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『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』を読んで-HSPについて-

前回、HSPの事について書いてみた。今、注目のワードともいえるHSP(Highly Sensitive Person=とても繊細な人)。たくさんの人たちがnote上でも書いていて、検索すると多くの記事が上がってくる。それぞれが概念をまとめたり、HSPの視点から見える世界について書いているみたいだ。

私はこれまで、HSPという言葉が独り歩きしてみんなが好き勝手に書いているという印象を抱いていたので、この情報について触れることにためらっていた。そんな中、『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』は、そのタイトルと表紙から興味をもって、初めて手に取ったHSPに関する本だった。

自らもHSPであるデンマーク出身の心理療法士、イルセ・サンによって書かれたこの本は、とても分かりやすく、それでいて専門的な視点で丁寧にHSPへの理解を促してくれる1冊だった。

あなたは神経質なわけでも、忍耐力がないわけでもありません。敏感さは、愛すべき能力です。

はじめに表紙をめくるとこの言葉が飛び込んでくる。正直、HSPの人にとってはこの時点で、自分の心をさすってくれたような温かい気持ちを抱くのではないだろうか。

この本ではHSPはどのように紹介されているか、HSPの能力として挙げられているものに次のようなものがある。

一度に多くの情報を吸収できる
音やにおいなどの微細な違いも察知できる
ゆっくり、多角的に考えられる
とても慎重で、危機管理能力が高い
共感力が高く、気配り上手
誠実で、責任感がある
想像力豊かで、内的生活が充実している

こうしてみると、HSPには多くの能力が備わっているように見える。一方で、敏感であるがゆえに多くの刺激を受けてしまい、自分の力が出せなくなってしまう場面も多い。そしてそうした自分自身に対し、羞恥心や罪悪感を抱いてしまいがちなのだ。著者自身もこれまでそうした制約の面ばかりに目を向けてしまっていたと語っている。

後半では周りにいる鈍感な人たちと、そして敏感である自分自身とどのように向き合うと良いか、カウンセリングを通じた多くのHSPの経験談を引用しながら、具体的なアドバイスが書かれている。自分に合わないと思う箇所があれば無理に読まなくてもいいとことわっていて、HSPらしい著者の配慮がにじみ出ている。断定口調ではなく終始やさしい語り口で書かれていて、これまで困難な環境に置かれて、自分自身を責めてしまうことが多かったであろうHSPの人たちには心の支えになってくれるような一冊になるはずだ。

自分自身だけでなく、周りの家族やそばにいる大切な人にもこの本を読んでもらうのもいいと思う。きっとこれまでより理解が深まって良好な関係を築いていける。すぐそばの本棚にそっと置いて、いつでも好きなところから読み始められる、そんなお守りのような一冊と出会うことができた。



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