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砂のリボン

手のひらいっぱいに掬い上げた海辺の砂

指の間から流れ落ちてゆく珊瑚砂

さらさらと真っ直ぐ落ちる時もあれば
風が強い時は、ひゅーっと横に流れてゆく。

そんな姿を、ただただジーッと見ているのが
何だか心地よくて、海辺に行くと
いつも1人で砂遊びをしていた。

砂の中には細かく砕かれた貝殻や珊瑚
星の砂が混ざっていて、その中に
ひときわ存在感を放つ欠片があった。

ピンク、水色、赤や緑などポップな色合い。
まるで、白い砂浜の中にキャンディーが
いっぱい落ちているみたいで
何て可愛いんだろうって思った。

海洋マイクロプラスチックと呼ばれている
その欠片たち。
漂着ゴミとして問題になっていて、良くないものだと知っているけれど
私にとっては悪いものではなく可愛いなって思うものだった。

生き物が付着し、そこを住み処としていたり
色褪せて白い粉を吹いたようなものがあったり、貝殻や珊瑚の欠片と同じように
様々な造形に溢れている。

漂着ゴミだけれど可愛いものたち。
いつかそれを表現できたらいいな。

そんなふうに思い始めた頃
ある出来事がありました。

私が西表島に移住をして間もない頃に作ったお店用の看板。役目を終えたので、そろそろ解体しようと外で作業をしていた夫が
「見て!見て!」
と、何かを持ってきました。

それは看板にボンドで貼り付けた海辺の砂が
綺麗に剥がれて帯状になったものでした。

「わぁ!リボンみたい!砂のリボンだ!」
「アクセサリーの素材として使えるかも!」と、二人で大はしゃぎ。

何かが生まれそうな、うれしい予感に包まれた瞬間でした。

砂はカチカチに固まっていて強度はある。
けれど、「うーん、どうやって使おう?」
いいアイデアが、浮かぶまで
とりあえず、お店に飾っておくことにしました。

なかなか、ひらめかないなぁ…と、
しばらく頭の片隅に置いた状態が続いていた時、「蟲師」という漫画に出会いました。
夫が知人から借りていたのですが気になって私も読んでみることに。

動物でも植物でもない生命の原生体である蟲と人との物語。
それぞれの話しに出てくる様々な形をした蟲の姿はどこか本当にいそうな雰囲気もあって
何だか不思議な気持ちになりました。
海の中、森の中、空や星ぼしを見る度に
蟲の存在を思い出してしまう。
「蟲師」の世界に、どんどん引き込まれていきました。

物語の余韻に浸りながら浜辺を散歩していたある日、ふと
「もしも、この海辺の砂が蟲だったら…
どんな姿だろう?」

風に流れてゆく砂を眺めながら
想像してみると…
様々な形になって宙を舞う砂の姿が
頭の中で浮かびあがりました。
ひゅるん、ひゅるんって
まるでリボンで形を作っているみたいに
自由自在に変形してゆく砂。

くるくるとした螺旋状だったり丸だったり
ねじれた形だったり。
いろんな形の砂が集まっている。

「おもしろい!」
私の想像の世界だけれど、それを表現してみたい。

「そうだ!あの砂のリボンで作ることが
できるかもしれない。」

そう思って、すぐに家に帰って砂のリボンを
くるくる丸めたり、ねじってみたり
色々と試してみました。
けれど…砂だけでは何か物足りない。

イメージが、なかなか
まとまらなくて悩む日々が続きました。

そんな時に今度は
「魔法少女まどかマギカ」というアニメに
出会いました。
もう大人だし楽しめるかなぁと、あまり期待はしていなかったのですが、観始めると
釘付けになっていました。

今まで観たことのない魔法少女系のアニメ。

胸が締めつけられるような苦しさを感じたり
キラキラした変身シーンにワクワクしたり。

私は、アニメや漫画など全然詳しくないし
知識も無いので、その作品に対して
言葉たくみに語る事はできないけれど
解釈も間違えているかもしれないけれど
魔法少女まどかマギカを観終わった時

全ての女の子に観てもらいたい。

そんなふうな気持ちになりました。
全ての女の子が魔法少女。その部分を大切にしたいなと、何かが込み上げてくる感覚になりました。そして、なかなか
まとまらなかった砂のリボンのイメージが
次々と沸き出てきました。

キラキラ感を出すために、リボンの土台は
金属に。
程よい厚みと軟らかさのある真鍮板を細く
切って、実際のリボンのように様々な形を
作る。そしてマイクロプラスチックは
キャンディーのようにカットして
全体のアクセントに。

ようやくイメージが、まとまりました。

「海辺の砂に混ざっているマイクロプラスチックの可愛いらしさを表現したい」
という思いと、偶発的な出来事
そして
「もしも、この海辺の砂が蟲だったら…」
という想像の世界が合わさって
2020年に、砂のリボンが誕生しました。

当初は、今よりも真鍮の幅が広く
大きいサイズだったのですが、身につけた時のバランスや、より可愛いらしさを出す為に、今のサイズへと変更しました。

さらさらと流れる砂の一瞬を切り取って
様々な形へと変化する砂のリボンは、
カラフルでキラキラしたものや魔法を使える女の子に憧れていた、幼き頃を
思い出させてくれるアクセサリーです。

「今日は、どの形を身につけようかな♪」
って、ちょっぴり自分に魔法をかけるような
ワクワクした気持ちになってもらえたら嬉しいです。




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