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中欧をゆく 2

チェコの首都プラハは街そのものが「建築博物館」と呼ばれている。

20世紀の世界大戦での戦禍を免れたこと、なによりも市民が美しい街を守るために戦場になる前に街を明け渡したことによって、建物は破壊されずに姿をとどめることができた。

ロマネスク、ゴシック、ルネサンスから、近代の建築まで。壮大な時間を超えて今に残る姿がヨーロッパの真ん中で移り変わっていった歴史を伝えている。

そしてアール・ヌーヴォーを代表するデザイナー、アルフォンス・ミュシャの作品も外せないだろう。そんな美しい街を見られる日をずっと心待ちにしていた。

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ロレッタ教会
花も道もみんなきれいだった。ヴァーツラフ空港から送迎のタクシーに乗ると、プラハ城付近の城下町に入っていた。起伏と石畳によって揺れる車体、これからどんな景色が待っているのか、期待が膨らむ。ずっと覚えているのが、坂道とその両側に並ぶ並木の広がり方が、学生時代によく通った鎌倉の坂道に似ていたこと。

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プラハ城からの眺め

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聖ヴィート大聖堂
プラハ城を訪れる観光客なら必ずここには立ち寄るだろう。門を潜り抜けたところに高くそびえる教会は、引きで撮ることができないのでなかなか写真に収めるのは難しい。みんなスマホやカメラを空を見上げるように高く上げて撮っていた。

大聖堂の裏手には広場があって、ビールやBBQの屋台が並んでいた。多くの観光客がそこで食事をしていたのだけど、教会のすぐ近くでもくもくと煙を上げて食べ物を焼いていて少し心配になった。なぜならほんの少し前にフランスのノートルダムの尖塔が火災で燃え落ちるニュースがあったばかりだったから。煙と教会というのが重なって見えてしまった。世界遺産の中でBBQしてて大丈夫なんだろうか?

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聖ヴィート大聖堂内部のステンドグラス アルフォンス・ミュシャ作

息をのむ美しさとはこのことか。
自然光で映える鮮やかなグラデーションにミュシャの世界観がぎっしりと詰まっていた。
RPGのパッケージ画像みたい、と言ったらチープに聞こえてしまうかもしれないけれど、商業用のデザインや広告を数多く手がけたミュシャであればこそ、私たちがそこからゲームの世界に取り入れたエッセンスは想像以上に多いのかもしれない。

寒色と暖色の使い分けにも、見とれてしまうようなセンスの高さと、ストーリー性がある。アール・ヌーヴォー期の色使いは上品で繊細で本当に日本人の感性をくすぐるものばかりだ!

幸い、観光客は多いもののこのステンドグラスが目当てという人は少数で、それがとても不思議だった。ミュシャは世界的に著名なはずだが、特に日本人の関心は一段と高いんだろうか?欧米系の観光客はもっと別の金ピカの甲冑などを熱心に見ていたようだけど、それぞれ注目ポイントがぜんぜん違っていて面白かった。

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聖イジー教会
こちらもプラハ城の中にある教会の一つ。ヴィート大聖堂がゴシック様式なのに対して、こちらはロマネスク様式の教会だ。壁と天井が一体のものとして考えられているのが特徴で、内部に入ると一面石に覆われてどこか洞窟に入り込んだような静謐さがあった。

「プラハは建築博物館」と言ったように、こうして同じ敷地の中にも時代を超えたスタイルの建築が並び立っている。街を歩く時の注目ポイントだ。

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街中には多くのトラムが走っている
シュコダという自動車メーカーを聞いたことがあるだろうか?日本ではまず見かけることがないかもしれないけれど、ヨーロッパではドイツメーカーには及ばないものの、そこそこのシェアを誇っているチェコの自動車だ。
この街を走るトラムもシュコダ製。チェコは小国でありながらも、周辺国に負けじと自国の工業化を推進した。そういった近代の歴史はどこか日本とも似ていて僕は好感を持っている。

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レストランと家紋
このお店は元楽器屋さん。職業を表すシンボルマークを家の軒先に飾る風習があったそうだ。

教会の種類もローマカトリックからギリシャ正教まで、建築スタイルも時代を超えて混在しているプラハはヨーロッパの魅力を一つに凝縮したような世界だった。
その一方で、日本人として親しみを感じる部分も多いのも魅力だと思う。街中のいたるところに使われる色はどこか淡く私たちの好みに合うし、小柄で愛嬌あるチェコ人たちは距離感がちょうど良くて話しやすかった。この街を訪れた人は誰しも笑顔で思い出を語る。街と人と、僕にとってもいくつものいい出会いがあり、その事が深く納得できるような時間を過ごすことができた。

#ヨーロッパ #チェコ #プラハ #旅

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