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【BREAK THE SILENCE】感想2回戦@バンタンは何を恐れたか【BTS】


初戦はこちら

2回戦は妄想タイム

初戦で語り足りなかったので、妄想タイムを設けました。
申し訳ないですが、前回の記事を踏まえた話になっていますので、未読の方は先にそちらをどうぞ!

僕はこういう人だ、と明るい目で語るテテ。物事の美しい面を見るだけでなく、ここにありますよと差し出してくれるホビ。強い意志で道を踏みしめるSUGA。殻の外の世界を夢想する雛のようなグク。俯いて手のひらの中の自分を持て余しているようなジミンちゃん。溢れ出す言葉で辺りを照らし視野を広げていくナムさん。弟たちが乱高下させる温度を人肌まで戻してくれるジン君。

「【BREAK THE SILENCE】RETROSPECTIVE in Cinema 2024②【BTS】」より

上記は、前回記事の最後の印象まとめです。

『BREAK THE SILENCE: THE MOVIE』を観たら、安堵を感じさせる人と心配にさせられた人がいましたので、2回戦ではそれを語ってみたいと思います。
あくまでも、この映画で切り取られた5年前のバンタンを今の私がどう受け取ったかという話ですので、そのへんよろしくお願いいたします。

安心な人たち

ジン君とSUGAとテテ

今回の映画の中では情緒が安定していた顔ぶれ。センシティブな流れになっていても、彼らが出てくると落ち着きます。
どこに焦点を合わせているかは、チームとしての行く先だったり、自分の中の引き出しだったりと違うんですが、各々確かな足場に立っているように見えました。
安心して愛でていられるため、今回の記事では出番が少なくてすみません。またそのうち書きます!

ジン君
割り切って目の前のことに専念できる強さや、自分自身に対する大らかな信頼感が感じられます。スタッフさんともいい関係を築いている様子が垣間見えて、良き大人ぶりです。

世界クラスのアーティストを日常に繋ぎ止める長男

SUGA
道の先を見据え、それに向かって着実に歩いている印象。自分は自分のやるべきことをやるんだという決意の固さに、この人心底BTSのこと愛してるんだな……って毎回驚かされます。

音楽とBTS、どちらとも添い遂げる決心をしている次男

テテ
Vとテヒョンの役割を明確に切り分けており、自分の手綱をちゃんと握っているように見えます。子供のような純粋さを維持し続けられるしぶとさが好き。

どんな姿でも見せるけど、一番かっこいい姿はBTSのために捧げる六男

超初期に「儚くて繊細な人なのかな」って誤解してた(え)時期が一瞬あったんですが、何かをきっかけに「あ、違うわ。わりと生き延びられるタイプだった。好き」って思い直したんですよね。何だったっけな……。

保留枠

不安定な部分も見えるけれど、何となく「何とかなりそう」だと思える、という理由で判断保留枠に入ったのはクサズの二人。
方向性は全く違うのですが、何故か受ける印象が似ています。

ホビ

ドローン並みの俯瞰力で世界をケアし続ける三男

ジミンちゃんは「理想の自分と現実の自分」を分けているけど、ホビは「職業人の自分と私人の自分」を分けているように見えます。
時々「仕事」「義務」というワードが出てくるので、彼が使命感を持ってなすべきことを探し、こなしていることが伝わってきます。役割認識が明確で目端が利き、忠誠心が高いので、正直軍隊でも上手くやれるタイプだと思いました。

「青春をすべてBTSに捧げたから、すべてを手放した瞬間辛くなりそうだと思う。僕にはチョン・ホソクとしての人生がない。自己紹介の仕方さえわからない」

「【BREAK THE SILENCE】RETROSPECTIVE in Cinema 2024②【BTS】」より

ポジティブな言葉を最も多く口にし、私たちに世界の美しさを差し出してくれるホビですが、安定しているように見えて、いきなり大きな口を開けた谷底を見せつけてくるあたりが怖い。
しかもわりとドライに突き付けてくるから、こっちが「えっ大丈夫なの」って動揺させられます。
リアコ系の沼を感じるのは、そういうところよ。天下のダンス隊長に突然弱みを剝き出しにされると、死人が出るわ。

ただ彼の場合、不安の内容がはっきり端的に言語化されているので、尾を引く感じがありません。整理されている印象を受けます。
また、ホビには外から自分達を観察している俯瞰カメラがあって、それがダンスや歌詞作成にも生かされている気がしますね。問題点を取り出して真顔で修正点を探していそうな、客観視する力を感じます。

ソロ活動で先陣切って世界へ飛び出していった姿を知らなくても、多分「この人は自分で計画して何とかしそう」って思ったと思います。

ナムさん

王であり少年であり、ただのサックス奏者でもある四男

ナムさん「色んな恐怖を感じます。今自分がどこにいるのかわからない。堕ちたらどうなるんだろう。世界中から僕の全てを検閲されている気がする。僕は僕自身をケアできているのか? 人生を100%忠実に生きているのか?」
このくだり、ナムさんの恐怖が幅広すぎて興味深かったです。

「【BREAK THE SILENCE】RETROSPECTIVE in Cinema 2024②【BTS】」より

世界を背負わんばかりの悩みの多さが印象的だったナムさん。
「光と影を同時に考える」思考パターンがあるという話には、非常に納得させられました。

ただ、この人はこの人で、何故か芯に大らかなものを感じます。
ジン君の場合はそれが「愛された人の図太さ」なのですが、ナムさんの場合はもっと素朴な呑気さがあるように見えます。
普通これだけ悩めばカリカリしそうなものなのですが、「虫取り少年の無頓着さ」みたいなものが中心で胡坐をかいているため、不思議とそこまで神経質さを感じません。

そのため、後に述べる「心配になった人たち」と比べると、凍った海に閉じ込められても、最終的には砕氷船みたいに流氷を嚙み砕きながら進んでいけそう、という謎の信頼感が残ります。生命力に馬力がある。

ナムさんと言えば、ARMYの「高い知能と引き換えに生活力を奪われた男」って表現は秀逸だと思います。
私も、彼の思考活動に全力を注ぎ過ぎて「AirPodsを落とさない」とかに回す余力が残ってないというか、そもそも回す必要があることに気づいてない感じが好きです!
普通だと33個も落とす前に気を付けることを学ぶと思うんですが、思考の優先順位が圧倒的に「人生を100%忠実に生きているのか?」寄りなんでしょうね。まだAirPods使ってるのかな。今何個目なんだろう……。

恐怖に対する感度は驚くほど鋭いのに、「料理中にSUGAが株(=ストックオプション)の話をするわけない」みたいなところには全く考えが及ばないあたりに、はっきりした守備範囲の境界線を感じますね。
この人のヌけているところをそのまま受け止めてくれる仲間がいてよかったと思います。それを許してもらえなかったら、さすがにパンクしただろうなと想像しました。

心配になった人たち

映画観て心配になったのが、残りの二人です。クサズで謎に盛り上がってしまいましたが、ようやくたどり着きました( ;∀;)
あっ今の彼らじゃなくてあくまで(略)なので、ご安心ください。

ジミンちゃん

水面下であがきながらも、ステージでは最高の姿を見せてくれる五男

映画の中のコメントで、一番歯切れが悪かったというか、自分の中の整理がついてない印象を受けたのが、ジミンちゃんでした。
他の人の言葉と違って、ジミンちゃんの言葉はまだ続きそうなんですよね。結論までたどり着けてない書きかけの文章みたいで、行間にまだ何か潜んでるんですよ。「。」を付けていいのかどうかわからない。
それが、前述した印象の理由だと思います。

彼の「自分を受け入れられるようになってきた」という言葉は、「まだ受け入れられない」に聞こえました。
理想の自分をより高めたい半面、そうでない自分を持て余しているというか、できるものなら捨ててしまいたいようにも見えました。

ホビのドライさとは逆に、ものすごくしっとりした情感を持ってる人だなという印象が、強烈に残りましたね。質感がウェットです。
その湿度は人を包み込んで癒してくれるのですが、逆に彼自身に向けられた時、肌にへばりついて苦しみや寂しさを引き剝がせなくさせているように見え、心配にさせられます。濃い蒸気を浴びると息ができなくなる、そんな感じ。
捨て置けなさが炸裂しているので、この映画でジミン沼にハマった人は多そうな気がします。映画観ながら、ここも危険水域だったか……って震えました。

映画の冒頭で、「ずっと自分自身を探しているような気がします」と言っていたジミンちゃん。
私はまだ、彼はこの後も苦しんで、『Like Crazy』なちょっとダメな日々を送ったりして、ラスベガス(2022PTDinLA?)あたりで目が覚めたらしい、というぼんやりした物語しか持ち合わせていませんが(また履修しておきますね)、探していたものに出会い楽になれればいいなと心から思いました。

あ、この映画でのジミンちゃんは不安定に見えましたが、仲間について語る時だけは迷いがなかったのも印象的でした。
自分自身を信じられない時でも、メンバーへの無条件の信頼が彼を支えたんだろうなと思わされます。
シュチタで話を聞いていて、この人の真ん中にはいつもバンタンがいるんだなあと感心した記憶がありますが、その時と同じ感情を覚えました。

グク

「待ってて」は言えなくても、歌でなら「Never Let Go」って死ぬほど繰り返せるマンネ

「僕には何もない」発言に、全ARMYが泣きましたね。
これを言う時のグクの、淡々と事実を述べるように言葉を連ねる様子と、伏し目がちのどこかうつろな視線には、強烈に庇護欲を掻き立てる魔力があります。
やばい。最後に最大級の底なし沼がもう一個来た……!

グクのこういうセリフは何回か見たことありますが、その都度気になってたまりませんでした。
何が足りないと感じるのか、どうしてそう感じるのか、どうしたらそう思わなくなれるのか。切なさが疑問になって吹き荒れます。
私は本人ではないので、あれこれ想像して荒ぶる自分を宥めるしかありませんが、今回の映画を観て考えたことを書かせてください。

ジン君、SUGA、ナムさん、テテあたりは自我に迷いを感じないんですよね。普通に自分の中に「自分」がいるからこそ、それについて悩んだり、役割を分けたりすることができると言えます。
ホビやジミンちゃんは「バンタンでない自分」の確立について悩んでいるように見えますが、不確かであっても形はあると言えます。

しかし、この映画に限って言えば、グクにはそれがあまり見えません。
映画の冒頭で語られた、「BTSの自分とそうでない自分を区別する必要があるのかな」が思い返されますが、この時点でのグクの中にはまだ区別化できるものがないように映りました。

幼くして候補生になり、物心ついてからの人生をずっとBTSのJUNG KOOKとして生きてきたグク。
BTSは彼の家族で、職場で、世界の全てだったと言えます。

普通の人が家族と築く関係を、メンバーやスタッフと築き上げてきた彼が、インタビューなどでBTSと切り離された自分について問われた時の抵抗感は印象的です。
「BTSでないあなたはどこにいるのか」
「BTSが終わったらどうするか」
という問いは彼の世界を破壊するものであり、拠り所である大地が崩れるかのような不安をもたらすのだろうと感じさせられます。

ヒョン達には他の世界(バンタンじゃない自分)があるけど、僕には何もない。あるのはBTSとARMYだけだ。でもBTSでない自分にはそれさえ残らない。
何者でもない自分への焦りと恐れ、それが当時グクが感じていた「みすぼらしい自分」の正体だったのかもしれない、と私は思っています。

後に石ころ期、ソロ活動、兵役と新しい世界を次々経験していくことになるグク。映画の時点ではまだ若く未成熟だった彼も、当時見上げていたヒョン達の年に並びました。
2025年にどんな姿で戻ってきてくれるのかが、今から楽しみです。彼の中に座っていたみすぼらしい子供が癒され、笑顔と自信を持った青年に育っていることを、信じずにはいられません。

ソロ活動といえば、最年少のグクは「バンタン=世界」みたいな側面があったんじゃないかと思うので、一人でよく踏ん張ったなあと思ってます。石ころ時代に、飛躍するためのエネルギーを貯めてたのかもしれませんね。

「BTS入門編:新しい文化との出会い④距離感(特にSUGA&RM)」より

以上!

撮影され、言葉を求められることが日常のバンタン。
そういう中で、たまに自分自身でもまだ収拾のついていない感情がぼろっと出てくることがある気がします。
今回のグクとジミンちゃんには、その点で非常に強い印象を受けました。

私はそういうのを見かける度「ギャー、見てしまった……!」って悲鳴を上げずにいられないのですが、これはこれで一回見出しちゃうとやめられないですね……。業が深くてごめんなさい(*ノωノ)

まだnote始めたての時期に「歌詞やインタビューを読みこんで解釈し始めたら危ないだろうな」って書いたことあるんですが、そのまんまの道のりを今の自分が辿っていて苦笑しか出ません。
楽しいので、当分このまま坂を転がり落ちていくと思います。
もし同じツボを持ってる方がおられたら、是非仲良くしてやってください( ;∀;)

BTS沼は、わりとわかりやすく危険な香りがします。
歌詞やVライブなどで、メンバーの人生やメンタル世界がダダ漏れになっているので、心理的距離が近くなりやすいところが罠。
「ここを深く知ったら情緒的に離れられなくなりそう」
「歌詞やインタビューを読みこんで解釈し始めたら危ないだろうな」
という空気が、ビギナーにもビシバシ伝わってきました。

「BTSにハマる:推しとの距離感」より
バンタン大好きです!

コーヒー一杯奢ってください( *´艸`)