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生徒中心型授業デザイン

まずは授業から変えていこう

まずは授業から変えていこうということで現在行っている授業スタイルについて書いてみようと思う。偶然Xで見つけた

こちらの齋藤先生のやり方に似ており、だいたい同じ感想・結果を得ていると感じている。ただし、いつものことではあるが、教育効果を定量的に図ることは難しいので実施してみた感想・感触、生徒からの反応による判断は多めとなる。

生徒中心型授業デザイン

前提・疑問
○職員室での「言ったのに、教えたのにまったく聞いとらん、できとらん」
 といった会話。生徒に責任を押し付けているように感じる。稀なことなら
 ば仕方ないかもしれないが、同じような会話を様々な教員から聞く。(も
 ちろん私も言っていた)ということは、今のやり方では生徒が「きちんと
 聞く、きちんと理解する」のは難しいのではないか?つまりこちらの授業
 を見直すべきではないか。
○「授業で説明した」という教員側のアリバイ作り(説明したからできない
 生徒が悪い)になっているのでは?
○授業の進度、速さは学校・カリキュラムの都合に合わせている。
 そもそも全員が理解するのに十分な時間、内容となっているのか?
○生徒それぞれ理解の速さ、仕方、集中に入るまでに必要な時間は異なるの
 で一斉授業でオーナーシップを持って取り組ませるのは難しいのでは?

生徒中心型授業デザインの目的

○生徒が主体的に学習を行う。
○生徒の理解を中心とした学習時間とする。
○生徒の学習方法取得の場とする。

全体への指示

○自分の学力をつけるためであれば基本的にどのような方法を取っても
 構わない。ただしその責任は自分で負うこと。
※他人の邪魔をする、教員他の級友へのリスペクトのない行動は禁止
○席は自由に移動して良い。黒板の方を向いている必要はない。
 ワークスペースは必要なので椅子のみでの移動は不可
○1人で集中したければ1人で、すぐに質問したければ聞きやすい友人とグル
 ープを作っても良い。もちろん教員に聞く、あるいは授業を要求しても良
 い。
○休み時間のうちに席の移動は終えておくこと。
○途中で眠ってしまっても基本的には声はかけない。
 起こしてほしい場合には事前に伝えておくこと。
○間違えた理解をしていても構わない。仮説を立てることが重要。
 教員の説明を待つ、というスタンスを改めよう。
○グループ内の教え合いはヒソヒソではなく、通常の声の大きさでOK

授業の流れ

進学校・高校・数学・45分授業

本校は授業時間が45分のため、大まか上記のような割り振り。できる限り私が喋るのは15分以内を目指している。

授業中の雰囲気

それぞれが好きなことを話しており、学習とは関係ない話もしているので一般的な尺度で言うととても良い雰囲気とは言われないだろう。しかしこのシステムを見たときに想像するほどめちゃくちゃな雰囲気とはならない。

2〜5名のグループ学習中心   :7.5割
1人で本時内容の学習       :1.5割
1人で本時以外の内容の学習          :0.5割
どうしてもやる気にならない生徒:0.5割

といった感じ。生徒との関係はできているので、聞いてほしいところは雰囲気を変えて聞けている。

教育効果

  • 進度は意外なことにまったく変わらない。(遅くなるのでは?と思っていたが)

  • 1クラスのみ定期考査での平均点が約10点低いクラスがあったが、このスタイルにしてから追い付き、変わらなくなった。数学以外は相変わらず多くの教科で低いままであったので効果があると考えて良いのではないか。

  • もともと点の良かったクラスの点数が大きく変わった、ということはないので、特に下位層に効果が出やすいのか? → 定期考査は基本を問うので上位は見えにくいだけ?感想では上位の子もやりやすいとの事。

  • 授業中に個別に生徒と話す時間が圧倒的に増えるので、生徒理解、生徒との関係性の強化は明らかに高まった。

生徒の反応(Positive)

  • 明らかに学習に対する積極性が上がった。生徒曰く「分かるから面白い!」

  • 「先生の授業はめっちゃ分かるから楽しい!授業を毎回楽しみにしている!」と言ってもらえるようになったが、上記で分かるように実はほとんど教えていない。自分で理解したことが楽しいのであると思われる。

  • 確実に分かってから終わるので宿題やる気になる!(私は宿題を出していないが)

生徒の反応(Negative)

  • 特性のある生徒が、雑多とした雰囲気が苦手で時々固まってしまう。

このやり方でもどうしても動き出せない生徒が2名いたが、一切叱らず「待ってるからね」と声掛けだけしていた。その時の生徒の申し訳なさそうな顔が印象的であった。やりたくてもやる気が出ないことに対して本人が一番悔しいのだ。その子らがたまに学習できると「先生!今日は俺やれてるよ!」と報告してくる。高校2年生がまるで小学生のように。授業をきちんと受け切れない生徒に対して、どうしても「サボっている」という印象を持つが、実はそうではない、ということをぜひ多くの先生方に知ってもらいたい。

留意点

齋藤先生も書かれていたかと思うが、大切なのはシステムではなく

「生徒との信頼関係は築けているか」
「生徒が学習に対する正しいマインドセットを持てているか」

である。これらを正確に把握し、適宜修正を入れながら運用する。かつ進学校として大学入試へ対応できるレベルまで生徒を持っていくことを考えると、教師としてのスキルはそれなりに高いものが要求される。決して、生徒が楽しそう生徒が慕ってくれるからOKというわけではない。

現在の感想・その他

今の所このシステムでうまく回っており、生徒からの評判もよく、成績も上がっている。ほとんどデメリットの無い授業だと考えている。おしゃべりしながらの学習も「記憶はその他の事象(手触り・臭い・風景など)との関わりの中で強くなる」ことを考えると実は学習効果は高いのではないかと思う。
中学・高校レベル以上の学習は結局のところ、生徒自身がどれだけ頭を働かせたかによると思っている(授業で全問題を解説することなんてできないし)。教員がどのような授業をしたか、何を話し、話さなかったかはあまり関係ない。
生徒が分かる状態に持っていく、誰とどのように学習を進めると理解しやすくなる、といった学習意欲向上・学習方法模索に力を入れた方が、長い目で見ると正解であると考えている。

このような授業、考え方に再現性があるのか

他の先生方にこの授業を見てもらい、感想をいただきたいと思っている。正直ポジティブな反応は返ってこない可能性が高いが、生徒の反応・アンケート、実際の成績の伸びも併せて考えて貰えば何か気づきを得られるかもしれない。もちろん私にも。
授業スタイルは様々で良いが、生徒中心型学習、生徒自身のモチベーションにフォーカスした学習をもっと広めていきたい。

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