いろとりどりの真歌論(まかろん) #11 後水尾院
花よいかに身をまかすらんあひ思ふ中とも見えぬ風の心に
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後水尾院御製。
江戸時代の天皇で、中宮は徳川家康の孫の和子(東福門院)。……という境遇から察せられるに、世が完全に武家主導の時代の天皇だ。風俗(遊郭)通い天皇であったらしい。――なんて背景を知ってからあらためて読み直すと、いっそうにリアルでドライな歌だ。
そうか、花は風に身を任せることを当然だと思っていない可能性もあるのか、とこの歌を初めて読んだときに虚を突かれた。花の下で腕を絡めておっさんにしなだれかかる若い女性のイメージ。
パパ活をしている女性を悪く思わない同世代が寂しく遠くから見ている。その女性がお金を必要としているのに、自分にはそれを出してあげられる財力がないまま。あるいは、あひ思う中とも見えぬ徳川家に身を任さざるを得ない己を重ねた。――と、とらえると、いつの世だろうと、男同士だろうと、組織と個人、時代の流れという風、世間、……、さまざま通じるものがある。
ところで、この人は兄を避け天皇の座につき父ともめ、しっかりと徳川家ともバトっている。押しつけられた中宮・和子とはそれなりに仲良くなり徳川家ではなく自分の味方にし、子供をそうとうな数作り、遊郭にも行く。花は存外、強かだ。着地点だけでも自分で選ぶ。
☆御製……ギョセイ。天皇が自分で作った和歌のこと。
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