『ばいばい、バッグレディ』を読んで

詐欺師に引っかかりやすい体質の、どこか憎めない文筆業の父親と二人で暮らす高校生女子・アケビが語るお話。ある日、父親がまたまた怪しいおばあちゃんを家に連れてくる。首にはぐるぐる巻きにしたストール、手には汚れのたっぷりついた紙袋をいくつももって。彼女こそがバッグレディ。アケビは洗脳されそうな父を救おうとさまざまな企てをするが、どうやら父とは特別な関係であるようで、でもアケビには知らされないまま話は進む。ある日、父とバックレディの会話をきっかけに秘密にされていたあることを知り、彼女の世界はぐるぐると変化し始める。

書道に没頭するアケビらしく、随所にさまざまな名言が織り込まれているところも読みどころ。高校生らしいフレッシュな感覚が楽しめる青春ファンタジーでありながら、隠された秘密の下敷きになっているテーマは重く、かつ煌めいてもいる。ストレートでわかりやすいけれど、どこか清涼感のようなものもあって、この先もときどきは読み返すだろうと思う。作者のマーニー・ジョレンビーは、アメリカ人で日本語で5年の歳月をかけて書いたそうだ。

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