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カーテン

朝がはやくやってくるようになった。

目を覚まして、たべかけの無印のするめシートをもしゃもしゃしながら、つけっぱなしの明かりをけした。
サッシの向こうからやわらかい6月26日の太陽の裾野が部屋にとどく。

暑さもたちあがりから加速している気がする。
いや、湿度がそれらをつつんで、われわれの活動を待ち構えている。
古びたエアコンに電源をいれる。
こころもち、ホッといきをつく。
あまり眠れていないのだが、眠れたことがたんに嬉しい。

退去まであと数日となった。
友人たちに最後の挨拶をしていく。
これからは遠くはなれて、なかなか会う機会もないとはいえ、せめて一年に一度くらいは遭って話をしたいと、昨日のお酒の席でつよく願う。

友人たちと話をしていると、落ちくぼんでいた自意識がやわらぐ。
わたしというものの、カタチをあらためてあたまの中で構築するような気分。
忘れかけていた記憶がおもいおこすと、わたしはわたしでそれなりにやってきたんだ。誰になんとおもわれようとも。

場所は離れるけれども、知り合った人たちとのつながりは忘れまい。
知り合った人たちとの交流が、わたしをわたし足らしめている。

わたしがこれを「選びとった」のだ。

今日でネット回線は終了する。
当たり前に見ていられた動画も、Twitterも、スマホでしかみられなくなる。
その前にこのnoteをひとさし、舞っておこうとおもい、こんな早朝に書き始めた。

ありがとう、横浜。
大阪に8年。
そしてこの地には15年ちかくいさせてもらった。
都市の生活のなんたるかをあじわうことができた。
「書くこと」にふれさせてもらった。
知らないことに出会えた。
知らないひとと出会えた。交差した。
地元へひきあげるが、またそこで花を、自分をカタチづくる花の立ち姿を、はっきりとあらわせるように、今までやってきたものをつかって生きていこう。

ローレンス・ブロック『泥棒は野球カードを集める』と、
西川和宏『ひと目の三間飛車』を手に、ここを去ることにします。

関わった方々、皆さまに感謝申し上げます。

珈琲と岩茶と将棋と読書と、すこしだけ書くことを愛する者です。