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お前、仕事好きだろ?(2)

(1)のつづき

いざ社会人になって働き始めて、私はこの会社に入ったことを後悔した。よくよく考えてみれば分かることだが、大企業とベンチャー企業、忙しい割に待遇が良くないのはどちらだろう?もちろんベンチャー企業である。なぜ働きたくないやつがベンチャー企業など入ってしまったのか。忙しくストレスも多いわりに薄給である。他方大学時代の友人は、いわゆる超大手大企業に就職し、それなりの待遇で充実した毎日を送っているように見えて眩しかった。


彼らとは金銭感覚も異なっていた。例えば彼らは、チェーンではない居酒屋で 1回 7,000-8,000円くらいの飲み代を懐傷まず出せているようだった。私はそんなところにはほとんど行けず、大学時代のサークルに顔を出し、後輩や大学院に進んだ友人と大学生のセコい金銭感覚でなんとかしのいだ。「西ケ原さんはいきつけのお店とかあるんですか?」と仕事関係の人に聞かれたことがあったが、いきつけのお店ナニソレ?である。そんなところに金使えるわけないだろ。

社会人1,2年目の頃は本当に苦しかった。ベンチャー企業なのでそれなりに責任のある仕事にいきなりアサインされるのだが、どのように進めるのが正しいのか、手厚く教えてもらえる環境でもなかったので、悶えながら考えるしかなかった。またそんな中、周りの先輩社員が粛々と業務推進しているのを見るにつけ、いや私はこんなに仕事ができないのか、このままだと待遇改善もできずにストレスに押しつぶされて詰んでしまうのではないか…と考えたりもした。私の心は荒んでいった。

社会人2年目の後半くらいになると、徐々に社会というものが見えてきて、事態は多少好転したように思う。
一つの大きな気づきを得たことが大きい。それは「仕事ができる・できないは、結構経験に支配される」ということだ。周りの30代の先輩社員が仕事ができるように見えていたのは、なんてことはない。10年以上の期間を仕事に捧げてきたことよって、一定水準の能力に到達していただけのことだ。私も2年と短いが一定の経験をしてみると、先輩社員以上に自分の方が深く考えている分仕事ができているな、と思うことが多くなった。

しかし仕事がしんどいという感覚は続いており、どうにかして楽で待遇の良い仕事につけないかと思案するようになった。転職サイトに登録し、とある業界の待遇が良い、基本労働時間が1日7時間の会社は楽である、等情報を仕入れ自分で考え、とある会社一本に絞って転職活動を行った。新卒での就活とまったく同じである。無駄なことはしたくなかった。

この会社の一次面接では担当部長と行うものだった。私の今までやってきたことすべてを出し切った。自信満々に堂々と、この会社で私はこのように活躍できるのだとアピールをした。いやそれ新卒の就活でやっとけよと言わんばかりの会心の出来だった。
当該面接は一次面接である。つまりその後にも面接を控えており、実際の採用が決まるのはこの先の三次面接(最終面接)であった。にも関わらず、担当部長からは面接の場で「僕がこの場で落とすことはない。現場が欲しいって言ったらこの先の面接は人間的に問題ないかチェックするだけだから大丈夫」という言葉を頂いた。つまり実質的な内定を頂いたのだ。ありがとうございます、とその場で伝え、お見送りの後一人エレベーターに乗り込み、エントランスを戻ってビルから出る時に、私は特大のガッツポーズを決めた。

というわけで結果的にも無事内定をいただくことができ、二社目の会社に転職した。詳細はふせるが待遇は劇的に改善した。労働時間の短縮、給料の増額をダブルで達成できたのでとても嬉しかった。これが目的だったからだ。

(3)へつづく


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