始まりの時



何もかも終わりにしたかった

何も持たずに飛び出した家は段々と遠ざかる

街明かりに目もくれず

速くなる鼓動と息は私の背中を強く押した

橋の真ん中までひたすらに走った

そこに立った私は思ったの

この世界に終わりを告げるのは私であると

孤独も何もかもおいて

飛び立とうとする私は

春の綿毛や花火の火種が落ちる瞬間や

紅葉が影に揺れる時間や白い息が雪雲に紛れる時

それらと同じように

この広くて綺麗で残酷な世界の

一部となる時

小さな川もやがては大きな海となる

足をかけ橋よりも高い位置に立った私は

今この瞬間をもって

海になる

さよなら世界

目を覚ました後の世界でまた会いましょう

ゆっくり落ちていく私は

少しだけ微笑んで

小さく吐いた酸素を見送り

目を閉じた

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