「小金人生」と「大金人生」

名前は存在の家

スウェーデンの植物学者リンネは「種-属-科-目—綱—門-界」という植物分類体系を完成した。彼が提案した「種-属-科-目—綱—門-界」という分類体系は、植物だけでなく地球上のすべての生物に適用されており、この体系に従ってすべての動植物はその名前がついている。たとえば、バラ(Rose)という種は植物界、被子植物門、双子葉植物綱、バラ目、バラ科、Rosa属に属する。つまり、バラという名前が認識されるまでは、科学的で体系的な分類が前提にならなければならない。

これと関連して、哲学者ウィトゲンシュタインは、「言語は存在の家(Language is the house of being)」と述べた。詩人金春洙も、「私がそれの名前を呼んであげるまでは、それはただ一つの身振りに過ぎなかった」と述べている。つまり、名前が思い浮かばない花はただ一つの身振りに過ぎず、名前がなければその存在もないということだ。

お金に付けられた名前

それなら、私たちが使っているお金にも名前があるのだろうか。市場で1万ウォンを払って何かものを買うとき、そのお金が通帳から引き出したお金であれ、クレジットカードで払うお金であれ、ポケットの中から偶然見つけたお金であれ、すべて同じ価値を持つ同じお金である。しかし、人々はお金に実に様々な名前を付ける。そして、そのように付けられたお金の名前に従って、その価値を違った風に考える傾向がある。

あぶく銭と小金

まず「あぶく銭」という言葉を見てみよう。ずっと昔に誰かに貸してあげてすっかり忘れていたのに返してもらったお金、クローゼットや引き出しを整理していて見つけたお金、道を歩いている途中拾ったお金、宝くじで当たったお金、年末調整などで返ってきたお金などに対して、人々は予想外にただで得られたお金という考えを持っている。それで、このようなお金は、労働力を提供して受け取ったお金に比べて簡単に使ってしまう傾向がある。経済学ではこのようなお金を一時所得とも呼ぶ。

また、「あぶく銭」に劣らず人々が簡単に考えているお金があるが、それは「小金」である。額が少ないお金に付けられた名前がまさに「小金」だが、この名前が付けられた瞬間、このお金は簡単に消費される運命に処することになる。人々のこのような心理のためにマーケティングでは年間費用を提示せずに月間費用を提示したりする。

例えば、ある保険の年間保険料が合計24万ウォンだと言うと、「大金」のように思えるが、月2万ウォンだと言って、一日コーヒー数杯さえ減らせば納付できるお金だと言うと、そのお金が「小金」のように思われて、消費者は簡単に保険に入るようになる。実際に行なった研究の結果、ある救済団体への寄付について、年間寄付額30万ウォンを提示したときは、30%だけが寄付の意思を明らかにしたのに対し、一日の寄付額850ウォンを提示したときは、52%が寄付の意思を明らかにしたそうだ。

様々なお金の名前

このような「あぶく銭」や「小金」のほかにも、小遣い、賃金、無駄金、ばら銭、大金、小銭、ただもうけの金等など、様々な名前がある。名前によってその感じが少しずつ違うが、「小遣い」はただもらったお金だからか軽い感じだが、「賃金」は労働の対価だから多少重い感じがする。しかし、血と汗を流してお金を稼いでおいて、お金を無駄使いしてしまい「無駄金」を使ってしまう人も少なくないようだ。

この他にも、最近よく使う言葉ではないが、「まとまったお金」は札束など多額のお金を指し、「残金」は物の値段で非常に小さな単位をいう。たとえば、物の値段として2万2百ウォンを支払う時、2百ウォンについて、百ウォン硬貨2個を差し出しながら「残金をお受け取りください」というようにである。また、「手垢のついた金」や「銅臭」という言葉もあるが、これは臭いがするお金である。このような銅臭は汚なく財産を集めたり、お金と引き換えに昇進した人を指すこともある。

お金に対する認識観の違い

このように、人々はお金に様々な名前を付け、その存在を認識している。もしお金に付けられた名前がなかったら、その存在感が消えることもある。「花より男子」ならぬ「花よりお金」にもっと関心がある人は、このようにお金に対する様々な名前によってお金を多様に認識している。だから、同じお金でも認識をどのようにするかによって、お金の概念は完全に違ってくる。

もし愛する家族と一緒に思い切って海外旅行を計画したけれど、海外旅行に大金がかかるとためらっているなら、海外旅行が「一生に一度」だと考えてみてはどうだろうか。1年という時間の概念の中では海外旅行の費用は大金だが、一生という時間の概念の中では海外旅行の費用は小金に過ぎないかもしれない。同様に、天に捧げる私たちの人生も考え方によって「小金人生」になりもし、「大金人生」になりもうるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?