楽屋で、幕の内。|書くは身を助く Jan.23

 わが子がいる人生になっていちばん驚いたのは、世のお母さん方のパワフルさとスマートさだった。家事や育児をしながら家をまわしつつ、教育や環境、食など社会的な活動をしている方々は世間で思われている以上にたぶん、多い。土日は子どもにかかりきりになるので、使える時間は平日のお迎え、または下校までのわずかなあいだなのだけれど、それでも活動はやめない。1、2ヶ月に一回であっても、少しずつ、一歩ずつでも彼女たちは進もうとするのである。過度に責任は背負い込まない。決して無理せず、できることだけと割り切って、ある意味合理的に取り組む姿は惚れ惚れする。

 私が『読書会』を起ち上げようと思ったのは、ひとつにはそんなお母さんたちともっと対話したかったからだ。パワーの秘密を探る目的もあったかも知れない。余談だが先日、サイボウズの青野社長の記事に、お母さんたちにまつわることが書いてあった。「女性の社会進出の推進とよく唱われるのは社会との接点があるのは男性だと思われていて、女性は少ないとみなされているからである。でも実質は逆ではないか、女性はすでに社会との接点をもっていると思う」とおっしゃっていた。育児休暇をとられたのちの話だから、きっといろんなお母さん方に会い、同じような状況を感じたのではないかと推測する。
 もちろん、社会活動だけにとどまらない。子どものお稽古事やクラブ活動では数多のお役をやり、または次々通知がやってくるラインの連絡も心地よく返し、活動を気持ちよくまわす。そんな母たちの姿もあっぱれなのである。

 スーパーお母さんたちの存在に気づき始めたとき、私にも地域に貢献したいという気持ちがムクムクと湧き上がってきた。そうして間もなく『子ども作文と詩の会』を誕生させたのであった。先輩であるコピーライターとともに先生となり、お寺の境内にある木造の会館や公民館で1ヶ月に一回のペースで小学生とともに活動してきた。秋の詩を書くときは寺の境内を走り回って秋探しをしたり、好きな本を各自持参してそれについて書いてもらったりと、私たち自身も楽しんで書きたくなるものだけを題材に選んできたつもりだ。

 この春、教室の大半を占める小学6年生が卒業を迎えるため、実をいうと今、寂しいことこの上ない。先日、教室で今後の話をしているとき、6年生の一人がボソっとこういった。
 「作文って、自分の本音が出るから好きなんだよね」
 私たちはそうそう、それそれ!と大きく頷いた。私たちが教室を始めたのはまさにそれが理由なのであった。見渡すとまわりの子どもたちもうんうん、といっていた。
 子どもたちにはこれから先、書くことを自分の武器にしてほしいのである。困ったことや悩むことがあったら、気持ちを文章にぶつけてほしい。書くことはきっとみんなを強くしてくれると思うから。
 社会のためと思って始めた教室だが、子どもたちに教えてもらうことは多いし、こうやって子どもたちもボールを返してくれる。教室は続けられるのがベストだが、これまでのように一緒に机を囲めなくてもサポートはし続けたいと願っている。それが書くことを生業にさせてもらっている、私たちの使命だから。そして私もカッコいい母さんの一人になれていたらうれしい。

 


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