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【読書ノート】死者の奢り・飼育 大江健三郎 著

こんばんは。
めぐみティコです。
普段は愚にもつかない文章を書き散らしていますが、読書するなら純文学。
教養あるきちんとした大人に思われたいがためです。
(正直アラフォーにはもう純文学を1冊きちんと読み通す体力が残っていないと思う)

今日取り上げるのは、日本人2人目のノーベル文学賞作家・大江健三郎の芥川賞受賞作を含む短編集です。
なんかね、全然興味もてなくて読んだことなかったのです。
が、個人的にめちゃくちゃ好きな文章書く人が読んでるって言うからさァ……乙女アラフォー心(はぁと)
中学校の英語の教科書に、息子さんのことが書いてあった記憶がある。
では行ってみましょー。

『死者の奢り・飼育』 大江健三郎著(新潮文庫)


筆者 大江健三郎について

東大出身のエリートです。
1957年、在学中に『死者の奢り』で文壇デビューを果たしました。経済白書にて「もはや戦後ではない」という宣言がなされた翌年の出来事でした。
暗黒の時代ともいうべき戦中・戦後を耐え抜いたのちの高度経済成長に日本中が沸き立ち、明日はもっと良い日になると信じていた時代に、このような陰鬱で屈折した感情を世に放つ。
わたしには白髪、丸メガネの優しそうなおじいさん、という印象しかありませんが、若き日の大江健三郎は浮かれた時代の奥に潜む不条理や、その恩恵からこぼれ落ちた誰かを見つめていたのかもしれません。
余談ですが、中学校2、3年頃の担任が「ホルマリンに浸かった死体を棒で突いて沈めるバイトをしていた」というホラを吹いていたのですが、『死者の奢り』から着想を得たのだと思います。
人間の死体を沈められる水槽に満たされたホルマリン液……。
気化したものを吸うだけで危険すぎるだろ。最悪死ぬんじゃない?
これだから教師は、と言われるからやめてほしい。

『死者の奢り・飼育』概要

死体処理室の水槽に浮遊する死骸群に託した屈折ある抒情『死者の奢り』、療養所の厚い壁に閉じ込められた脊椎カリエスの少年たちの哀歌『他人の足』、黒人兵と寒村の子供たちとの無惨な悲劇『飼育』、傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた『人間の羊』など6編を収める。“閉ざされた壁のなかに生きている状態“を理論的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞当時の輝ける作品集。

新潮文庫 裏表紙

読後雑感

いや、難しすぎん……?
何言ってるか理解できないところが半分くらいありました。
読みながら「なんのはなしですか」と天国の大江先生に聞きたくなりました。
というか、大江健三郎推している人はなんのはなしだと思って読んでいるのか聞きたい。
どうしてこう昭和中期の純文学はすぐ暴力をふるったり、男性器を描写したり、人がすぐ死んだりするのですか?
夫のちんぽが入らない」もタイトルはあれだけど、男性器の描写はそんなになかったのに。

短編集なので、それぞれの物語について短く触れた後、1編選んで語りたいと思います。

『死者の奢り』
近未来SF的な雰囲気を感じました。死体処理室の無機質さにディストピア感があるのだと思います。
『他人の足』
意味が不明でした。
『飼育』
胸糞悪くなる話でした。
『人間の羊』
これがいちばん分かりやすかったです。わたしの頭脳の限界はここかもしれません。
『不意の啞』
通訳がバカだなぁと思いました。寓話かな?
『戦いの今日』
あいみょんの曲名みたいなタイトルだと思いましたが、中身は全然違いました。

ここからひとつ。
うーん……『人間の羊』、キミに決めた!

性暴力(と言ってもいいでしょう)を受けたバイト学生に、傍観していたにも関わらず犯人が去った後「警察に届けましょう」と執拗に詰め寄る教員の男。
被害者であるバイト学生は被害を受けたことを明るみにはしたくないのです。
なのに、傍観者が「戦え」「奴らの好き勝手にさせるな」と言いより、まったくそんな気はない被害者を無理やり交番に連れて行ってしまう。
しかしすったもんだあって警察官にも請け合ってもらえず、教員の誤った正義感と「恥をかかされた」という認知の歪みが学生への怒りと執着に変わる、そんな筋書きです。

これはあれですね。
LOVEのないBL。
LOVEのかわりにあるのは、執着です。
腐婆婆ふばあば的にいうと執着攻め。
この教員は、いつかこの学生に対してもっと酷い暴力をふるい、精神を破壊する気がします。
わたしはLOVEのないBLは正直地雷なので、続きが読みたいとは思いませんが、そんな悪寒のような余韻を残して物語は幕を閉じます。

BLじゃないにしてもさ、こういうのって実際わたしたちの社会でもありません?
LGBTQ+関連とか。
アサクリ新作の主人公が黒人(舞台は日本)とか。
当事者はなんとも思ってなかったり、放っておいて欲しかったりするのに、外野が勝手に盛り上がってまるごと炎上させようとしちゃうやつ。
完全にそれなんですよ。狂気です。

後味最悪。
後味最悪なのはこれだけじゃなく、ここに収録されている6編、全部そうです。
若き日の大江先生の精神状態が気になるところです。

おわりに

人にすすめますか、と聞かれたらすすめません。
元気が有り余っていて、むしろ少し元気の出力を絞らないと人に迷惑をかけそうなコンディションの時に読むといいと思います。
晩年の大江先生の作品は、少しは丸くなっているのかな。
これは若い頃の作品集なので、家族ができた後やおじいさんになったときの作品も読まないと、「大江健三郎はわたしとは合わない」と断定できません。
『個人的な体験』あたりは、わたし自身の仕事とも絡めてもう少しきちんとした読み方ができそうな気がしますので、次に読むとしたらそれかな。

最後まで目を通してくださりありがとうございました。

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