『男の子はなぜ「男らしく」育つのか』レイチェル・ギーザ 著

要約
男の子は泣かない、強い、大黒柱、経済力、など広く世の中に普及した「男の子らしさ」を強いられている。それは今まで男性が持っていた既得権益がフェミニズム運動の拡大によって脅かされると考えた男性達に大きく影響を与えている。2014年に起きた殺害事件では、女性にモテる男性、その男性に群がる女性の両者を敵とし、6名の殺害事件が起きた。また、トランプ大統領の支持者にはバックラッシュを恐れた白人男性も多数存在している。その中で問題は男の子そのまではなく、マスキュリニティにあるのではないか。
大型小売店では「男性/女性=スポーツとトラック/ハートとお花」などの性的先入観を排除する為、おもちゃの配列を男女で区切ることをやめた。そのような潮流でさえも、ジェンダーの問題はまだ根深い。男の子が女の子のように振る舞うことでステータスと権力が失われることや弱々しいイメージへの転換により女性トランスより社会的な目は厳しい。
19世紀末から20世紀初頭になると、女性は家庭から出始め、異性愛に基づく結婚と核家族が
社会のスタンダードとなり始めた。男の子が友だちを欲しがる理由は男らしさの競争ではなく考えや感情の共有のためである。
研究から先生たちの注意は女性より男性。そして白人男性より黒人男性である。アジア系すぎる、黒人すぎる、タフすぎる、多動すぎるなどのステレオタイプや期待が男の子の成長と発達を阻害している。
マン・ボックスによって男の人は性行為に積極的でなければいけないという期待感が苦しめている。オランダでは性行為への授業が毎年一年、小学一年生から受講され、男女の戦いというメタファーの代わりに、人間関係や愛情についての表現が一般的。

感想
本書を読んで感じたことは「時代の変化」と「価値観の檻」である。100年前までは社会の実権は男性の手の中にあり、女性が社会で今まで活躍することは好まれなかった。しかし、現在はフェミニズム運動の影響で男女平等の社会形成がトレンドとなっている。スコットランドなどのヨーロッパが先んじて女性用ナプキンの無償化を行うなど世界で女性へのケアが手厚くなり始めていることは確実である。そんな中で男という概念自体が男性を苦しめているのも実感する。日本でも経済的な稼ぎ頭は男性で、強くて、勇ましい武士のような人を理想像としている。しかし、私自身社会でいうフェミニンな要素を持っている。悲しい時は泣くし、中学生になっても合宿にいき、母と離れるのが寂しくて泣いていた。これは理想の男性という概念に全く当てはまらない。むしろ逆である。しかし、そんな中でも私を受け入れ、関係を築いてくれる友人沢山いる。もしそれが受け入れられないなら受け入れられないでいい。私は私自 であるから。

人はジェンダーに関係なく、タフさと優しさ、勇敢さと繊細さ、競争心と思いやりという、人間に備わるあらゆる性質を同時に持つことができるのだ。p23

真の男になるために必要とされるスキルは、真の人間として成長するためにはマイナスとなるのだ。p125

男女は生来の潜在力と文化的な補強作用との間でくりかえされる往復運動。p79

人によっては、そう言った男らしい男であることがとてもかちのあることか、ただ、全員がそのカテゴリーの中に入っていることはあり得ない。全く入らない人もいるんだということ。
自分らしく振る舞うことを考えてほしい。p319

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