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堀井
2021年11月7日 23:08
個人的には、面白くなかったわけではないのだけれどあまり入り込めない作品群だった。空という感じもあまり受けなかった。逆にここまで読んできて「あまり入れなかった一冊」もなかったので、面白い一冊があるようにそこまではまらない一冊も明確にあるのだなと面白かった。聖家族/北原武夫早春の美しい朝、画家になることを決意したその日から、いくのの新しい人生が始まった。理想の生活をひたむきに追い求め、辿りつい
2021年11月7日 22:14
ロマンティックな描写が散りばめられた三篇で、テーマがなんだったか思い出せなくてしばらく考えてしまった。巡という漢字自体にロマンティシズムを含んだ雰囲気があるのは否めないけれど。選出に特に意図はないと思うけれど、作品自体の構造が気になる三篇だった。理論的なことを考えた末の作だから、意図的ではなくても感性よりもそういった技巧的なところに凝りがちになるのかな。アトランティス物語/ノヴァーリス年老
2021年11月6日 14:21
三篇を通して、あまり街という印象は受けなかったように思う。でも思えば街の中で進む話というのもそんなには無いし、どこにでもある題材の割には選び辛いテーマのような気もする。感傷の靴/谷譲次「ああ、日本人、ヘンリイも日本人、俺も日本人」ー。カナダ兵として戦勝パレードに参加した同期の雄姿を、「私」は感慨深く見つめた。わたしはナショナリズム的な感情は薄いほうだと思うけれど、それでも海外で出会う同
2021年11月6日 14:19
どことなくコメディタッチな作品が多い印象。シェイクスピアとかでも結婚のモチーフはちょっと喜劇的なイメージがあるし、明るい話題だからこそそういう形で扱いやすかったりもするのかな。求婚者の話/久米正雄単刀直入を身上とする「鈴木君」は、道ゆく洋傘の女性に一目惚れし、30分後には結婚の約束を取りつけた。がむしゃらに夢を追う男の生きざまをユーモラスに描いた。「鈴木君」の気持ちよく進んでいく人生
2021年10月30日 22:46
意図的かどうかわからないけれど、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンと北欧作家の作品でまとめられているのが面白かった。確かにイタリアやアジアの作品で「星」のイメージは薄い気がする。ひとり者のナイトキャップ/アンデルセン「結婚しない」という条件で異国の地に赴き、店番をしながら老いていったアントンさんの熱い涙。ドイツからデンマークに移住している老人が主人公のお話。ドイツからデンマークに旅し
2021年10月30日 22:41
三作すべてにローマが取り上げられていたのが面白かった。世界文学の中から「都」を選ぶならやはりローマなのだなと思った。東京とか、都ではあるけど「みやこ」というイメージは確かにないものね。それぞれの作品が毛色が違えど三篇とも面白く、一冊の短編集としてかなり手元に置いておきたい作品。くすり指/ギッシング伯父とローマに滞在するケリン嬢は、朝食のテーブルで知り合ったイギリス人青年に惹かれていく…「
2021年10月30日 22:39
美味しそうな文章が大好きだ。写真よりも文章を読む方が、より美味しそうなイメージが湧くような気がする。なのでこれは楽しみな気持ちが大きかったタイトル。茶粥の記 ほか/矢田津世子想像力で食べたこともない旨そうな食べ物の話をし、雑誌に記事まで書いていた夫。役所の戸籍係だった亡夫を「食べ物」で回想する。作者の目線がとても優しくて、きっと本人もこういう心持ちの人なのだろうと思った。根本的に目線の
2021年10月30日 19:19
「波」というタイトルの通り、人生の波に翻弄される人々を描いた三篇。波に揉まれつつも最後に希望を持った終わり方の作品が多かったところが好きだった。俊寛/菊池寛謀叛に失敗し島に流された男が、絶望のなかに新たな人生人生の境地を見出していく。詳しくない時代の歴史が下敷きになっていたものの、作品の本質は歴史の部分には無く普遍的な人間を描こうとしているので特に気にならず読めた。俊寛については全く
2021年10月30日 11:48
この選集の多くは同じテーマでも毛色が違う作品を集めていることが多いけれど、この三作はかなり雰囲気が近いように思った。ちょうど「群集心理」を読んだところだったので、群集が画一化されていくことについて考えさせられた。象を射つ/オーウェル「市場で象が暴れています」と連絡を受けた警察官が護身用のライフルを手にすると…。群集に取りかこまれた男の痛切な経験。どことなく国語の教科書みたいな作品だなと
「美しい文語の名篇を総ルビで味わう一冊」という説明の通り、三篇とも総ルビの文語で少し毛色の違った一冊。個人的に総ルビの作品は泉鏡花みたいでなんとなく雰囲気が感じられて好き。こういう個性を持たせた巻があるのも、編者の遊び心が垣間見えて楽しい。文語は言葉の響きも気持ちいいので、手元に置いて読み返したくなる。十三夜/樋口一葉家柄の違う家に嫁いだ女が夫の冷たさに耐えかね実家にもどった。すべてを胸に
2021年10月28日 12:10
三作ともきちんと「地」のイメージがあるけれど、そのイメージもかなり広く取られていて違う土地を感じられるセレクトだったところがよかった。なんとなく世界旅行をするような気持ちになれる一冊。羊飼イェーリ/ヴェルガ馬を追い野宿しながら暮らす孤独な少年イェーリにとって、幼なじみのマーラと交わした結婚の約束が何より心の支えだった---。純朴な若者がたどった過酷な運命の物語。「言葉を持たないこと」に
2021年10月28日 12:08
人生で「汝」って使ったことあります?私は無いです。今まで読み進めてきた中で一番使わない漢字のテーマだなと思った。意味はシンプルだし、作品もチョイスの理由がわかりやすいので良い。もう一人の私/吉屋信子ドアが開いて現れたのは「わたくし」にそっくりな娘娘だった…。亡き双子の姉との不可思議な交流を描いた作品。古い少女漫画みたいな作品だなと思った。あんまり詳しくないけれど、ホラーやSFの雰囲気
2021年10月27日 16:54
フィリップの短編以外はあまり家の印象が無かった。どちらかといえば「家族」みたいな印象が強かった気がする。これまで読んだ中で、もっと「家」っぽい作品があった気がするので面白かった。幸田文「台所のおと」とか、「家」っぽかったな。「帰宅」ほか五篇/フィリップ酒飲みの父親が四年ぶりに家に帰ってきた…。つましい庶民の暮らしを一幅の名画のように切り取って見せる。表題作「帰宅」が良かった。初めての作
2021年10月20日 12:37
「夢」はどれも悲しげであった。あるいはそういうものこそ、夢のエッセンスであるのかもしれなかった。儚さもある。でも総じて、自分としては好きな三篇の取り合わせで良かった。結構気に入った一冊。すみれの君/ポルガー女友達に高価な贈り物をし、湯水のように金を使う貴族ルドルフ。借金を重ねて落ちぶれても、プライドは老いてなお高く-。ここまで読んできて初めて、ドイツ語文学で知らない作家に出会った。何か