいないにしても、彼の体と潜在意識(Subconscious)はそれを忘れずに憶えていて、そこから抜け出せないでいるのです。
自己愛性人格障害(Narcissistic Personality Disorder, NPD)の人はみんな共通して同じ行動を取ります。面白いくらい同じです。アメリカ人でも日本人でもユダヤ人でもみんな同じです。
彼は自分が怒りっぽいのは高血圧のせいだと言いますが、私は彼の病気は心の病気から始まって、腎臓、心臓、高血圧と悪化していったと思っています。全部繋がっていると。なので心の病気さえ治れば体の方も、完治とは言わずともある程度快方に向かうと思っています。これは議論を醸し出すところですが、私が彼から完全に離れないでいるのはこの小さな小さな希望を捨てきれずにいるためなのです。
(つづく)
もしもサポートを戴いた際は、4匹のネコのゴハンやネコ砂などに使わせて頂きます。 心から、ありがとうございます