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名もなく貧しく美しく 1961 東宝東京製作

「二十四の瞳」など名作映画の脚本家である松山善三が実話をベースにして自らメガホンを取った、聾唖者夫婦の愛の物語。高峰秀子と小林桂樹が主演し、手話中心の静かな映画だ。

秋子(高峰秀子)は聾唖者だが、お寺に嫁ぐ。しかし終戦のどさくさで亭主が発疹チフスになり死んでしまい、実母(原泉)の元に戻る。
そんな秋子に聾唖者の集まりで道夫(小林桂樹)が声を掛ける。彼は昔から彼女のことが好きだったのだ。聾唖者同士で結婚生活が営めるかという周囲の声もあったが、二人は結婚して力を合わせて生きていく道を選ぶ。
早速二人の間に子どもが出来るが、子どもの泣き声が聞こえず死なせてしまう。その上、道夫の会社も倒産してしまう。
夫婦の許に秋子の母が家財道具を背負って訪れてきた。秋子の弟が勝手に家を売ってしまったので行くところがない。道夫は困ったと思うが、秋子は「実は妊娠したので私たちを助けて」と言った。道夫は、子どもの話を聞かされていなかったので、吃驚仰天。
二人目の子どもの一郎は、健康優良児三等賞であり、すくすく育つ。秋子も母にミシンを買ってもらい洋裁の仕事を始めた。
一郎は小学一年生になった。反抗期で母親の言うことを聞かない。秋子は、しつけに悩んだ。そして、弟が遊ぶ金ほしさに秋子の内職用のミシンを売り飛ばしてしまう・・・。


雑感

聾唖者のドラマとしては、豊川悦司・常盤貴子の「愛していると言ってくれ」(脚本北川悦吏子)が有名だが、この映画「名もなく貧しく美しく」の方が心を揺すぶられた。六年後に続編映画が作られたし、1976年(東野英心・島かおり版)、1980年(島田陽子、篠田三郎版)と二度テレビドラマ化されている。

これは母親を描いた映画だと思う。ベタベタした映画でなく、北野武監督の1991年映画「あの夏、一番静かな海。」のような静かな映画であり、母親の気持ちがまっすぐに伝わってくる。
主演の高峰秀子も良いけれど、鬼姑の役が多かった原泉が健常者である母役を好演している。
出演する多くの人は悪役だ。姉役の草笛光子も高峰秀子の映画では、よく悪役を演じている。
なおアメリカでも公開された。アメリカ人はバッドエンドを嫌がるので、そいのおかげでエンディングを変えたバージョンが何種類かあるらしい。

配役

高峰秀子 (片山秋子)
小林桂樹 (片山道夫)
島津雅彦 (片山一郎(一年生))
王田秀夫 (片山一郎(五年生))
原泉 (秋子の母たま)
草笛光子 (秋子の姉信子)
沼田曜一 (秋子の弟弘一)

スタッフ

監督 松山善三
製作 藤本真澄 / 角田健一郎
脚本 松山善三
撮影 玉井正夫
音楽 林光

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