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モノがなければ何も始まらない。起業家の信念や想いに寄り添い、立ち上げを徹底支援 【支援事業者インタビュー#1 G's ACADEMY】

TIB STUDIO事務局がお届けする支援事業者インタビューシリーズの第一弾。TIB STUDIOに参画する16社のスタートアップスタジオ事業者を紹介します。各社が持つ独自の強みを紐解きつつ、メンターの方の考え方やバックグランドについてもお伺いしていきます!
初回は、デジタルハリウッド株式会社のG's ACADEMY Founderの児玉さんと水木さんにお話を伺いました!

児玉 浩康 氏
G's ACADEMY Founder / D ROCKETSインキュベーションマネージャー
デジタルハリウッド株式会社執行役員
25年間で10ブランドの新学校設立をプロデュース。デジタルハリウッドスクール統括の後、2015年G's ACADEMY を設立。卒業生専用スタートアップ支援機関『D ROCKETS』も創立し、創業指導・支援を全面的にハンズオンサポート。9年で107社の起業を支援。

水木 凛空 氏
『ルパン三世』のようなテクノロジー要素が満載されているアニメを作りたくて、10年前に中国から日本へ留学しに来た。大学院修了後は、クリエイティブとテクノロジーの業界で人脈を広げたく、G’s ACADEMYを運営しているデジタルハリウッド株式会社に入社。大学院とオンラインスクールでの運営と募集を経験してから、G’s ACADEMYに異動。趣味はエンタメ(映画、ドラマ、コンサート、舞台)、心理学、ゲームなど。


ーG’s ACADEMY(以下、ジーズアカデミー)さんは、スタートアップを育てるにあたって「スクール」というアプローチをされています。どんな狙いや思いから設立されたのでしょうか?


児玉:ジーズアカデミーは、2015年に設立したテック起業家の養成スクールです。立ち上げのきっかけとなったのは、2014年にシリコンバレーで「コーディングブートキャンプ」と呼ばれるエンジニア育成学校を見て感じた、日本との感覚の違いでした。

当時私はデジタルハリウッドスクールでWebデザイナーやCGアーティスト育成の責任者をしており、スキルを身に付けてもらった後、何の疑いもなく技術者を集めた制作受託会社に送り込んでいました。ITは専門的なものだから、技術を持っている人に頼むのは当たり前だと考えていたんですね。

ところがアメリカに行ってみると、技術製作者だけを集めた会社なんてほとんどないんですよ。Webデザイナーもエンジニアも、みんな社内に抱えているんですよね。ITにおける外注は、オフショア開発という形で人件費が安い国に出すのが一般的で、アメリカでは7割以上の会社が内製です。

どうしてこのような違いが生じているかというと、アメリカにおいてテックはそもそも「商品」という考え方なんですよね。コーディングして作っているこの商品を売って商売していると。簡単に言うと、ラーメン屋さんがラーメンを作っているような感覚なわけです。だから、自分たちで作るのが当たり前で、外注する発想がそもそもない。

これを知った時、私たちがよく見ているテックスタートアップたちも、この感覚から生まれているのだと気づきました。

スタートアップは、優秀なビジネスマンがエンジニアに外注するのではなく、テクノロジーを突き詰め、それを自分たちで料理していって、価値を外へ伝えることで創出されてきています。特にインターネットの世界は、一部の小さい熱狂が世界に伝播する性質を持っていますから、一つのものを熱く作り込むことが、ビジネスを起こすことに直結しています。

だから、ビジネススクールに通ってビジネスを極めて、何か考えついたものをどこかのIT会社に外注して作らせるような従来のアプローチでは、スタートアップはできないと考えたんです。そこで、自分たちで作ったもので挑戦する感覚を養い、そういう人たちを応援するためにジーズアカデミーを作りました。


ーまさに、ジーズアカデミーさんの「自分のチカラでセカイを変えようと行動する人を支援する」というミッションにも繋がっていますね。水木さんが今ジーズアカデミーにいる背景も教えてください。


水木:私は中国出身で2012年に日本に来て、デジタルハリウッド大学でグラフィックデザインとデジタル映像制作を学びました。起業していた父の教育もあって私も起業したいと考えており、ビジネスの知識をつけるため、デジタルハリウッドの大学院に進学しました。

でも、やっぱり外国人の起業はなかなか難しくて。まずは、起業するのに永住権がある方が良いと考え、デジタルハリウッドに就職して大学院の事務局で4年間、オンラインスクールで1年間運営を務め、2023年の4月にジーズアカデミーに異動してきました。

私はエンジニアというよりクリエイターの視点で見ることが多いかもしれませんが、「モノを作らなければ何も始まらない」というジーズアカデミーのコンセプトに共感しながら働いています。


ー「モノを作らなければ何も始まらない」というコンセプトがあるのですね。 それに基づいて、実際にどのようなご支援をされているのでしょうか?


児玉:そもそも私たちが重視しているのは、起業家たちが自身の想いや信念、価値観に徹底的に立脚することです。コンサル的なアプローチを否定していると言ってもいいと思います。

ジーズアカデミーにお越しになっている方はおそらく国内でもトップエリートの人たちばかりで、いわゆる大手企業にお勤めの30代ぐらいの男性が非常に多くいらっしゃいます。彼ら自身は、コンサル的なアプローチは散々やり尽くしてきて、いくらやっても新規事業が立ち上がらないという悩みからジーズアカデミーに来るんですよ。

ただ、新規事業やスタートアップにおいて一番重要なことは、勝ち方ではなく立ち上がり方だと思います。どういうマーケットが大きくなるか、どういう方法だったらスケールするか、そういう話は捕らぬ狸の皮算用です。そもそも立ち上がっていないですから。

だから、まずは立ち上がった状態を目指さなければいけないんですよね。そこに至るために、徹底的に解像度を高く突き詰めるのが私たちのやり方です。私たちはあくまでも「いかに商売を始めるか」ということをやっているので、スモールビジネスでもスタートアップでもどちらでもいいと思っていますし、スケールしなさそうな事業も歓迎します。

ーどのような意図で、スケールしなさそうな事業もご支援されているのですか?


児玉:私たちの軸になっているのが「why me」というものです。要するに、どうしてやりたいのかを相当に突き詰めるんですよね。そして、それと事業がダイレクトに繋がらなければならないと思っています。というのも、それがあるからこそ、売れなくても売ろうとするんですよね。

そもそもスタートアップで一発目から売れることなんてないんです。だから、みんな売れないものを売ってくんですね。売れないもの、つまり相手からは必要ないと言われるものを、どれだけ「いや、あった方がいいと思うんだよね」という話ができるかどうかが肝なわけです。

それに、コードを書いて商品を作っていくというのは非常に気の遠くなる話です。「これぐらいのものを作って、とりあえず顧客にぶつければ何とかなるんじゃないか」みたいな甘い考えでは何にもなりません。だから、本気でお客さんのことを想像しないとコードが書けないですし、そもそも自分のやりたいことじゃないと想像が追いつかないんです。

ですから、ビジネス的なアイデアよりも、本当に面白いと思っているか、お客さんが喜ぶイメージができているかをとても大切にしています。

ーTIB STUDIOを通じてどのような起業家にお会いしたいですか。

水木:自分でこれを作らないと死ねない、という物を持っている人。児玉さんがよく言うのですが、私もそう思います。また、実は私もジーズアカデミーに入学することを検討していた一人で。デジタルハリウッドの大学院やオンラインスクールにも関わった中で、やっぱりジーズアカデミーが一番起業に強いと感じているので、起業に熱意のある人に来ていただきたいです。

児玉:水木さんのおっしゃる通りで、思いが強い方とぜひお会いしたいですね。また、「どうもVC受けしないな」という悩みがある方には特にフィットすると思います。

というのも、プロダクトを一回作り上げてから、マーケットに徐々に寄せていくという発想でやっていくのが基本的な考え方なんですね。一般的なビジネスセオリーとは真逆のことを言っているのは分かっているんですが、私はプロダクトアウトありきだと思っているんです。

プロダクトアウト、つまり世の中に何か作りたいものがない人が起業することはないんですよ。今は何日か徹夜してコードをかけば、インターネットだけでプロダクトアウトできるような時代ですから。プロダクトアウトできるぐらい熱量のある領域でしか立ち上がれないので、プロダクトアウトはまずした方がいいと思っています。

今はVC受けしなくても、プロダクトがなくてわからないだけですから。ちゃんとプロダクトになったときに初めてみんながわかるようになるんです。

ー最後に、起業家に伝えたいことを教えてください!


児玉:アメリカで見てきて思うのは、スタートアップスタジオの主体はやっぱり起業家なんですよね。スタートアップスタジオというビジネススキームがあるから、ある程度有償で手伝ってくれる人たちがいるけど、起業家は仮に無償であったとしても手伝いたくなるような魅力を発信しないといけないと思っています。

だから、まずは自分の魅力をいかに磨くかということ。突き詰めれば、自分の原体験や信念をいかにソリッドなものにしていくかが大事だと思うので、そこにちゃんとパワーを注いで欲しいです。
ですので、スタートアップ支援をする事業者の方々も「いろんなことやってあげますよ」「投資家に会わせてあげますよ」「市場規模が大きい・小さい」みたいなアプローチだけじゃなくて、もっと起業家が自分と向き合い・顧客ひとりひとりに向きあう、「本来の商売」ができるようにナビゲートしてほしいと思いますし、そういう事業者さんと一緒にやっていきたいなと思っています。

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🚀 TIB STUDIOとは

TIB “STUDIO”とは、スタートアップ支援事業者の支援を受けながら
資金調達に向けて事業検証に取り組む「起業支援プログラム」です。
審査の段階から事業領域や希望に合わせて最適なスタートアップ支援者をマッチングし、事業フェーズに合わせた支援を行います。
▶︎TIB STUDIOについて:https://tib.metro.tokyo.lg.jp/studio/


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