見出し画像

『ファクトフルネス』を読んで感じた、現代インターネットに必要なこと


『ファクトフルネス』とは

『ファクトフルネス』は、スウェーデン出身の医師ハンス・ロスリング氏の著書であり、「データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣=ファクトフルネス」を説いた本です。

各国へ渡り医療に従事した筆者が得た、人間が本能的に行っている誤解を10項目に分類し、ファクトフルネスを用いて対処する方法を示しています。
恣意的にデータを使用しすぎている、データのソースが怪しい等の本書の内容を批判する声もありますが、細かい点を除けば概ね内容は腑に落ちる内容にはなっています。

インターネット利用者は年々増加していますが、絶対数が増えた分、昔よりも事実に基づかない感情的な判断が増えてきているようです。私自身も、インターネット上で物事を冷静に捉えられていないと感じる事があったため、ファクトフルネスを用いて見つめ直したいと思いました。


ファクトフルネスによって明らかになる本能

『ファクトフルネス』で挙げられた10項目は以下のようになっており、私の解釈で各項目で必要だと思うことを書きました。本書では各項目を世界情勢に関わるような書き方にしていましたが、一般化するために内容は一部意訳しています。


1.分断本能 「あの人たちと私たちは違う」という思い込み

ある問題に対して、「あの人たち」という自分とは違う集団の問題だから、自分には関係ないと思いがちになる。自分の問題に置き換えて考えることができない。他人と違う点はあるのは当たり前のことなので区別はあっても良いが、分断された世界であると思いすぎないこと。


2.ネガティブ本能 「物事はどんどん悪くなっている」という思い込み

悪いニュースばかり目について、良いニュースがあっても無意識に優先度を低く見てしまう。意識的に良い方の意見も取り入れてフラットな目線で物事を捉えること。


3.直線本能 「グラフ化すると一方向に変わる」という思い込み

物事は一方向に増加、または減少すると思いがちになる。二次関数的に爆発的増加することもあるし、sin波のように上下することもある。

この項目に関しては、実際は筆者が言うほど直線的には捉えている人は少ないと思うので、優先度は低い。


4.恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み

恐ろしいイメージを浮かべてしまうと、実際の脅威以上に恐れてしまう。データを元にリスクを正しく計算すること。恐怖のパニックが収まるまで、大事な決断は避けること。

某ウイルスが流行している現在では、特に考えさせられる項目。危険もリスクも実際にあるので一切無視することはできないが、危険の程度も正しく見積もらなければならない。


5.過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み

目の前の悲惨な状況をすべてと思い込み、本当に重要なことに気づけない。
正しく大局的な判断をするためには、他の事象との比較を行うこと。

悲惨な死亡率に見える飛行機事故よりも道端で自動車事故で死ぬ確率の方が高い。


6.パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み

一つの成功や失敗事例ですべてを語らないこと。規模もジャンルも異なる事柄では、その違いや共通点からその例が適用できるかどうか考えること。


7.宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

『ありえない』なんてものはありえないし、『絶対』なんてものは絶対にない。変わりにくいものあっても、変わらないものはない。少しずつ変わっているなら、その変化を見逃さないこと。


8.単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

シンプルな答えに心惹かれがちになるが、そういった問題は実際には少ない。自分の考えとは異なる考え方も理解して、問題に取り組むこと。

人間を二極化し、「有能か無能か」、「善人か悪人か」、「性格が良いか悪いか」といった視点で語ることがあるが、多くの成功を収めた人を1つの失敗だけで無能のレッテルを貼ったり、人のために頑張る人を精神的に参っているときの発言を基準にして「性格が悪い人間だ」とレッテル貼ったりするのは正しく物事を捉えているとは言えるのだろうか。ネガティブ本能との組み合わせだが、悪く捉えがちになりすぎることが多い。

とは言え、人事査定などでどこかでラインを引く必要があるケースもある。この場合には、1つの事実だけでなく、いくつかの事実を組み合わせて冷静に判断すること。


9.犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み

失敗に対して、誰が悪いのかという犯人を見つけ、責めてしまいがちになる。犯人を責めることに熱中するのではなく、原因はなにか、どうすれば解決するのかという点に注力すること。

失敗を減らすことはできても、ゼロにすることはできない。反省することは大事だが、感情ではなく、次に失敗しないためのシステムを作りで示すこと。

失敗して1時間工数を無駄にしてしまったことを、3時間上司が責めていては意味がない。(今後の100時間を無駄にしないためのシステム作りのための議論であったら意味があるが、3時間の説教はだいたい感情論を含むので無駄が多い)


10.焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

大きな問題に対しては、焦りで判断を誤らず、一歩ずつ進めていくこと。

判断が遅い(パァン!!)となるような急を要する物事では別。




最後に

ビジネス的な意味合いを抜きにしても、単純に読み物として世界医療道中記を楽しめる本でもあるので、買ってよかった本だと思いました。(値段が高いので文庫本化してほしいところですが・・・)


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?