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ユーザーニーズを反映して美容とケアが交わる「口紅」Vs.「リップクリーム」市場。勝負の分かれ目を探していたら、なんだか花王が設計した市場に見えてきた。

コロナを理由にしたマスクを必要としない冬がそこまできています。
暖冬と言われていますが、乾燥の季節はすでにやってきているようです。


復活するリップクリーム市場

記事によるとリップクリーム市場が好調です。
戦線を拡大するリップクリームが、口紅との境界線で戦いが起きています。

シン・プライシングコンペティション

新型コロナウイルス禍で落ち込んでいたリップクリームの販売が急回復している。マスクを外し、唇の乾燥に気づいた消費者が商品を買い求めている。コストパフォーマンスが高い多機能の商品が人気を集め、口紅のように使える色付きや、唇のひび割れに特化した薬用など1本で2つ以上の機能をもった製品が単価の上昇をけん引している。

リップクリーム、唇に多機能の1本 平均価格1割高 売れ筋POS分析

記事には明記されていませんが、円安や原材料の問題もありリップクリームの値段が消費者の「過去の記憶」よりも上がっています。

「リップクリームを数年ぶりに買いに来たら、高くてびっくり」。都内在住の20代の女性は9月、気温が下がり唇の乾燥が気になったため、ドラッグストアに足を運んだ。棚に並ぶリップクリームは価格が500円前後の商品が多く、なかには1000円近いものもあった。過去の購入経験から300円程度を想定していたという。

リップクリーム、唇に多機能の1本 平均価格1割高 売れ筋POS分析

単に原材料の問題を価格転嫁するのではなくProduct側の高機能化・多機能化で消費者との合意(納得度合い)の形成を目指しています。
健康的なアプローチです。

消費者ニーズの反映

ニベア花王でリップクリームの企画を担当する稲葉裕介氏は「21年は打つ手がなく、色付きの商品は6割、保湿向け商品は3割ほど市場規模が縮んだ」と振り返る。

需要の回復とともに顕著なのが、高機能化による単価の上昇だ。9月の平均価格は331.6円で、前年同月比11%上昇した。

消費者ニーズが多様化し、保湿だけでなく、色を付けたり、ひび割れを緩和したり、紫外線をカットしたりといった様々な機能が1本に詰め込まれるようになっている。「機能が集約された商品1本を選びたい」というコスパ意識も単価を押し上げている

リップクリーム、唇に多機能の1本 平均価格1割高 売れ筋POS分析
太字は筆者

そして活性する市場

需要期にあたる9〜12月の千人あたり販売金額(4カ月の平均)では、20年が19年比32%減、21年が同35%減だった。22年も同28%減だった。

リップクリーム、唇に多機能の1本 平均価格1割高 売れ筋POS分析

4年ぶりに明るい兆しです。
以下のチャートを見ると回復度合いが分かります。

リップクリーム、唇に多機能の1本 平均価格1割高 売れ筋POS分析より

美容とケアが交わる「漁場」


口紅側は多機能+アフォーダブルなプライシングで市場を魅了しています。

リップクリームと口紅の価格が近づくきっかけとされているのが、花王が21年に発売した口紅「KATE(ケイト) リップモンスター」だ。低価格帯の口紅が増える「口火をきった」(量販店)

価格は1540円(参考価格)と高機能をうたうリップクリームに近い。リップクリームのようなツヤと色持ちを両立した独自技術も消費者の支持を集めた。唇に塗った色が落ちにくい商品としては「ティント(染める)」タイプと呼ばれるものがよく知られる。元々、「プチプラ」が人気の韓国コスメが発祥とされ、国内でも2千円以下が中心。リップクリームも多い。

リップクリーム、唇に多機能の1本 平均価格1割高 売れ筋POS分析
太字は筆者

美容とケアが消費者ニーズを背景に機能(Product)を通じて価格(Price)が接近する中で、ドラッグストアなど流通(Place/売り場)での戦いも激化していることは想像に難くないですね。

そうなるとPromotion勝負?

消費者のニーズの変化に伴い本来の境界線が曖昧になりケアと美容の市場が交わっていく中で企業や商品サービスがターゲット顧客と共有・共創できる価値が問われています。

まさに、バフェットさんが言うところの「Price is What you pay, Value is What you get」で勝負をすることになります。
Value、つまり、どんな意味を顧客は手にするのでしょうか?

マーケティングを考えると、企業が今までターゲット(もしくは市場)の心に刻んできたものがとても大きく左右します。ブランドということで理解されているものです。まさにブランド資産ですね。

リップクリーム、唇に多機能の1本 平均価格1割高 売れ筋POS分析より

上記ランキングを見ていただけるとお気づきになるかと思います。
高価格帯の商品を買っているターゲット顧客と従来型リップクリームを買っている顧客の違いが見えてきます。

花王は美容(ビューティー)カテゴリーでの実績があり、高機能+高価格帯の商品は新たに市場投入した「キュルレ」名義です。

同じ花王でもニベアは600円前後までが上限になっています。
近江兄弟社やDHCは美容側への進出は難しいでしょう。

手元に口紅のランキング資料はありませんが、記事中にあるように高機能+アフォーダブルプライスで同じく花王のケイトがポジションをとっています。

つまり、冬の唇をめぐる美容とケアの市場は花王を中心に展開されることになります。
記事からは完全には読み取れませんが、花王が設計した市場と理解できます。

原材料+円安+インフレによる価格高騰でValueの重要性が変わった?


従来は「値段が安いことを持ってValue」とすることが多かった日本市場です。
改めてバフェットさんのキーワードで整理すると、「Price is what you pay , Law Price is what you get」でした。

僕自身は「安い」という言葉は普段あまり使わず、値頃感(Resonable)や手が届く・手が出しやすい(Affordable)を好んで使います。

今までのようにターゲット顧客が想定・期待していた価格より値段が安くなることがない現状です。
顧客と共創するValueを明快にする重要性が際立ってきています

別の日経の記事から
トマト農家のチャレンジです。

トマトの価格が高騰するなか、埼玉県桶川市で農園を営む手島孝明は「価格転嫁しても商品を売り抜く力が必要だ」と語る。

冬の間にトマトを育てるには、ビニールハウスの室温を8度以上に保つ必要がある。屋外の気温が下がる12月から3月にかけて、600坪のビニールハウスに使う暖房用の重油の使用量は7500リットルほどにも上る。

重油代を抑えるために室内の設定温度を下げればトマトの品質に影響を及ぼしかねない。手島は「無理して価格を据え置くよりも消費者が求めるクオリティーを追求する」という。

手島農園では今年、ブランドトマト「男気トマト」を600グラム448円(税抜き価格)と昨年から50円値上げした。SNSを通じて商品の魅力を消費者に発信し、価格が上がっても手に取ってもらえるように努める

燃料補助金「もうやめて」 再び延長、運賃値上げ頓挫 商品市場動乱(2)
太字は筆者

記事中で手嶋さんの生産する「男気トマト」をブランドトマトとしています。

その通りだと思いますが、記事におけるブランドと僕の考えるブランド(およびブランド活動)とは異なります
これは後ほどChat GPT4とまとめてみましょう。

男気トマトは手嶋さんが市場に「問いたい」気持ち(これはValueですね)が詰まったネーミングになっています。

質問:「名は体を表す」について150字で説明してください。

こんにちは。「名は体を表す」とは、人や物の名前がその性質や特徴を反映するという日本のことわざです。名前に込められた意味が実際の性格や状態を予示するという考え方で、人や物の本質が名前に現れるとされています。

Chat GPT4によるまとめ

ここでマーケティングにおけるブランド活動の重要性を理解するために、ネーミングとブランディングについて対比しておきましょう

質問:「ネーミング」と「ブランディング」についてマーケティングの観点で対比してまとめてください。300字でお願いします。

ネーミングとは、製品やサービスに名前をつける行為で、初の印象や認知の瞬間に影響を与えます。マーケティングにおいては、独自性や覚えやすさ、関連性が重要です。

一方、ブランディングは製品や企業のイメージや価値観を構築し、消費者の心に定着させる戦略的プロセスです。
これにはロゴ、デザイン、メッセージングが含まれ、長期的な顧客の忠誠心を築きます。

ネーミングが「名前をつけること」に注目するのに対し、ブランディングは「意味を築くこと」で、両者は互いに補完し合いながらも、その焦点と目的が異なります。

成功するネーミングは強力なブランディングの出発点となり得ますが、ブランディングはその名前に深い物語と経験を結びつけ、市場での持続可能な位置を確立します。

Chat GPT4によるまとめ 太字は筆者

Chat GPT4さん、ご明察。
マーケティングにおいてブランディングは意味をつくることです。

男気トマト、価値が名前に見える商品です。
見かけたら是非手に取って価値の共創をしてみたいと思います

生き残りをかけての積極的に動く人が増え始めた


上記の手嶋さんのケースに限らず、補助金などを当てにせず、そして、現状維持を持って成長とせず、自助努力でこの難しい局面を乗り切ろうとする動きが目立ってきたように思います。

グロースマインドが現れています

成長にはマーケティング、そしてプロモーションが重要になってきています。

広告代理店こそ率先して変わろう!


マーケティングにおいてプロモーション領域に貢献すべき広告代理店がValueについてしっかり考えて行動しないと生き残り線から脱落することになります。

IDEOのレイオフのニュースでデザイン思考が敗北したという考え方ができます
広告代理店が好んで使うキーワードで自分自身をシュガーコートすることは難しくなってきています。

https://www.fastcompany.com/90976682/design-giant-ideo-cuts-a-third-of-staff-and-closes-offices-as-the-era-of-design-thinking-ends

マーケティングにおけるプロモーションへの貢献へまず立ち返って、クライアントのマーケティングチームの一員として何をすべきが熟考して行動に移すべきときが来ました。
広告代理店のみなさん、自分たちの意味を定義しましょう

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
クライアントとエージェンシーのチームビルディングのためのコンサルティングサービスを提供しています。
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h-mori@threeplussix.com

それでは、また。


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