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マッチングで世の中はだいたい決まる。上手く行く!

「マッチングでだいたい決まる」??
そんなこと聞いたことないぞ、という方がほとんどかもしれません。

しかし、あらゆる意思決定や選択における判断には、日々の商品購入、週末の予定決定から、就職、結婚、仕事の受発注に至るまで、ほぼ間違いなく「マッチング」が伴います。
より良く「マッチング」することによって、個人の生活も企業のビジネスも、もっと上手くいくのではないか、と考えられるのです。

そこで、本稿では、意思決定・選択について「マッチング」の切り口から考えてみたいと思います。

マッチングの具体的なケースごとに考察した、後続noteはこちら。
後続note:ケースごとの考察へのリンク

マッチングとは

そもそも「マッチング」とは何でしょうか?

「マッチする」というのは、何かと何かを組み合わせたときに「うまく釣り合う、ピッタリ合う、フィットする、適切な状態になる、調和がとれる」
ということ、
「マッチング」というのはそういう状態を作り出す活動・アクションですね。

・世の中の何かと何かをうまく組み合わせる活動
・課題解決にあたり、課題とソリューションを上手く組み合わせること
・何か/誰かを選択するにあたり、選択の狙い・目的・気持ちをしっかり踏まえて、最も効能が高まるように上手く選択し組み合わせること、

などとも表現できると思います。

うまくマッチングすることにより、個人はよりハッピーな生活を送り、企業はより効果的なビジネスを営むことができます。


我々が何かを選択するときにも、無意識のうちに「マッチング」しているはずです。

例えば、今日はどのテレビ番組を見ようか、それは、「あなたの娯楽ニーズ」と「テレビ番組のコンテンツ」をマッチングしている、ということです。
ぴったりフィットすれば楽しい時間、有意義な時間になりますが、うまくマッチしないとつまらなかった、時間を無駄にした、ということになります。
テレビ番組くらいであれば、失敗してもどうということもありませんが、もっと大切なマッチングもたくさんあります。

マッチングは消費者・購入者の側から行うだけでなく、提供者・ビジネスサイドからも行われます。
例えば、ベタですが、あなたがPCでブラウジングしていると出てくる広告や、Amazonのお勧めなど、
どれも、「あなたの興味関心」と「表示されるコンテンツ」がフィットするように、うまくマッチングしようと企業努力した結果ですね。

仕事の受注・発注もそうですね。
自社のWEBページを改訂したい企業が、WEBページ作成を業とする個人・企業に発注する場合、発注する側の「つくりたいWEBページのデザインイメージ、インターフェースの洗練度合、納期、予算」と、受注する側の「デザインやWEBページ作成のスキル・技術、予算、納期に向けたキャパシティ」をマッチングしている、ということで、うまくマッチすると双方にとって満足度の高い案件になります。


もとより重要なマッチングですが、現代は、その重要性がかつてなく高まっています。

例えば、はやりのシェアリングエコノミーも、本質的には「シェア」がすごいのではなく、「マッチング」が上手く、数多く、頻繁にできるようになった、というところがポイントだと考えられます。

例えば、
「空いている部屋」と「泊まりたい旅行者」のマッチング
「空いている車」と「車で移動したい人」のマッチング
ですね。
(詳しくは以下のリンクから過去Noteをご参照ください)

リンク:「シェアエコノミーの本質はシェアではない」

ではなぜ、マッチングの重要性が高まっているのでしょうか。

マッチングがかつてなく重要な背景

・選択の機会および選択肢の増加
個客向けに様々なニーズに応える商品・サービスが開発され選択肢が増加している、あるいはテクノロジー進展や社会常識の変化などにより従来は存在しなかった選択機会が発生した結果、マッチングの機会が大幅に増加しています。

・ニーズの多様化
顧客ニーズの多様化、は言われて久しいですが、上記の「選択の機会と選択肢」が増加するのと相まって、、「ニワトリと卵」的に、ライフスタイル・趣味嗜好は益々多様化しています。
また、メーカー・提供者から消費者にパワーが移転してきて、プロダクトアウトからマーケットインへの移行が、あらゆるビジネスで益々これまで以上に求められています。

選択機会・選択肢・ニーズが多様化すると、単純計算ですが、幾何級数的にマッチングの組み合わせが増加しますね。

・変化のスピードアップ
従来は、一度うまくマッチングすればずっとそのままで良かったような事柄でも、商品内容・コンテンツ・性質・ニーズなどが変容することにより、ミスマッチの状態となってしまうことが増えています。

・マッチング品質向上への希求
選択肢が他になければ少し合わなくても我慢するのでしょうが、今や選択肢は飛躍的に増加、人々の意識の面からも、うまくマッチしないことを我慢するのが美徳、という時代ではなくなりました。
目指すマッチングの水準があがると、その水準を達成する難易度も高くなり、満足できるマッチングを達成するための活動がより一層重要になります。

・情報量の増大
選択肢および選択の機会の増大に伴って、(当然ながら)それらについての情報量が増大します、
さらに、デジタル化によって従来はデータとならなかった事柄も使える情報としてデータ化され、検索・取得・選択できるようになったことから、益々飛躍的に情報量が増大しています。
(こうして情報の非対称性が小さくなったことによって可能となったビジネスの典型がシェアエコノミーですね)
企業でも、個人でも、増大した情報をうまく使える場合と使えない場合で、マッチングの巧拙に大きな差が出るようになっています。


では、その重要性の増した「マッチング」ですが、どのように行われるのでしょうか?

マッチングの流れ

■基本的な流れ
フェーズ0.マッチング活動に参加
個人的興味関心あるいはビジネス上のニーズから、マッチング活動に入る

フェーズ1.情報収集
選択する側と選択の対象について、あるいは需要側・供給側それぞれについて、しっかり認識・情報収集する
(マッチングの内容に応じ、
組み合わせの対象となるヒト・組織・モノ・商品サービス・コンテンツなどの内容・実態・性質、解決したい課題・ニーズ、考慮すべき気持ち・考え方・条件などを確認。自分が組み合わせの対象となる場合には、自分と向き合い内省することも大切。)

フェーズ2.マッチング
集めた情報に基づいて、組み合わせを検討し、マッチするかどうか判断
(複数の選択肢がある場合には、どれがマッチするか判断)

フェーズ3-1.エンゲージメント
マッチすると判断したら(複数の選択肢がある場合には、そのうちの一つについて)、それを選択することに決定し、購入・契約・関係構築などを遂行

フェーズ3-2.やり直し・延期・撤退
マッチしないと判断した場合は(複数の選択肢の場合はいずれもマッチしない)、①同じマッチング活動をすぐやり直す、②あるいは少し時間を置く、③諦めてそのマッチング活動から撤退

フェーズ4.評価
エンゲージしたあとで、本当にマッチしているのか、情報収集不足や勘違いなどによりミスマッチの状態となっていないか、確認。
不可逆的な場合は止むを得ませんが、そのまま継続することが難しいほどのミスマッチとなっている場合には、返品、契約の解約、転職などにより、エンゲージから抜けて「フェーズ3-2.やり直し・延期・撤退」に移行します。
なお、ケースにもよりますが、双方向的なマッチングの考え方に沿って、評価も双方向で行われる、と想定します。

<マッチングの流れ>


例:「何かの知識を得たいために書籍を探して購入する」場合
0.知識を得る必要から書籍を探すことにして、
1.インターネットの書評を見たり、本屋でパラパラと中身をみたりして情報収集し、
2.自分の興味関心、必要な詳細度合い、読書力に照らした読みやすさ、などを勘案して、どの書籍が最適か判断して、
3-1.いい本があれば購入する、
3-2.いい本が見つからなければ、違う方法を試す(知人に良い本がないか聞く、経験者に読んだ本を紹介してもらう等)
4.実際に読んでみて、期待した知識が書いてあり、自分が理解できて身につきそうか、確認

経年変化への対応
いったんエンゲージし、そのときには満足、マッチング成功であった場合でも、時間がたつと合わなくなってくることもあります。
典型的には、子供服を購入しても成長してサイズが合わない、あるスポーツを始めたけど飽きて興味がなくなった、というような場合でしょうか。

この場合には、いったんエンゲージしていたものの、一定期間後に「フェーズ3-2.やり直し・延期・撤退」に戻ることになります。

<経年変化への対応>

お試し期間
エンゲージメントが長期間に渡る、重要な選択・判断の場合には、トライアル・お試し期間を設ける場合があります。
基本的な流れの、「フェーズ1.情報収集」の中に、「入れ子」のように、エンゲージメント期間を短期限定にした「ミニ基本的な流れ」が入るイメージです。
これによって、実体験としての情報収集をおこなって、マッチング成功の蓋然性を高めたうえで判断することができます。

様々な商品・サービスのお試し期間や、飲食品購入における味見・試食、また就職におけるインターンなどもこれに類するかもしれません。
スタートアップがプロトタイプ商品を世に出して、PMF(Product Market Fit)を目指すのも、この範疇ですね。

<図:お試し期間・トライアル>


マッチングの分類

一言で「マッチング」といっても、他種多様なケースがあります。

分類するとすれば、以下のような軸が考えられます。マッチングを改善する方策を考えるにあたっては、このような軸も意識する必要があるでしょう。

タイムスパン
Long term(長期的な関係性)とShort term(短期的な関係性)

頻度
同種のマッチングが発生する頻度
また、単発か、繰り返し(recurring)か

重要度
心理的・時間的・金銭的な影響・コストに照らし、重要か、カジュアルか
その事柄に対する、こだわり度はどうか
コミットメントの度合い(保有か、シェアか)(不可逆的か、やり直せるか)も考慮

難易度
選択肢のバラエティ・複雑性

変化
経年で変化するか、変化のスピードはどうか

情報量
情報量が多いか少ないか

<図:マッチングの分類 例>

どうやって良くしていくか

では、どうすれば「より良いマッチング」を実現できるのでしょうか。

「より良い」というのも、マッチングのケースによって異なると思いますが、ミスマッチのリスクが小さい、簡単にマッチングできる、また企業の立場からはマッチングの機会やマッチングの実現量が増える、などがあげられます。

情報収集および情報分析の改善
フェーズ1にて、より正確で多くの情報を収集し、それをしっかり咀嚼・分析することでマッチングの精度があがります。

選択肢の拡充
そもそも、マッチする選択肢がなければ、ピッタリくるマッチングは難しいですね。ニッチな場合も含め、個々のニーズより正確に応える商品・サービスが増えれば、より満足度の高いマッチングが可能になります。

やり直しを容易に
特にLong term(長期的な関係性)で経年変化が見込まれる場合、エンゲージしてもそれをずっと固定すると辛い状況になります。
当初マッチしていても、経年変化でミスマッチとなった場合には、巻き戻しの機会が必要です。
(「メルカリ後」、保有してもミスマッチになったら売ればいい、というスタンスが可能となり、マッチングのリスク低下に一役買っている、と考えられる)

効率化
特にShort term(個々の選択)で重要度の低い場合など、マッチングの精度は極力維持しつつ、かける労力を削減したいところです。
顧客に判断させない「UI」「UX」は、この観点で役に立っている、と言えます。
また、サブスクリプションもこのラインにあります。一度マッチングして長期的なリレーションを築ければ、以降のマッチングコストを企業側も顧客側も削減することができます。

より快適なマッチングプロセス
企業側・提供者側は、「マッチングの流れ」を「customer journey」と捉えて、そのプロセス全体を個々の顧客にマッチするように設計していきたいところです。

マッチングに関する諸々の妄想的考察

ここでは、マッチングについて、諸々の切り口から考えてみたいと思います。

「世の中はだいたい決まる」というのはマッチングが全てということか?マーケティングの4PのうちProduct(商品)についても、顧客ニーズに「マッチする」ことを追求する、という面ではマッチングの範疇に入ると思います。
一方で、それを超えた、魅力的なモノづくり・コンテンツ作り、の重要性は高く、「だいたい」に入らない残りの部分は「モノづくり・コンテンツ作り」だと考えられます。

圧倒的に斬新なモノ・サービスは、新しいマッチングにつながり、「破壊的イノベーション」をもたらします。
あるいは、より個客ニーズに応える商品開発(持続的イノベーション)により、うまくマッチングできる範囲が広がります。
なお、イノベーションはそもそも「全く新しい組み合わせ・結合」であることからすれば、新奇なマッチングはそれ自体がイノベーションかもしれません。

マッチングと「意思決定・選択」との関係
基本的には同じ行為について、力点・切り口を変えてみている、ということだと思いますが、意思決定・選択を「マッチング」と捉えることで、選ばれる側のみならず選ぶ側の要因(例えば、好み、予算、抱える課題など)、
また双方の相性・ケミストリーマッチにもスポットライトを当ててしっかり向き合うことになり、結果としてより良い意思決定・選択が実現できると考えられます。

AIDMAやAISAS、OODA LOOPやAHPなど、意思決定・選択のコンセプト・捉え方・手法とも対立するものではなく、マッチングという双方向性のなかにおいて考えてみよう、というものです。

マッチング、というからには、何かと何かを組み合わせることを考えるので、自ずと組み合わせる「二つのモノ・コト・人・組織などの両方」に目が向きます。
例えば何かを選ぶときに、選択する対象・選択する相手のみならず、選ぶ自分の気持ち・ニーズにもしっかり目を向けて解像度をあげて理解すること
につながります。あらゆる意思決定・選択の場面で、片方のみではなく、組み合わせる双方をしっかり分析・理解することで、より良い意思決定・選択ができるのです。
判断基準、のようなものも、マッチングのプロセスにて考慮すべき一要素となります。

双方向性のなかで、相互に選ぶ、選ばれるということでもあります。
結婚や就職のみならず、モノでも同じように「モノに選ばれる」面もありますね。(着こなせるか、使いこなせるか、など)。そこまでの重要性のない日用品でも、購入の手前の段階では、企業のマーケティング活動におけるターゲティング対象として購入者がマッチングされる側にいて、その商品を選ぶように誘導されていたりする可能性もあります。

マッチングの双方向性、相互性、Win-Winな関係・取引への目線が重要なのです。「お客さまは神様」ではなく、サービスを提供する側、される側の双方が努力することで、より良いマッチングが実現できる、そういうことが大事な社会になってきている、ということでもあります。

主観の世界
なお、「マッチしているかどうか」はどこまで行っても「主観の世界」ではないか、と思われます。他の誰が何と言おうと、そのマッチングの成否は自分にしか判断できない、というような。
多くの人の主観が集まって客観性を帯びたり、数字などによって客観性の衣をまとったりすることはあっても、個別個別のマッチング成否は、好き嫌いに近い主観の世界だと思います。

行き過ぎたマッチング
特に企業側のマッチングが行き過ぎると、フェイクニュースを含め、見たい情報、既存の価値観・人間関係のなかにある情報しか入ってこなくなり、本来把握すべき全体の情報が見えなくなるような気がします。
(回帰分析において、モデルがサンプルデータにピッタリ来すぎて、サンプルでない現実世界とは逆に乖離してしまう「オーバーフィッティング」とちょっと似ているところがあるかもしれません。)

セレンディピティのためにあえてミスマッチ、ちょっとずれたマッチングも必要で、逆説的ですがそれが非連続的に優れたマッチング(イノベーション!!)につながる可能性もあると考えます。

エンゲージメント後の努力
アンマッチ・ミスマッチを我慢することはない、と先述したこと矛盾するようですが、場合にもよりますが、マッチング・エンゲージメントの後の努力が大切な面もありますね。例えば、モノの使いこなし、手になじむまで練習すること、相手とのお互いの努力(結婚、就職後など)などがあげられます。

恋愛結婚とお見合い結婚で、最終的にはどちらがハッピーか、というと、なかなか難しく、結婚してからの「うまくやる、愛情を傾ける」努力が結構大事だと思います。
仕事も、最初からすごく好きな仕事を見つけるのか・見つかるのか、それとも自分ができそうな仕事を始めてみて段々好きになるのか、両面ありますね。

まあ、その努力が出来そうな環境・組み合わせ、も含めてマッチングが重要、でもありますが。


つらつら書いてきましたが、次から次へと現れる「日々のマッチング」を、また一生に一回~数回の「重大な決断におけるマッチング」を、より高品質に行うことが、より良い生活、より良いビジネスにつながると考えています。
そういうマッチングを目指していきたいですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、マッチングの具体的なケースごとに考察してみたいと思います。

後続note:ケースごとの考察へのリンク



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