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誰も彼も切迫早産界の住人(入院13、14、15日目)

入院13日目(34週1日)

 今日は義母がいらっしゃった。コロナを気にして遠慮されていたけれど、両親も頻繁に面会に来てくれているので、大丈夫ですよとお伝えしていた。ずしっと重たい包みをもらい、中を開けると大きな安産守りが。ご友人と連れだってもらってきてくれたのだという。「私は祈るしかできないから」と。こればっかりは本当に、当事者(そしてもっと言えば中の人)が頑張ってやり過ごすしかないのだな。

 夕方はおなかが張りやすい。ちょうどニフェジピンを飲むタイミングなので飲む。夕方にようやくエンジンかかってくる感じ、中の人に私も同意である。

 編み物に凝っている友人にベビー帽子とミトンを発注したら、見本の毛糸の写真を送ってくれた。ふんわりした色合いで楽しみ。それに加えて、ベビークラウンも作ってくれるという。「誕生石の色のビーズを用意した」と言うので「その月までもたせられたらね…」と返すと、「大丈夫、翌月分も用意している」と言う。なんて用意周到なんだ。ありがたい。姉が「赤ちゃんに会いたいのに、おばみの行き場がない」と言う。帰省できたらいいけれど、コロナはまだ薬もワクチンもめどが立っていないからなぁ。


入院14日目(34週2日)

 朝5時、友人がベビー帽子の試作品をアップしてくれた。えっ、タイムリープしたの…ってくらい仕上がりが早くてびびる。

 眠れない夜にポチポチ姓名診断アプリに名前候補を打ち込んでいるけれど、なかなか名前は決まらない。夫は「そもそも名字の画数が悪い」と言い出した。そんなの、どうにもならないじゃないか。漢字はなるべく性別に依りすぎないフラットなものがいいと思っているが。あと呼び方が海外でも呼びやすいもの。そうしてますます決まらない。「良運命名」というアプリで自分や親の名前を打ち込み、友人たちのLINEでひとしきり盛り上がる。

 今日で入院2週間。このフロアから出たのは心電図とレントゲンを撮るために外来棟2階に出たときだけだ。コロナでの在宅勤務でさえもう少し外部との行き来があった。こんなにひとところにとどまっているのは初めてかもしれない。今日の中の人は腹の上の方をぐりぐり蹴ってくる。食べたものが圧迫されて苦しいぞ。足癖が悪い。

 まだ見ぬ後任への引き継ぎメモを、私の前任者が7ページ書いたものに5ページ加筆して書き上げた。合計12ページ。あとは、そこまで時期を気にしなくていい書類を3本書いていけばいい。明日でMFICUでの暮らしが終わってしまうけど、個室を希望することにした。パソコン作業の音がうるさいだろうから。隣室の、電話好きな方は今日4人部屋に引っ越したようだ。電話大丈夫なのかな。ハイトーンボイスがこっちまで響いてきてたけど、さすがにここ数日はトーンが落ちてきてたみたいだね…(点滴苦しいもの、しょうがない。しかし個室同士なので交流もないし察することしかできない)。

 スマホで育児系記事を読んでいて、「正産期の過ごし方」というものがあり、それによると早産は出産全体のうち約3%らしい。そんなに少数派なのか。私が正産期に入れるまではあと20日ほど。本当にそこまでもつんだろうか…。
 
入院15日目(34週3日)

 いつものように目覚める朝5時。闇が透き通る夜明けの色は澄んだ藍色。ぽたりぽたりと落ちる点滴の水滴にも透けて、うそみたいに美しい光。ふと、写真に撮ってみようという思いが湧いてスマホを取り出すも、やはりうまく撮れない。カメラまで取り出して、タッチパネルでシャッターを切ってかっこいい写真が撮れた。加工で彩度を少し高めて、出来栄えに悦に入る。

 今日は病室の引っ越し。個室希望だったけれど空いていないとのことで、どれかが空くまで4人部屋ということになった。おそらく他の多くの方も切迫早産界の住人の皆さんだろうから、1日でも長くもたせようと願っているのだろう。その中で「部屋が空きますように」とは、なかなか願いづらい。

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