演技力の見極め方

昔からずっと気になっていることがあって、
「演技力がある(演技が上手い)」というのがどういうことなのか今ひとつピンとこない。
セリフが浮いてしまっていたり表情がぎこちなかったりと
あからさまに下手だなというのは判別がつくのだが、
その逆の上手いとなると、何を以て上手いと感じるのだろう。

これまでに「演技力とは」というテーマで調べたことはあるが、
その場の空気を変える、存在感がある、自然体とか、よく分かるような分からないような、腑に落ちない内容が多かった。

そんな中で一番興味深かった解釈が、
「演技力があるとは、その感情を代表しない行為や仕草でその感情を表せること」。

例えば悲しいという感情を代表する行為は泣くことだが、
そもそも現実の人間はそんなに分かりやすく悲しいからと言って泣いたりはしない。
だからこの泣く「以外」の行為を通して悲しみを表せることこそが、よりリアルな演技だというのだ。
悲しい場面でただ泣くのではなく、弱く微笑んだその口元のフォルムで悲しみを伝える、みたいなことだろうか。

言われてみれば、演技だけでなく小説などの表現行為全般もこれと似ている。
”I love you”がただの「愛している」ではなく「月が綺麗ですね」となったときにそこに深みが生まれるように、
直接的ではない、間接的な表現に潜むリアルさが、演技力や読後感といった目に見えない何かを人の心に残すのかもしれない。


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